クマの家族

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(103)

「クマの家族」
「ママ、お腹が空いたよ~。みんな山を下りて食べものを探しに行っているよ。ぼくらも行こうよう」クマのタローがママにせがみました。
「パパが今探しにいっているでしょ。もう少し我慢しなさい」
「毎日毎日お腹が空いてもう限界だよ」
「昔はこんなことはなかったのに、最近はどうしちゃたんだろうね。
でも、里に行っても帰ってこないお友だちもいるでしょ?多分、捕まったりしているのよ。
私たちはサルのようにはうまく立ちまわれないでしょ?今はじっと我慢するしかないのよ」
「いつまで我慢するの?」
「山が紅葉するまでよ。山が美しくなったら、食べもの向こうからやってくるから、それまで辛抱しましょ」
「それってどういうことなの?」
「葉っぱが赤や黄色に輝くと、『これは見事だ。もっと近くで見よう』と山に入ってくる者がいるから、それをいただくのよ」
「そうか。早く美しくならないかなあ」
「ほら、少し色づきはじめているでしょ。もう少しよ」
「ママ、葉っぱはぼくらのために美しくなるの?」
「そうじゃないわ。木が、葉っぱの色を変えて枝から落とすためよ」
「どういうこと?」
「寒い冬を過ごすために私たちが冬ごもりするように、木も、栄養を体に貯めるために、葉っぱを落とすのよ」
「へ~、そうだったのか~」
「秘密のケンミンショーみたいな言い方やめてよ。まじめに話しているのに」
「ごめん。つもり、ぼくらは、他人を利用して生きているというわけか」
「別に私たちだけじゃないのよ、この世のあらゆるものが何かを利用して生きているのよ。どうしてむずかしいこと聞くの?」
「学校で、ヨシダ先生が、生きるとはどういうことか?を教えてくれたからさ」
「ママはむずかしいことは言えないけど、この世はもちつもたれつなのよ」
「それなら、ぼくらは誰の役に立っているの?」
「また!そうねえ。シカやイノシシが増えすぎると、みんな困るのよ。だから、少し減らせば喜ばれるし、私たちがいれば、山に来る者が少なくなって山が荒れないし・・・。
それに、動物園で見世物になっている仲間もいるわねえ」
「なかなか役に立っているじゃん」
「エラソーに!とにかく、一生懸命生きることが自分のためであり、他人のためなのよ」
「ママの話はヨシダ先生よりわかりやすいよ」
「はいはい。でも、後は自分で考えてよ」
「わかった。それなら、人間から食べものをめぐんでもらわなくても、木の実がなる木を植えてくれたらすむじゃないか。山を荒らしたのは人間だからさ」
「ママは知らないわよ。考えすぎて頭が痛いわ」
「あっ、パパおかえり!」
「ただいま。少し木の実がある場所を見つけた。すぐに行こう。そんなにないけどな」
「どうもお疲れさまでした。少し休んでください」
「タロー、どうしたんだ?」
「パパが、ぼくら家族ためだけでなく、この世のみんなのために働いてくれているんだね」「そんなことはない。おれは、おまえたち二人にひもじい思いをさせたいようにしているだけだよ。しかし、どうしたんだ、変なキノコでも食べたのか?」
「タローは、学校で人生について教えてもらったから、いろいろ考えているのよ」
「そうか。今度は、パパが木の実を探す方法を教えてやるよ。そうしたら、一緒に探せるだろう」
「世の中もちつもたれつですから、ぼくはここで待っているよ」

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