チュー吉の挑戦

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとはヘンな童話100選」の(11)

「チュー吉の挑戦」
「チュー吉、遅かったじゃないか!きみが、このミッションのリーダーだろう?」チュー作は怒ったように言いました。
「みんな、ごめん。ママの話が長くて」チュー吉は、申しわけなさそうに答えました。
「ママに反対されたのか?」チュー太郎が言いました。
その後ろで、チュー次郎やチュー造などが心配そうにチュー吉を見ていました。
「いや、ちがうよ。ママは、何もしないと、何も起こらないと、ぼくが行くことに賛成してくれたんだ」
「それじゃ、どうして遅れたんだ?」チュー作がさらに聞きました。
「ワインで前途を祝福してくれたのはいいけど、ついでに、フィギュアで浅田真央を抑えてNHK杯を取った鈴木明子のためにも祝杯を上げるといって、どんどん飲んじゃって、手に負えなくなったんだ。
以前、パパがいない寂しさから飲みすぎて、人間がいるところにふらふら出ていって、あやうく捕まることがあったのでね。しかも、ぼくが知らないことばっかり言うので困ったよ」
「どんなことだい?」誰かが聞きました。
「摂食障害を乗りこえたうえに、真央ちゃんより『見てくれ』が悪いのに、よくがんばったとか、それでも、『伊藤みどり』よりましだとか。
鈴木明子の目は、『白子さん黒子さん』の目に似てないかいと言われても、ぼくにはわかんないよ」
「そういえばそうだな。『ミクロゲンパスタ』の広告に出てくるよ」博学のチュー助が、みんなに説明してやりました。
「チュー助はなんでも知っているなあ」
「4,50年前の広告だよ。ぼくらは生まれていないけど、この前から天野祐吉の本を読んでいたのでね」
「そして、ママは、最後に『人間、いや、ネズミ、夢を忘れたら生きる価値はない。義を見てせざるは勇なきなり。それじゃ、行ってらっしゃい』と見送ってくれた」
「なんだい、そりゃ。むずかしい言葉だなあ」また、誰かが言いました。
「正しいことをしないのは、勇気がないからだということだよ」すばやくチュー助が解説しました。
「見ることは大事なんだよね。でも、この前、夜中、天井の下でギャーギャーいう人間の声がするので、何だろうと覗いていると、パパは、『こら、そんなもん見ちゃいかん』と怒ったんだ。
ママも、顔を赤らめて、『早く向こうに行きなさい』言うんだ。チュー助、あれは、何をしていたか教えておくれよ」一番年下のチュー造が聞きました。
「きみが、もう少し大人になったら教えてやるよ」チュー助は、それ以上言いませんでした。
「ぼくもパパも、『見るべきほどのことをば見つ、というからな。しっかり世の中を見てこい』と見送ってくれたんだ」チュー次郎もうれしそそうに言いました。
「ああ、平知盛の最期の言葉だ」チュー助は、今度はすぐに言いました。
「ぼくが遅れたので、迷惑をかけたが、そろそろ行かなくっちゃ。その前に話しておきますチュー吉は、リーダーらしい声で言いました。
「どんな事件でも、ムーズ1回分で解決すること。きょうび、みんな忙しいから、解決が長びくと、誰も見向きしてくれなくなる。しかも、ムーズに出たいものはいくらでいるそうだから」
「おれたちの嗅覚はすごいんだ。事件のにおいもすぐわかるから、大丈夫だよ」誰かが答えました。
「ぼくらの実力がわかれば、ディズニーが、アニメ化の話をもってくるぞ」
「ばか。すでにミッキーマウスがいるじゃないか」
「ぼくたちの場合は、モデルが先にありき、か」
「そんなことはどうでもいい。今はどんなに嫌われていても、いつかわかってくれる日がくることを信じて、みんなでがんばろう」

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