チュー吉たちの冒険

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(43)
「チュー吉たちの冒険あるいはネコの生き方」
2,3週間帰ってこなかったかチュー次郎が、久しぶりに帰ってきました。
「どこへ行っていたんだ。みんな心配するじゃないか!」兄のチュー太郎が叱りました。
「ごめん、ごめん。目が離せなくなって、帰れなくなったんだ」
「どんなこと?」誰かが聞きました。
「おばあさんとネコの愛情物語というところだけど、人間に好かれたいという、おれたちの作戦の役に立つかもしれないと思ってね」
チュー次郎は、みんなに話しはじめました。それによりますと・・・。
ある大きな家に、80すぎのおばあさんが一人で住んでいました。
あるとき、縁側のガラス戸が少し開いていて、そこから、三毛ネコとその子供らしいのが2匹入ってきました。子ネコは白と黒の体をしていますが、親子とも、何もたべていないようで、がりがりに痩せています。
おばあさんは、ネコがいるのに気づいて、シー、シーと追いはらいました。ネコは大嫌いのようでした。
翌日もネコの親子は来ました。しかし、ガラス戸は閉まっています。どうするのかと見ていますと、母親は前足でガラス戸を開けようとしました。しかし、開きません。今度は、逆立ちのような格好になり、後ろ足でガラス戸を押しました。するとガラス戸は開いたのです。
おばあさんは、子供に食べさせたいのだなと思って、それじゃ、少しだけと思って、縁側の沓脱石に、残りものを入れた皿を置きました。親子は、あっという間に食べました。
翌日も、また翌日も来ました。そして、親子とも、ふっくらしてきました。
慣れてくると、ガラス戸を開けて、縁側に上がってきました。縁側は南側に面しているのであったかいのです。
おばあさんは、夜は寒いところで寝ているのだろうと思って、皿を縁側に置くようにしました。
しかし、子ネコが増えるのは困ると考え、近くに住んでいる娘さんを呼んで、2匹の子ネコの貰い手を探すように言いました。
1匹の子ネコは食べているときに、すぐに捕まえることができました。
しかし、もう1匹は用心して、背中を見せようとしませんでした。子ネコと言えども、なかなか用心深いものです。
そこで、おばあさんは、一計を案じて、いつも飲んでいる催眠剤を食べものに入れたそうです。
すると、子ネコはふらふらになりました。その子ネコも娘さん持ちかえりました。
娘さんの話では、病院で健康診断をしてもらってから、その病院の告知板や、ネットで、貰い手を探したようです。貰い手は、すぐに見つかったそうです。
おばあさんは、ここまではうまくいったが、今度は親ネコだと思いました。
そこで、おばあさんは、網で親ネコを捕まえました。娘さんは、避妊手術をするために、病院へ連れていきました。
手術も終わり、家に近くで話してやりました。よほど嫌な目になったのか、親ネコは来なくなりました。
チュー次郎は帰ろうと思いました。しかし、4,5日後、ガラス戸の外で、ニャー、ニャー鳴く声が聞えました。
おばあさんは、「ミーコ、よう来たなあ」と、ガラス戸を開けて、食べものを縁側に置きました。
チュー次郎は、「状況が変わってきたぞ。こいつは、大事な子供を取られ、女の権利も奪われたのに、おばあさんにすりよっていく。ネコというのは、なかなかの世渡り上手わい」と思ったそうです。
これで、話は決着したと思っていると、今度は食べものを半分残すようになりました。
ガラス戸の外に、黒いネコがいました。それに近づいて、二言三言言うと、黒いネコは、用事しながら、縁側に上がって、残りの食べものを平らげました。
おばあさんは、黒い子ネコの父親はこれかもしれないと考えました。今では、ネコに話しかける毎日だそうです。
「どう思う?」チュー次郎が聞きました。
「ネコやイヌはいいなあ。どんなに厚かましくしても、好意的に取ってもらえるのだから」「同じネズミでも、ミッキーマウス、ハツカネズミ、馬鹿でかいカピバラ、仲間かどうかはわからないがネズミ男は人気があるけど、肝心のぼくらは嫌われる」
「今更そんなことを言っても仕方がないよ」チュー吉が言いました。
「世の中には、変わった人間がいるのはまちがいないので、そういう人間をファンにしていこう。宝くじに当たるよりむずかしいけどな」

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