階段

   

「階段」
先日、阪神電車で甲子園に行く用事があったので(5月頃で高校野球やない)、梅田の駅に行った。
中央口と違って西口は乗客も少なく、プラットホームに行くためには狭い階段を下りていく。途中、階段は踊り場で曲がっている。
近づいたら、バーンというものすごい音がした。誰か階段を踏み外して落ちたなと思って急いでいくと、高校生ぐらいの女の子が、階段飛ばして踊り場に飛び降りたようやった。
踏み外してもうまく着地したんやなと感心していたら、次の階段でも5段飛ばして、プラットホームに飛び降りた。そこでも、バーンとゆう音がした。最初から確信犯やったんや。
学生の時は、ぼくも調子もんやったから、それらしきことをしたけど、まさか女の子が5段飛ばしするか(体操かなんかしているのやろけど、きょうびの調子もんのレベルは上がっているんや)。
70を越したぼくは、今一段一段確認しながら降りる身になりました(一段ごとにある黄色い線をよう見ながらな)。
年もあるけど、緑内障で視野が欠けているので、相当気をつけんとあかん。家だけでなく、駅やデパートで4,5回こけた。
幸い足首をぐねっただけやけど(恥ずかしいからすぐ立ち上がる)、これが尻もちならえらいことになる。
最近タレントの益若つばさが尻もちついて仙骨を骨折したそうや(当分車いす生活らしい)。また、菊池桃子も、仙骨にひびが入り当分療養するんやて(階段でこけるのはあんまり年に関係ないようや)。
足首でも仙骨でも、もっと運が悪いのは頭を強打することやけど、とにかくこけたらろくなことはない。
それで、最後の一段近くになると、手するを手すりを持ってから、目を見開いて確認するようにしている(寝起きで踏み外したことがある)。
このことについて、吉田兼好は「徒然草」の中でええこと書いている(教科書に出ていた)。「ある植木屋の棟梁は、弟子が高いところで働いているときは、何も注意せず、木から降りる寸前に、『気をつけろ』と声をかけたことに興味をもって棟梁に聞いたら、『高いところは本人が一番注意しています。やれやれと足を地につけるときは油断するものでございます』と答えたので、「身分の低いもんでもええことゆう」と吉田兼好は、上から目線で感心する。
これは、木や階段の上り下りだけやなくて、人生もそうやないか。
事業などで成功して、人生の階段をのぼっている時に、今はやりの「暴露系」で階段を外されることがある。
政治家とか俳優とかM社長などの経営者など有名人はプライバシーもへったくれもない時代や(これも、夢が持てない時代の産物かもしれん)。
ぼくも失敗の口(くち)やけど、何事(なにごと)もとことん行って失敗するより、途中こんなんちょろいもんやと足を踏み外す失敗のほうが多いような気がする(暴露されて階段がなくなってしまうのも含む)。
老いも若きも、階段は気をつけて上り下りするもんやゆうことを忘れずに毎日を過ごそうやないか。

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