シーラじいさん見聞録

   

アントニスとイリアスは、イギリスに向かう準備を1日ですませ、翌日にはブレスト空港からヒースロー空港に行く飛行機に乗った。
ミセス・ジャイロに連絡をすると、空港まで迎えに行くと言ってくれていた。ミセス・ジャイロとカモメは親しくなっているようなので、オリオンについて何かわかっているかもしれないという期待があった。
ヒースロー空港に着いて、電話をすると、ミセス・ジャイロはすでに待っていた。
待合室に行くと、ミセス・ジャイロは、すぐにアントニスとイリアスに気づいた。
しかし、二人に微笑えむと、そのまま後ろを向いて歩きだした。
イリアスは追いかけようとしたが、アントニスは、「ストップ!」と小さな声で叫んだ。
「他人のようにするんだ」イリアスは事情を察して、距離を置いて歩きだした。
ミセス・ジャイロは、何度か振りむきながら、足早に駐車場のほうに歩いていった。
そして、車に乗った。アントニスとイリアスも続いた。車はすぐに出た。
空港を出たとき、バックミラーを見ながら、「イリアス、いらっしゃい。驚かしたわね」と言った。イリアスも、バックミラーに向かって挨拶をした。
「アントニス、オリオンは近くにいるはずよ」
「カモメは見つけたようですか?」
「まちがいないわ。わたしがいると、南西の方向を行くようにするの。しかも、そう遠くじゃない感じよ」
「南西?心当たりにはありますか?」
「海の近くには、ボーンマス、ポーツマス、サウサンプトンなどがあるわ。多分、そのどこかね」
「車でどのくらいかかりますか」
「3時間ぐらいかしら。知っていると思うけど、カモメが生物兵器と疑われているから、海から離れたところを飛んでいるカモメは撃たれるのよ。だから、夜しか行動できないの。
最近は、、夜でも、レーダーなどで捕捉しようとする実験もはじまっているそうだから、相当気をつけなくてはいけないわね」
「みんな大丈夫かなあ」イリアスが心配そうに言った。
「海の近くにいるカモメは何もされないので、私が、毎日海まで行っているのよ」
「そうか。それなら安心だ」
「そうでしょう。明日の朝、カモメが情報をもってきてくれるはずだから、みんなでそこに行きましょう。ところで、あなたたちは、今日はどこで泊まるの?」
「新聞社がアパートを探してくれていますが、決まるまでホテルを取ろうかと」
「私の家に来ない?ジムも待っているから」
「迷惑になりませんか?」
「迷惑をかけるのはこっちよ。ジムは隠れているので、少し窮屈かもしれないから」
「それは何でもありません」
「みんなでいれば、今後の作戦をすぐに決められるしね。それでいい、イリアス?」
「OK.ぼくは、ジムに興味があるから」
「ジムも喜ぶわ」
車は全速力でロンドン市内をめざした。そして、上品な家が立ち並んでいる一画に着くと、すぐに、ある家の前に止まると、ガレージが開いた。車が入ると、すぐにガレージは閉まった。
そして、店椅子・ジャイロが車を降りると、ガレージの奥のドアが開き、若い男があらわれた。
ひじょうに痩せていて、目つきがきびしいが、満面の笑顔で近づいてきた。そして、二人に手を伸ばした。
「アントニスとイリアスだね。ジムです」
「アントニスです。そして、イリアスです」
「こんにちは」
「こんにちは。早く二人に会いたかったよ」
「お世話になります」
「遠慮することはないよ。ゆっくりしてください。でも、オリオンがぼくらを待っているから、いつでも動く用意はしておかねばならないけどね」
「当然です。カモメが見つけてくれたようですから」
「そうよ。明日みんなであそこに行くから、ジムは連絡を待っていてちょうだい」
そして、用意してくれていた食事をしながら、遅くまで話をした。
翌朝6時に、3人は家を出た。そして、いつもの場所に車を止めた。
ドーバー海峡が見渡せる高台だったが、森にかもまれているので目立たなかったし、クラーケンが出没する場所からも外れているので、好都合だった。
ドーバー海峡の上には、5,6機のヘリコプターが警戒していた。カモメが遠くを飛んでいるが、こちらには来ない。
「4,5時間待つことがあるわ。でも、オリオンがいる場所を全員で確認すしているから、もっと時間がかかるかもしれないわ」
そのとき、カモメの声が聞こえた。「あっ、仲間のカモメだよ」イリアスが叫んだ。すると、かなり上を4羽のカモメがゆっくり回っている。
「あなたたちに気づいたようよ。でも、降りてこないのは用心しているのよ。誰が見ているかわからないからね」3人はカモメの様子を見ていた。
「オリオンは南西の方角にいるようだと言いましたね、ミセス、ジャイロ?」
「そうよ。夜ここに来たとき、そっと近づいてきて、みんなでそっちを飛ぼう真似をしたのよ」
「それなら、車を南西に走らせましょう。カモメが先導すようになれば、その場所がわかるはずです」
「そうね。それじゃ、海岸沿いに行きましょう」3人は車に乗りこみ、南に向かった。

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