ジャングル(3)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(166)
「ジャングル」(3)
力の強いサルは、金色の頭の毛をなびかせて急いで広い場に戻りました。聴衆は一人も帰らずに待っていたので自信がわきました。
「今長老におれの考えを伝えてきた。そして、おれの考えと長老の考えのどちらを取るかみんな決めてもらうことになったぞ」と大きな声で言いました。
聴衆は、昔から長老を尊敬しているので、少し複雑な気持ちになりました。
力の強いサルはそれが分かったので、「時代が変わったのだから、考えも変えなければ生活は楽にならない」と言いました。
「しかも、食料が少なくなってきたのは、単なる火事だけが原因ではない。
その証拠に、火事が起きる前からも、腹一杯食べられなくなっていただろう?
それは天候のせいなのか、あるいは、人間どもがジャングルが荒らしたからか、あるいはその両方なのかは分からないが、とにかく年々状況は悪くなっているのは確かだ。とにかく、何もしないでいては全員飢え死にだ」と力の強いサルが叫んだとき、長老が二人に世話係ともに、木の枝で体を支えながら姿をあらわしました。
聴衆は全員立ち上がって長老を迎えました。長老は弱々しい声ながら、よく通る声で話しはじめました。
「先ほど、彼に来てもらって考えを聞いた。おまえたちにひもじい思いをさせて申しわけなく思う。
しかし、数年もすれば、木々は大きくなり食料も昔のように増えてくるじゃろ。
それまでは辛いじゃろうが辛抱してくれないか。それを早く伝えたかったが、
体が言うことを聞かなくなったので遅くなった。誠に相すまぬ。
おまえたちに言っておきたいのは、争いは必ず憎しみを生み、また新たな争いを生む。しかも、その間に多くの命を失うことになる。
ジャングルの中や外と助け合うことは喜びと満足をもたらして、未来を明るくするということじゃ」聴衆は黙ってうなずくだけでした。
力の強いサルは、「長老。すぐに来ていただいて感謝します。せっかくですから、長老の考えと、おれ、いや、私の考えとどちらを選ぶか、ここで決めさせていただいてよろしゅうございますか」と言いました。
「それでは挙手で決めます」と言ったとき、聴衆の一人が、「挙手ではなく、葉っぱをどちらかの方に置くという方法でお願いできまませんか」と言いました。
やはり、長老の前で挙手をするのは辛かったのでしょう。
「よし、わかった。それなら、あそこに大きな木が2本ある。それぞれの木の下に穴を掘るから、そこに葉っぱを入れてくれ。
せっかく長老が来てくれたのだから、今すぐ始めよう」
聴衆は2本の大木の後ろに並びました。その間に有志によって穴が掘られ、大きな葉っぱが用意されました。
投票は粛々と進みました。やがて集計が行われ、500人のサルがいましたが、ほとんどが力の強いサルに投票しました。長老にはわずか30人が投票しただけでした。長老は付添いのサルとともにその場を去りました。
「おれの考えに賛成してくれてありがとう。必ずこのジャングルを昔のようにナンバーワンにしてみせる。それでは、若い者は集まってくれ。今から軍隊を組織して、明日他のジャングルに攻め込もう」力の強いサルは言いました。

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