ピノールの一生(27)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(139)
「ピノールの一生」(27)
ピノールは自分の右足を相棒に貸しているので、その相棒と今出会ったロボットに支えられて登りました。
全員ロボットですから疲れることはないのですが、地球上の気温は北極と南極を除いてどこも50度を超えているので昼日中は人間は出ていないというものの、監視システムに見つかるかもしれないので、用心しながら登りました。
今出会ったロボットは最新装備をつけているので、ときどき立ち止まってはあたりの様子を見ました。
「それにしても、ヘリコプターがよく飛んでいるなあ」相棒は空を見あげて言いました。
確かに5,6機のヘリコプターが海と山の両方をkンシしているようです。飛んでいます。自分たちを探してはいないようですが、山の頂上を中心に警戒しているようです。
「ぼくらも頂上に向かっているのだから、警戒しなければな」とピノールが言ったとき、山の頂上付近にいたヘリコプターが急降下するのが見えました。
ヘリコプターの姿は木に隠れて見えなくなりました。バリバリという音はかすかに聞こえました。
「あそこはケイロンのアジトがあるところだ!」ピノールが叫びました。
「えっ!モイラはいないだろうな!」相棒も心配してくれました。
ヘリコプターは20分ぐらい攻撃していましたが、また高く上がって旋回をはじめました。
「動かないほうがいいよ。やつらは動く金属を見つける装置を持っているから」今出会ったロボットは、ピノールの前に立って、胸のボタンを回しました。その装置を妨害してくれているのです、
3,400年前のロボットのピノールどころか、数十年前のロボットである相棒にも、そういう装置はついていませんから、心強い味方が来てくれたものです。
「早くいこう」ピノールは急かしました。
「きみの気持ちはわかるが、暗くなるまで待とう。もし見つかったらまちがいなくやられてしまう」新しい友人は忠告しました。
「ピノール、それのほうがいいよ。やつらはロボットを完全に管理しようとしているから、証明書がないロボットには容赦なしに攻撃してくる」相棒も慎重です。
いつも冷静なピノールが焦っています。「なぜなんだ!人間は、自分たちが楽をするためにロボットを作った。さらに、命令せずとも動くようにと心まで入れた。それなのに、言うことを聞かないロボットは許さないとは!」
「野良犬だけじゃなく、野良ロボットもこの世から抹殺しないと、自分たちの存在が危ないと思っているんだろう。それが、また反乱を大きくする」
「神は、自分に似せて人間を作ったそうだが、人間も、自分に似せてロボットを作った。
それで、平気で裏切る自分のことを考えて、このままではいけないと、ロボットを選別しようとしたのだろうか」ピノールは少し冷静になったようです。
「それなら、ぼくらも神に作ってもらったほうがよかったな」相棒もピノールがいつものように冷静になったのでほっとしました。
「暗くなったら出発しよう。ピノール、でもケイロンのアジトではなく、まずゼペールじいさんの家に向かうよ」
暗くなってきたので、ヘリコプターもいなくなりました。「よし、出発だ」ピノールは二人に声尾をかけましたが、新しい仲間が先頭に立ちました。
ピノールと相棒はライトをつけなくてはなりませんが、新し仲間は、ライトがなくても暗闇の中が見える装置をもっているからです。
ようやく、ここに住んでいたときモイラと初めて出会った崖の下に着きました。「ああ、モイラと崖の上から海を見たんだったなあ」と思いましたが、すぐに「崖を登ってから左に行けば、ゼペールじいさんの家だ」と言いました。
「つまり、きみの家だ」相棒も答えました。
ピノールは二人に支えられて家に向かいました。ガチャガチャという音がするのもかまわず急ぎました。
「そこを左に曲がったところに、ゼペールじいさんとぼくの家がある。でも、ゼペールじいさんはまだ眠っているはずだ。どうしよう?」ピノールが左に曲がると、部屋には小さなライトがついていました。それを見たピノールは思わずドアをノックしました。

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