シーラじいさん見聞録

   

「怪物はなぜ襲ったかわからないのですね?」オリオンは、もう一度聞いた。
「そうだ。オリオン、きみにお願いがある。きみが言うように、世界がそんなことになっているのなら、おれたちの役目があると思う。それで、おれたちがここにいることを知らせてくれないか」金髪の男が言った。
「ぼくのようなものが言っても、信用してもらえるでしょうか」
「おれたちが手紙を書く。それを渡してほしい」
「船に乗っているニンゲンに渡せばいいのですね」
「ちがう。ソフィア共和国まで行ってもらいたい」
「ソフィア共和国?」
「北緯55度45分、東経37度37分にソフィア共和国の首都モズリーがある。そこで、、家族や同僚がおれたちのことを待っている。海には面していないが、川には、海から来たイルカがいる。
ここからかなりの距離があるが、世界中の海を行き来しているきみたちならできる」
別の男が早口で言った。「おれたちが生きていることがわかったら、すぐに助けに来てくれるはずだ。そして、ここを拠点に潜水艦で奥に行き、王と話しあう。そうなれば、世界は、元通り平和になる。きみらものんびり暮らせるようになる」
また、別の男が哀願知るように言った。「きみらが、ちゃんと約束を果たしてくれたら、国にいるクジラ、イルカ、シャチを全員解放することを約束するよ」
オリオンは、リゲルたちに、今の話を伝えた。
「英語を話す怪物がいるというのに、何も聞いていないということがあるのだろうか?」リゲルは、ニンゲンをちらっと見て言った。
「ぼくもそう思う。何か隠しているぞ」シリウスも同じ意見だ。
「それなのに、おれたちを危険な目に合わせようとしている」ミラも怒ったように言った。
「何か事情があるのよ。しかし、大勢の仲間をなくしたのはまちがいないわ。ペルセウスがここに来てからも、2人目がなくなったそうだもの。それに、あの痩せようは見ておれないわ」ベラもニンゲンをかばった。
「そうだ。浅瀬で魚を取るときは話をするが、たいていは一人で何か考えているか寝ている。泣くものがいると、今日死んだものが慰めていた。
ぼくたちがあらわれたものだから、みんな夢を見ているように思っているかもしれない」ペルセウスも自分の見たことを言った」
「それじゃ、シーラじいさんの話を聞こう」オリオンは、そう言うと、ニンゲンに近づいた。
「あなたたちの切実な願いはわかりました。ぼくたちも、あなたたちを一刻も早く助けたい。しかし、この任務は、ぼくらの能力をはるかに超えている。
それで、成功するためにはどうすべきか相談する人がいます。できるだけ早く帰ってきますから、しばらく待ってください」
ニンゲンたちは、少し落胆胆したような顔になったが、金髪の男は、「絶対帰ってきてくれよ」と言った。
オリオンたちは、すぐにそこを出て、シーラじいさんがいる岩場に急いだ。
近づくと、みんなが信号を送ったので、シーラじいさんは、何事が起きたのかと岩から出ていた。
「シーラじいさん、たいへんなことがわかりました」
「奥にニンゲンがいました」オリオンたちは、見たこと聞いたことをすべて話し、ニンゲンを助けるためにはどうしたらいいのか聞いた。
シーラじいさんは、じっと考えていたが、シリウスが、「あの光るものは何でしょうか?」
と聞いた。「多分鉱物じゃな」シーラじいさんは、それにはすぐに答えた。
「鉱物?以前シーラじいさんが説明してくれたものですね。それにしても、美しいものです。きらきら輝いて、雨の後に出る虹のようです」
「太陽がないのにどうして光るのですか?」ベラも聞いた。
「その鉱物自体が光る性質があるのと、他の鉱物と作用することによって、輝いているのじゃろ」
「ニンゲンが見つけたのでしょうか?」ミラが聞いた。
「そうなら、どこかで読んだはずじゃが。それとも、最近のことか?」
「数年前といっていました」オリオンが答えた。
「それじゃ、ソフィア共和国が秘密にしていたのだ。独り占めするために」リゲルが言った。
「空気があるなら、ニンゲンは困らない。簡単にもって帰れずはずだが」ペルセウスもふ不思議そうに言った。
「そこは怪物の城だったとニンゲンが言っていました」オリオンが思いだした。
「それなら怪物は怒るよ」
「ソフィア共和国に知らせてもらいたいと言っていたんだな」みんな次々と自分の意見を言った。
「ソフィア共和国に政変が起こり、多くの国に分裂したと読んだことがあるぞ」シーラじいさんは思いだした。
「分裂?」
「分かれたのじゃ。元々多くの国が一つになったそうじゃが」
「そうか。それで、助けに行かないのか。もっとも、怪物が怖いということもあるかもしれないが」
「しかし、あんな美しい鉱物をあきらめることはないだろう」
「小国になったのなら、どこか大国にこの話をもちかけているかもしれない」
「おまえたちが考えているとおりじゃ。ニンゲンには『喉から手が出るほどほしい』という言葉があってな。文明を維持・発展するためには、鉱物がどうしても必要じゃ。
しかし、陸にある鉱物はいつか尽きることがわかっているので、海を探している。
あちこちにあることはわかっているが、それを取りだすことはなかなかできない。
空気があり、水圧に邪魔されないという好条件をほっておくことはないじゃろな」

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