シーラじいさん見聞録

   

「ミラは生きていたんだ」リゲルは感動した。
「やはり不死身だ」オリオンも納得したように答えた。
「じゃ、海底にいたのはミラだったのだな」
「そう思うが、でも、いつものように泳いでいるようではなかった。激しく動いていた。争っているようだったな」
「まさかクラーケンと争っているということはないだろうな?
ぼくらは何回も海底に行っているのに誰にも合わなかったじゃないか」
「確かにそうだが、音が大きいのですぐ近くのように思えたが、かなり遠いところかもしれない」
「ミラ一人と相手はかなりいるのだろうか」
オリオンはうなずいたが、何も言わなかった。それを心配していたのだ。
リゲルは、オリオンに行こうと合図した。オリオンはうなずいた。
リゲルは、シリウス、ペルセウスと4頭の若いシャチを集めた。
「今から海底に行ってくるから、おまえたちはここで待っていれないか」と言った。
若いシャチは、「ぼくらも行きます」、「なんでもしますから連れて行ってください」と口々に言った。
「ありがとう。しかし、ミラを探しにいくので、ぼくらだけで行ってくるよ」リゲルは正直に答えた。
「そのうち、ミラは上がってくるのではないですか?カモメが空から見張ってくれているから大丈夫だと思います」
「そうなんだが、おまえたちも感じたように海底で大きな動きがあった。
ぼくら3人はクラーケンと戦った仲間なので心配なんだ。
だから、様子を見てきたいんだ」若いシャチたちもうなずくしかなかった。
「シリウス、ペルセウス。ミラが帰ってきたようだ」
「いやあ、うれしいですねえ。今までのように必ず戻ってくるとは思っていましたが、作戦に間に合ったのはさすがミラです」ペルセウスは跳ね上がって喜んだ。
シリウスも、「ミラと怪物がいてくれたら、クラーケンがいくらかかってきても心配ないじゃないか」と、今まで共に苦労してきた仲間の無事を同じ二人の仲間に言った。
「ありがとう。シリウス。これからもみんなでがんばろう。若いものをみておいてくれ」
「つけていってきてください」若いシャチも寄ってきた。
「頼むぞ」2人は急いで海底に向かった。
二人は競うように海底に急いだ。その途中も、感覚を最大限にしながら進んだ。
ようやく山の麓に近づいた。しかし、先ほどの動きは感じられない。
「別れて探そう」二人は一気に離れた。オリオンは警戒しながら進んだ
。今ニンゲンが閉じ込められている洞穴を過ぎた。
異常はない。そのまま進んだ。それから、左右にも範囲を広げた。
すると、動きが感じられた。いた!オリオンはそちらに向かった。
音のほうに進んでいると、背後から何か近づいてきた。折尾はさっと上に上がってそれの背後に向かおうとした。
「オリオン!ぼくだ」リゲルだった。「リゲル。来てくれたか」
「どうもきみが向かったほうに何かあるような気がして仕方なかったんだ。
それで、急いでこちらに来た」
「ありがとう。何か感じるだろう?」
「確かにかすかに何かが動いているような気がする。争っているかどうかは分からないけど」
「そちらに行こう」
二人は進んだ。確かに何か動いている。しかし、その気配が大きくなったり小さくなったりする。
大きくなるほうに進んだが、その方向がかなり激しく変わる。
しかも、争っているのは感じられない。二人は勢いをつけて進んだ。
あそこに何かいる!オリオンが言った。かなり大きいぞ。行くぞ。
2,30メートルまで近づいた。クラーケンじゃない。
クジラだ。ミラか。ミラだ。ミラ!二人は叫んだ。それは止まったかと思うと、くるっと向きを変えて二人のほうに顔を向けた。
ミラ!ミラ!二人はミラにぶつかっていった。「リゲル、オリオン!申し訳ありませんでした」ミラは苦しそうに叫んだ。
「生きていてくれて本当によかったよ」
「相変わらず戦い方がへたくそでみんなに迷惑かけています」
「でも、向こうは、5,6頭いるんだろう?」
「そうです。でも、パパはそれくらいの数は簡単に片づけたとみんなから聞きました」
「そうだったが、きみももうすぐそうなるよ」
「パパに戦い方を教えてもらっていなくて残念です」
「ところで、さっきからクラーケンとぶつかっていたのか」
「多分そうです。種類がちがうようですが、向こうから襲ってきたのでやつらは逃げましたが、いずれまた来ます。この間にあなたたちを探そうとしていたんです」
「ニンゲンがいる洞穴はもっと向こうだよ」
「そうでしたか。久しぶりに来たの分からなくなったようです」
二人は,誰かがその洞穴の入り口を岩で塞いでいるので、それを取り除こうとしていることを話した。

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