シーラじいさん見聞録

   

オリオンが海面から顔を出したとき、仲間のカモメがサッと降りてきた。
「さっき仲間が来て、向こうのグンカンがこちらに向かっていると報告してきました!」と早口で言った。
「分かりました。それでは作戦を終了します」オリオンも早口で答えた。
そして、グンカンの下に行き、リゲルにそのことを報告した。しばらくして、シリウスが戻ってくると、「今、ヘリコプターがものすごい勢いでインド洋のほうに行ったけど、どうしたんだろう?」と聞いた。
「クラーケンたちが動きだしたかもしれないぞ。そして、ミラの前にいるグンカンもこちらに向かっているそうだから、作戦はひとまず終了だ」
シリウスは、「それなら、引きあげるのか」と目で言った。リゲルがじっと痛みをこらえているからだ。
そのとき、リゲルが、目を開け、「オリオン、きみらは先に行ってくれ。ぼくは後から追いかけるから」と言った。
「クラーケンたちが来るかもしれない。幸い血は止まっているから、一緒に行こう」
ベラも戻ってきた。オリオンは、作戦が終了したことを言った。
「それなら、わたしが、リゲルを下で支えるわ」ベラは、今や頼もしい戦力になったのだ。
「3人でやろう。幸い、センスイカンはいないし、グンカンは、紅海のほうに行くだろから、そうあわてることはないよ」オリオンは、ベラに答えた。
「そうか。まだ体の半分が痺れているが、動いたほうが早く戻るかもしれないな。
でも、無理をしないでくれよ。隠れるところがあれば、そこで休むから」リゲルは、オリオンの考えに同意した。
「きみの状態を見ながら判断する。それでは、ベラ、リゲルの下に入ってくれないか」
リゲルの右下を支えながら、海底近くを進み、呼吸をするときは、カモメ情報を聞いて、リゲルを一気に海面まで上げるのだ。
オリオンは、海面からのぞいた。めざといカモメがさっと下りてきた。「グンカンは、紅海に入りました。ミラとペルセウスは、順調に進んでいます」
オリオンは、リゲルの様子を話し、どのように進むかを説明した。
その後、オリオンが前方を、シリウスが背後を警戒しながら海底に沿って進んだ。
しばらくすると、「何か近づいてくるぞ!」と、シリウスが叫んだ。
クラーケンたちか。オリオンは、感覚を集中した。確かに大きな物体を感じる。まだ太陽が沈みきっていないので、もう少し近づいてくれば、すぐに見つかってしまう。
オリオンは、ベラに、リゲルと左隅に行くように言った。そして、シリウスとともに、少し戻った。もし見つかっても、広い紅海に戻れば逃げることができると考えたのだ。
やがて、「オリオン」という声が聞こえた。
オリオンはシリウスと顔を見あわせた。「誰だろう?シーラじいさんの声じゃないな」
「クラーケンの部下は、名前を知っている可能性があるが、攻撃をしているときに、こんなことはしないだろう」2人は、目で話あった。
そのとき、「シーラじいさんもいるぞ」という声が聞こえた。
シーラじいさん!その声で、2人は、声のほうに向かった。
2つの物体がゆっくり近づいてきた。そして、オリオンを見つけるや、「オリオンだ、オリオンだ」と叫んだ。喜びが溢れている。
しかし、オリオンが、怪訝な顔をしていたためか、「以前、助けていただいた兄弟です」と、また叫んだ。
「ああ、あのときの!」オリオンも、思わず叫んでいた。確かに「安全な海」に住んでいたシャチの兄弟だ。
「ぼくらがここにいることがよくわかったね。でも、どうしてここへ?」オリオンは驚いて聞いた。
「シーラじいさんが、旋回しているカモメを見て、『あれは仲間のカモメじゃ。あの下には、誰かがいるぞ』と言ったので、人で探しに来ました。
それまでは、見つからないように合図も出さずに来たのですが、大声で探しましたよ」2人はうれしそうに話した。
そして、「どうしてここへは、シーラじいさんが来てから話します。ほら、来られたようです」と後ろを振りかえった。
えっと思うと、「やっと着いたぞ」という声がした。「シーラじいさん!」オリオンとシリウスが叫びながら、シーラじいさんのそばに行った。
「無事じゃったか。他のものはどうした?」と聞いた。
オリオンは、紅海の入り口で別れたときからのことを手短に話した。
「そうか。うまく切りぬけてきたな」シーラじいさんは、満足そうに答えた。
「わしも、紅海に入ろうとするとき、『シーラじいさんじゃないですか』という声が聞こえた。
振りかえると、どこかで見た若者じゃった。自己紹介をしてくれたので、『ここは危険じゃ。早く帰りなさい』と言うたんじゃが、『一緒に行かせてください』と頼むのじゃ」
「はい、『安全な海』でクラーケンたちのうわさを聞くたびに、地球や海を救うために、命がけで戦っているきみらのことを話していたんだ。
パパとママは、自分たちの子供を助けてくれたお礼をどうするか考えていたと思うんだ。『おまえたちが、したいことをしろ』と言ってくれた。
それで、2人で考えて、きみたちの役に立とうと北に向かった。
だんだんクラーケンが集まってきていたので、深い場所を先回りしたんだ。その時に、しシーラじいさんに出会ったんだ」
「そういうことだったのか。クラーケンたちが攻撃をはじめたということを聞いているから、急がなくてはならないんだ」オリオンは言った。
「リゲルは、ぼくらに任せてください」シャチの兄弟は力強く答えた。

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