キツネの考え

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(63)

「キツネの考え」
「さあ、みんな頼むぞ。お前たちがうまくやってくれれば、わしは山を一つもらえる約束なんだ。おまえたちも、誰にも邪魔されずにのんびりできるからな」大きな洞穴のなかで、キツネが、天井からぶらさがっている5羽のコウモリに声をかけました。
「親分、ありがとうございます。しっかりやってきます」
「腹が減っては戦はできぬというからな。しっかり食べてくれ」キツネはそう言うと、手にもった芋虫を5羽のコオロギの口元まで運んでやりました。
「親分、ごちそうさまです。それじゃ、そろそろ行ってきます」
「じゃ、頼むぞ」
コウモリは、バタバタと音を立てながら洞穴を出ていきました。
「戦況はどう見たって、わしを雇ってくれた王のほうが有利だ。コウモリが掴んだ情報などいらぬかもしれんが、最近は情報戦だというと、わしを雇ってくれた」と一人ほくそえみました。
そして、夜の闇が少し薄くなってきたとき、洞穴にバタバタという音が響きました。
コウモリたちが帰ってきたようです。
「ごくろうだった」キツネは大きな声で出迎えました。そして、「何かわかったか」と聞きました。
「やつらは、敵を崖まで追いこんでから落とそうという魂胆です。さっきまで、誰がどうするか相談していました」
「なるほど、なるほど。さっそく王に知らせてくるとするか」キツネは急いで、クマの国に行きました。
それを聞いたクマの王は、「なに、そんなことを企んでいるのか。わしらはその裏をかいてやる」と叫びました。
翌日、キツネを雇っているクマの王が、50頭の家来を連れて戦場に行くと、相手のクマの王も、同じぐらいの家来を連れてやってきていました。
さっそくぶつかりあいがはじまりました。相手の王は、こりゃ、かなわんとでもいうように、どんどん退却しました。
「よし、情報どおりだ。10頭だけが相手を追いかけていけ。残りは、相手が来る場所に先回りをせよ」王は家来に命令しました。
案の定、敵の20頭が来ました。40頭のクマは20頭に襲いかかりました。
それを聞いた敵の王は逃げていきました。
キツネは、たいそう褒められて、約束どおり山を一つもらいました。
それから、別の国からも呼ばれるようになりました。
キツネは有頂天になりました。自分の何倍も大きなクマから、それも、クマの王から、「先生、先生」と呼ばれるようになったのですから。
「先生、早く作戦を教えてください」という王には、「急いては事を仕損じると申します。ゆっくり考えましょう」となだめ、なにもしようとしない王には、「備えあれば憂いなしです」と急かし、また、家来の信任がない王には、「そもそも王道とは・・・」と説教するまでになりました。
しかし、どんな方法で相手の作戦を知るのかは絶対言いませんでした。コウモリを訓練する方法は自分が考えたのであり、それを誰かに知られたら、自分の地位が脅かされるからです。
しかし、あるとき、コウモリが聞くところによると、「相手がどう動くか見てから、作戦を考えよう」という王がいました。
キツネは、このまま伝えていいものかどうか悩みましたが、あえて、正直に報告しました。
キツネを雇った王は短気で、家来も少なかったので、「それでは何の役にも立たん。もういい。帰れ!」と怒りました。
そのころから、仕事がうまくいかなくなりました。致命的になったのは、コウモリが聞いてきた話と全くちがう作戦が行われたのです。
ほうほうの体(てい)で逃げてきた王は、キツネを見ると、「お前のためにえらい目にあった。今度どこかで見たら命はないと思え」と怒鳴り、今にも襲いかかりそうになりました。
キツネは、君子危うきに近寄らずとばかりに逃げかえりました。
敵の王は、少しばかりキツネのことを聞いていたのですが、日頃見ないコウモリが飛んできたので、もしやと思い、でたらめの作戦を話したようです。
キツネは、コウモリとともに、もらった山を出ました。そして、遠く離れた山に行き、今後のことを考えました。「確かにわしの仕事は褒められるようなものではない。しかし、早く戦いを終わらせると、犠牲者を少なくさせるはずだ」と自分を納得させました。
それから、夜中に作戦会議を盗み聞くコウモリだけでなく、空から配置を教えるトンビや大きな木の実を落とすサルなどの家来を作りました。
キツネは、「世の中から戦いがなくなることはない、他人を押しのけることが人生だと考えているものばかりだから」と楽観的な気持ちで客を待ちましたさ。

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