オニロの長い夢
2026/08/04
オニロの長い夢
1-81
しかし、いつも以上に雲のが深くてまったく様子が分かりません。ピストスの後についていこうとするのですが、すぐに木にぶつかってしまいます。
それで、落ちていた枝をどうにか見つけ、それを杖にするだけでなく、木と木の間を見つけるために使いながら登っていきました。
ようやく坂道が終わりました。そこは海にいたイノシシと自分が巨大な鳥から逃げた場所であり、船に乗せるために動物たちを集めた場所です。しかも、この近くにピストスが取ってくれたノソスグラティらしき草を隠しています。
オニロは、すぐにノソスグラティが生えている場所に行こうと思いましたが、あたりがまったく見えないので、雲が晴れるまで待とうと思いました。
雲が晴れるまで、巨大な鳥がどうして動物を掴まえてこの島に運ぶのか調べることにしました。
巨大な鳥は夜になると動きだすことが分かっていたので、声などの気配を感じるまでここで待つことにしました。
やがて、どこかでバサバサという音がしました。「来たぞ!」オニロはピストスに声をかけて立ち上がりました。ピストスもすぐ立ち上がったようです。
「あの音が行くほうについていこう」と耳を澄ませましたが、すぐ音は消えました。すでにどこかに飛んでいったようです。
雲は一向に晴れそうにありません。それに、雲が木に当たるためかシューシューと音がしています。「雲はまるで地から湧いているようだ」オニロは立ち止まらざるをえません。
ときどき、どこかで鳥の鳴き声が聞こえました。それは動物を掴まえて空を飛ぶ巨大な鳥の鳴き声ではなく、森に住んでいるさな鳥の鳴き声です。こんなずっと雲に覆われている島には愛らしい鳥の鳴き声が聞こえるのかオニロは不思議に思いました。
「もう元の場所に戻ろうか」と考えたとき、またギャーという鳴き声が聞こえました。
巨大な鳥が空を飛んでいるようです。しかも、かなり近くを飛んでいます。オニロは立ち上がって鳴き声を追いかけました。もちろん、ピストスもついてきています。
しばらく進むと、近くで何か物音がしました。人の話し声のようであり、鳥とはちがう叫び声のようです。何だろう。どこかで聞いたような声ですが、何か分かりません。
オニロは木の陰に隠れて声のほうに近づきました。
はっきり見えませんが、大勢集まっているようです。とにかく雲が少しでも晴れればと様子をうかがっていた。
そのとき、何かが動きました。ピストスが勢いをつけて走り出したのです。「ピストス!」オニロは叫びましたが、ピストスは何かが集まっている場所に向かって走りだしたようです。
すぐに叫び声が上がりました。そしてバタバタという音が続きました。それから、叫び声はだんだん小さくなりました。ピストスはそのまま逃げたので、何かが追いかけようとしたようです。
オニロもそっちに行こうとしたとき、何かがオニロの背後からぶつかってき思わず前に倒れたので、すぐに立ち上がろうとしました。オニロは痛みをこらえて、慌てて四つん這いで逃げました。幸い木と木の間が狭かったためか誰も追ってきません。
少しの間休むと、ピストスのことが心配になりました。「ピストスは、あそこで何が行われているのか見えるように飛び出したのにちがいない。急ごう」と思って、そっと動きだしました。
先ほどの物音は聞こえません。「もしかしたら大勢でピストスを追いかけているかもしれない」オニロは雲の中を急ぎました。
しかし、気配はありません。そのとき何かにつまずいてこけそうになりました。何か黒いものです。動きません。それで手探りするとクマのような動物です。
しかも、何匹も横たわっています。「かわいそうに。ここまで連れてこられて、こんなことになってしまったのか」オニロは8頭いる動物をやさしく撫でました。
「それにしても、動物たちを集めて何をしていたのだろう。巨大な鳥もかなり集まっていたようだが、真ん中に何がいたのかちゃんと見えなかった。ピストスがぼくに見せようとしたのに」と思ったとき、またギャーと叫んでいる声が聞こえます。
その声がかなり遠くで聞こえたり、少し近づいたりしています。ピストスは逃げ回っているのですが、あちこち走って敵を攪乱(かくらん)しているのです。オニロは鳥の叫び声のほうに急ぎました。
オニロの長い夢
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オニロは,枝を杖代わりにして地面の様子を見たり、左右に振ったりしながら前に進みました。雲が流れると木があることが分かるのですが、雲の厚いと木にぶつかってしまうことがあるからです。
しばらくすると体が傾くような気がしました。坂道になっているのか思っていると、急に地面が揺れだしました。これは何だと思うまもなく、立っておれないほど地面が揺れだしました。
オニロは近くの木にしがみついて揺れが収まるのを待ちました。しかし、揺れはさらに激しくなり、突然ドーンという音がしたかと思うと何かがばらばら降ってきました。
それは木にぶつかるとバリッという音がし、そのまま地面に落ちるとドンという音がして体が飛び上がるほどになりました。
オニロは耐えるしかありません。あちこちで大きな音します。それに空から降ってきたものは熱を持っているのか付近が熱いのです。
確かに雲の向こうは赤くなっているところがあります。まるで山火事のようです。いや山火事が起こっているのです。遠くで雷もなっています。オニロは、ピストスのことが頭に浮かびましたが、どうしようもありません。
しばらくすると雨が降ってきました。次々と災難が起きます。オニロは神様を怒らせてしまったのかと思いました。しかし、どんなことがあってもピストスを見つけなくてはなりません。
ようやく雨が収まりました。オニロは歩きはじめました。しかし、木と木の間の道は石がゴロゴロ落ちています。木も折れて目の前に横たわっています。どこに道があるのかさえ分かりません。
オニロは、やみくも歩いていてもピストスを見つけらない。どうしたらいいか考えました。
雲は渦のように流れています。一方から雲はにおいがしませんが、反対側の雲は腐った卵のようなにおいがします。これた!このにおいが爆発した場所から出ているのだ。ピストスはこのにおいを避けるためにそこから離れたのにちがいない。
オニロは渦の様子を見ながら進みました。そして、どこかでガサッと音がすると、ピストス、ピストスと叫びながら、音のほうに急ぎました。
それは石が崩れたり、枝が落ちたりする音だったのですが、こちらに来る音が続く音がしました。オニロは急いで音のほうに行きました。
すると、何かがこちらにゆっくり向かってきます。オニロは、「ピストス、ピストス」と叫んで夢中で走りました。ピストスも喜んでオニロのそばに来ましたが、かなり疲れているようです。
オニロは,石が頭や体に当たっていないか調べました。やはり歩き方がおかしいのです。
右足の灰を払って調べると、どうも骨が出ているようです。慌てて逃げるとき、石や木にけつまずいたようです。
これでは動くことができません。幸い雷も聞こえなくなったので、ここでしばらく休むことにしました。
ピストスがすぐに動こうとするので、オニロは、「今無理をすると歩けなくなるぞ。ぼくらはノソスグラティを見つけて村の人々を助けることが任務なんだ。だから今はゆっくり休め」と何回も注意しました。
10日ほどそこで休みましたが、自信はときどきありましたが、爆発もなく、石が降ってくることもありませんでした。
ピストスもようやく歩けるようになったので、まず何をしようか考えました。
まずここから船を止めている場所に戻ろう。その間に儀式が行われていたところがある。待っているように言った動物の様子を見てから、ノソスグラティを探す。それはピストスが知っている。
オニロはピストスに計画を話して出発しました。しかし、道らしきところも石が転がっていてなかなか進めません。慌てるとピストスがまたけがをするかもしれないので、ゆっくり歩きました。
数日かけて儀式が行われていた場所を見つけました。灰に覆われていましたが、一段高い場所に見覚えがありました。オニロはピストスに見せるために、祭壇の前にあるいくつかの灰のかたまりを払うと動物が横たわっていました。「何か儀式をしていたのはまちがいないだろう」とピストスに言いました。ピストスは茫然と見ていました。
オニロは、「それじゃ。戻るよ」と先に歩きだしました。地面が揺れたような気がしたからです。
ここからは徐々に下り坂になっているはずですが、石や枝が邪魔をしているのでよくわかりません。それでも注意しながら進みました。
ようやく目印にしている木があったのでまちがいないと確信しました。それは、2本の大きな木の間に小さい木がぴったりひっついて立っているのです。
オニロはパパとママの間に自分がいるんだと思うようになりました。3本とも倒れずに立っていました。オニロは、ピストスに、「もうすぐだ」と声をかけました。
オニロの長い夢
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確かにここから先は空き地のようになっていたはずですが、空から降ってきた石が積もっていて、様子はかなり変わっています。ピストスも歩きにくそうですが仕方がありません。
また、待っているように言ったイノシシの子供はどうしているのだろうか心配になってきました。
「おーい」と何回も叫ぶと、何かがごそごそと石と石の間から出てきました。イノシシです。
「生きていたか」オニロは大きな声を上げました。すると、その後ろからも2匹出てきました。どうもクマとウシの子供のようです。合計3匹です。無事にいてくれたか。
イノシシ以外は初めてでしたが、クマもウシもオニロのそばに寄ってきました。まだ子供だ。石が降るありさまがよほど怖かっただろう。
「じゃ。今からみんながいる島に行くが、船の様子を見てくる。もう少しピストスといっしょにいてくれ。すぐに戻ってくるから」オニロはそう言って、船をつないでいる場所に向かいました。
ただ、下りになっているので、降ってきた石がそのまま海に向かって転がったのか石は徐々に積み重なっています。
いつもなら勢いがついて10分ぐらいで海に着くのに石の山を越えなければなりません。
ようやく海に着きましたが、どこに船を停めていたのか分かりません。細い木が数本生えていたのが目印だったのに,木も消え、船を隠せるようになっていた場所も石が積み重なっています。「石に当たって粉々になっているのかもしれない」と思って、石の隙間を探しましたが、船らしきものはまったく見つかりません。
オニロは今すぐ船を出して動物を島に届けてすぐ帰ってきてノソスグラティを探すという計画が消えてしまったと思うと涙が止まらくなりました。
しかし、負けてはおられないという気持ちも生まれました。船を作るのに時間がかかるが、筏ならできる。向こうの島には大勢の仲間がいる。そう考えると少し希望が出てきました。
そのとき、ピィーと鳴く声がします。ピストスの声です。オニロはあたりを見渡しました。
すると、下り坂にある石の上にピストスが立っています。そして、海のほうを見て何回も鳴くのです。
オニロは坂を上ってピストスがいるほうに行きました。そして海のほうを見ました。幸い雲が薄れています。するとかなり先に岩のようなものがあり、そこに巨大な鳥が一羽止っています。
「あそこに岩がなかったはずだが」オニロはいぶかしみましたが、ひょっとしてと思いました。石が降ってきたとき、上から転がってきた石が船を押し出したかもしれないのです。
「ピストス。ありがとう。ぼくらの船かもしれないぞ。見てくるよ」と言って泳ぎだしました。
幸い波はないので船が動くことはないようですが、かなり疲れているので、思うように泳げません。
鳥が一匹増えています。オニロは少し休みながら、「あいつらは獲物を掴まえては一直線に島に運んだはずだ。あの爆発が起きてから獲物を持っていないし、島にも行っていない。あれはよほど大きなことだったにちがいないと思いました。
2匹はまだいました。オニロはいつも体につけているナイフを手にして近づきました。確かに大きい。子どものクマでもウシでも鷲づかみして空を飛べるぐらいです。オニロはナイフを持っている手に力を入れてさらに近づきました。
するとオニロに気づいた鳥は2匹とも大きな羽音を立てて飛びたっていきました。
すぐに転覆している船に着きました。まちがいなく自分が作った船だとわかったオニロは、「よくがんばった」と船を抱きしめました。
そして、船を元どおりにしようとしましたが、重くてできません。それであきらめて転覆したまま雲の島に戻ることにしました。
かなり重いですが、懸命に押すとゆっくり動きました。そこで、船首を雲の島に向けて進みました。
途中で船がまた元に戻らないように体と船をロープで結びました。疲れと空腹で意識が薄れたときのためです。
それでも体が動かなくなるときがありました。ようやく目が覚めて力を入れるといつもより早く進んでいるようです。何だろうと思っていると、何かいそうです。
オニロは、あっ!と叫びました。ピストスが船の左側にいるのです。ピストスも押しているのです。「おまえも泳いでここまで来てくれたのか」オニロはぐっと足に力を入れました。
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オニロとピストスは休むことなく船を押しつづけました。数時間後ようやく島に着くことができました。
岩と岩の間に広い浅瀬を見つけて、そこに船を入れました。それから、岩にロープを回してそれを引っぱり船を少し浮かしました。その隙間に石を入れてから、またロープを引っぱってようやく船を戻すことができました。
今度は、船底などに穴が開いたりしていないか調べました。2,3か所修理しなければならない場所を見つけました。
そのためには、また坂道を上がって枝を探さなければなりません。オニロとピストスがあちこち探していると、イノシシ、クマ、ウシも、何をしているか分かったようで、それぞれが枝を探すようになりました。
オニロは、集まった枝を見て、どの枝をどのように切ったらいいか考えて、ナイフで加工しました。さらに今後のことも考えて余分に作りました。
そして、みんなで船を置いている場所に戻りました。
オニロは、海水が入ってこないように何度も試しながら穴の部分を塞ぎました。それから、海に浮かべて様子を見ました。そして、納得がいかないところは何度もやりなおしました。
もう大丈夫だと思ったとき、ドーンと言う大きな音がしました。顔を上げると、島が大きく揺れました。
オニロは、空から石が飛んできてもいいように、ピストスとイノシシ、クマ、ウシを大きな岩の陰に集めました。
それからすぐに石がばらばらと降りはじめました。雷の声もします。前と同じことが起きているのだ。すると次は岩が坂道を転がってくるはずだ。オニロは、船に被害が及ばないようにするためにはどうしたらいいか考えました。
坂道を転がる石と石がぶつかる音がしています。
オニロは船を島から離すことを決めました。そうすれば、上から転がってくる石の勢いで下の石が動くと以前のように船がを海に出てしまうかもしれないからです。
まずロープを大きな岩に巻きつけ、それを船に結んでから船を海に出しました。
10メートルぐらい話すと泳いで島に戻りました。島はまだ揺れています。岩のような大きな石も転がってきているようです。雲がかかっていてよく見えませんか、ガーンと
ぶつかる音が続いています。
さらに雷の音も大きくなってきます。稲光も雲を引き裂くように光ります。
オニロは何が起きているのか分かりませんでしたが、とにかくこの島から逃げようと決めました。
ようやく揺れは収まりました。身をかがめていたピストスや3頭の動物も顔を上げています。オニロは、外に出て船の様子を見ました。幸い船は何事もなく海に浮いています。すぐに船まで泳いでいき、船の中を調べました。水が入ることもなく、右舷左舷も大丈夫です。またマストやマストにくくりつけていた帆も異常はありません。
オニロは船を島まで近づけ、みんなに「船に乗るように言いました。イノシシ、クマ、ウシは船に乗るのがはじめてのようでしたが、ピストスが手伝って乗ることができました。
そして、船は無事に出ました。いつもは真っ白な雲がかなり黒ずんでいるようです。しばらく行くと、ピストスが鳴きました。オニロがそちらを見ると、海の上の雲が真っ赤になっています。
オニロは、海が燃えているのかと驚きました。海は燃えることがあるのかと思うと恐ろしくなりました。海が燃えたら、ぼくらも死んでしまう。とにかく急ごう。
オニロは急ぎました。途中が海に浮いているのを見ました。茶色の大きなものです。ゆっくりする時間はないのですが、それに近づいて見ると大きな鳥のようです。
あの巨大な鳥だ!オニロは驚きました。死んでいる。よく見ると体が大きく傷ついています。ひょっとして空から降ってきた石が当たったかもしれない。
オニロは船を出しながらも、この爆発は巨大な鳥も予想がつかなかったかもしれない。
しばらく行くと、すぐそばで大きな鳴き声が聞こえてきました。すると、イノシシが慌てて動きだすと、海に落ちてしまいました。オニロは慌てて海に飛び込み、イノシシを助けようとしましたが、姿が見えなくなりました。
オニロは島のほうを見ました。雲の間から赤いものが見えます。まだ海はまだ燃えているようです。炎がこちらに来たら、船も燃えてしまうかもしれない。オニロはやむなく船を前に進めました。
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ようやく岬が見えてきました。そこを回れば動物たちがいる島です。オニロは急ぎました。天気はいいので、島ははっきり見えました。
ようやく島に着きました。誰かが気が付いたようで、鳴き声が聞こえました。すると、ツルが投げられました。船に乗っていたクマとウシはびっくりしてその様子を見ていました。
オニロは船を繋いだ後、まずクマをかごに乗せました。かごはスルスルと上に上ました。
その速さは何回も練習したようです。すぐにツルが下りてくるとウシを乗せました。
次はピストスが上がると、最後はオニロが島の上に行きました。動物はオニロのまわりに集まってきました。
「みんな元気だったか」と言って、一匹一匹抱きしめました。そして、「また島に帰らなければならない」と話しはじめました。
「おまえたちが連れていかれた島がたいへんなことになったんだ。大きな音がしたかと思うと島が揺れて無数の石が空から降ってきて、木をなぎ倒したり、坂道を転がったりして島はすっかり変わってしまった。
残っていた仲間を連れてきたときも海が燃えているのが見えた。幸いこのあたりまでは燃えていないけど、注意しなければならない。
でも、すぐに島にも戻らなければならないのは、ノソスグラティという薬草を見つけなければならないからだ。それは、今多くの人々が死んでいる病を治す薬を作る薬草なんだ。それを見つけたらすぐ戻ってくる」
そう言ったとき、オニロの話を聞いていた動物の何匹かが、何か感じたのか海のほうを見ました。
オニロも崖の上から海を見ました。すると、見かけたことがある船が止まり、乗っている人が、「おーい」と叫んでいました。
オニロはツルを投げて、「それに乗ってください」と叫びました。男の人はすぐに乗ったので、みんなで引っ張りました。
案の定、オニロと動物のことを心配してくれた漁師でした。「おお。帰ってきたか。これで全員揃ったのか」と聞きました。
「ありがとうございました。島に連れてこられた動物は全員助けたつもりですが、あの島でたいへんなことが起きました」
オニロは島で起きたことや、またすぐに戻らなければならないことを話しました。
「やはりそうだったか。おれたちが漁を終えて港に戻ったとき、ドーンという音が何回かした。海を見ても何も変わったことはなかったので、どこかで雷が鳴っているのかと思ったが、島の中で鳴ったのか」
「突然島が揺れたり、石が降ってきたりで逃げるのに精一杯でした」
「分かったぞ!」漁師は叫びました。オニロは漁師の顔を見ました。
「あの島は火山だったんだ」
「火山」オニロにとって初めて聞く言葉でした。
「そうだ。火山だ。火山の下にはどろどろの火が溜まっていて、神が怒ればそれが噴き出してくると言われている。何かが神を怒らしたのに違いない」
「神が怒っているのですか」
「そうだ。火山は国のあちこちにあるが、まさかあれが火山だとは知らなかった。としよりからもそんなことは聞いたことがない。あの島はいつも雲がかかっている妙な島だから、用心して近づかないように言われていただけだ。おまえもこれ以上近づかないようにしたほうがいい。おれは帰るが、また何かあったら来るから」と言って、ツルのかごに乗って帰っていきました。
オニロは深いため息をついて島のほうを見ました。そして、「神はぼくに怒っているのか」と考えました。神に対する捧げものを助けたり、式の邪魔をしたりしたからか。あるいはノソスグラティを持って帰ろうとしているからか。
これからどうしたらいいのだろろうと考えていましたが、最初の神はノソスグラティを探してきてみんなを助けるようにと言ったはずだ。島の神はそれに激怒している。
つまり、神は一人ではなかったのか。親からも司祭からもそんなことは聞いたことがない。
気がつくと動物全員オニロを見ています。「すぐにノソスグラティを探すために島に戻ると言ったじゃないか」という顔をしています。
オニロはパパとママの顔を思い浮かべました。そして、大きな声でピストスに言いました。「ピストス。今から島に戻るぞ」
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オニロは、ピストスを乗せて雲の島に向かいました。ようやくノソスグラティを探すことができるのだと思うと体中に力がみなぎりました。
ただ「海は燃えないでぜ」と漁師は笑っていましたし、実際そんなことはありえないと思っていましたが、燃えているのを実際見たのですからオニロは心配でした。
とにかく行けるとこまで行こうと思って急ぎました。ようやく遠くに雲の島が見えてきました。変わったようには見えません。もちろん海が赤くなっていません。
動物を救出した時に使った岩を探して進むことにしました。島が崩れていたら目印にするためです。海面に出ていた三つの岩は残っていました。それを確認してから、雲の中に入りました。
雲の中も何も変わっていません。ようやく島に着きましたが、前のように船を止めることができません。石や岩が前にせり出しているからです。ロープを結びつける木もすべて岩の下に倒れています。オニロが島を離れてからも島は揺れたりしたようです。
仕方がないので、なるべくとがった岩にロープを結びつけて船を止めました。そして、岩を登って以前行き来していた場所に行くことにしました。そこに、ピストスがノソスグラティを隠した場所がありました。
しかし、坂道はなかなか見つかりません。しかし、少し残っていた木をおぼえていたので、岩を登ったりして、みんなが集まった場所に戻ることができました。
「ここだったな」とピストスに言いました。「でも、これから奥の道はすべてなくなったようだけど、少しづつ思いだそう」
ただ、漁師が言っていたように、赤い炎が吹きだしたのは、地の底にいる神が怒ったからだというのがほんとうでも、ぼくは怖くない」
島が少し揺れました。これからも木が倒れたり岩が転がってきたりするかもしれないから、気をつけるんだ」オニロが言うと、ピストスも鳴きました。
まず道があったはずの場所の様子を調べることにしました。生えている草はノソスグラティとは違うようですし、大きな岩と岩の間に見える草を調べたくても調べられません。しかし、ピストスが一度見つけたのですから、この近くにはあるはずです。毎日根気よく探しました。
ある日、キッ、キッと鳴く声が聞こえました。鳥ではない。サルではないかと思って、声のほうに向かいました。雲の中で動いている影が見えました。まちがいなくサルです。
数匹います。何をしているのだろう。オニロはずっと見ていました。一つの大きな岩の上にいて、何かしているようです。
その時、サルが突然オニロに向かって来て威嚇しました。オニロとピストスは慌ててその場を離れました。
様子をうかがっていると、サルはどこかへ行ったようです。しかし、気になったので、もう一度そこに戻りました。
サルがいた大きな岩の近くから、どこから鳴き声がします。まだサルがいるのかと思って、用心しながら、あたりを見ました。どこにも見当たりませんが、心細そうな声です。
オニロは岩に登りました。声はどこからか聞こえます。ピストスも登ってきましたが、
すぐにここだと言うように知らせてくれました。
そこは、今いる大きな岩と同じぐらいの大きさの岩がぶつかったところに小さな穴があいていて、その下から声が聞こえているようです。
オニロは、「ここに落ちたんだな。そして親や兄弟がなんとか助けたいと集まっていたんだ」と思って、穴を覗きましたが、穴は暗くて姿はよく見えません。
何とか助けてやりたいと思ったオニロは、腰に巻いていたロープを穴から入れました。しかし、ロープにつかまって上がるだろうと思っていましたが、それも反応はありません。声も聞こえなくなりました。
ひょっとしたら、落ちたときに怪我でもして動けないのかもしれないと思って、自分が穴に下りて行こうと思いました。
幸い自分の大きさぐらいの穴です。そして、高さ岩を外から見るかぎり、オニロの身長の2倍ぐらいです。
オニロは入口のところに枝を置いてから、自分の足にロープをきつく括(くく)り、反対側をピストスの体に括りました。それから、徐々に頭のほうから体を穴に入れていきました。
穴の底にいるサルを掴まえると、ピストスに声をかけると、ピストスがロープを引っぱることにしました。
最初足から降りていくことも考えましたが、穴が曲がっていてその先でサルが動けなかったりすると、サルを助け出すことができないので、頭から降りていくことにしたのです。
ようやく穴の底に着くと、案の定穴は左に曲がっていました。手探りで手を入れると、何かにさわりました。オニロはそれを引っぱってから抱きかかえると、「ピストス。ロープを引っぱれ」と叫びました。徐々にロープが上がりました。穴の上に着いて、両手に抱いているもの見るとやはりサルです。子ザルです。ほっとしていると、何者かが急いで集まってきました。
オニロの長い夢
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オニロは慌てて下に飛び降りました。キャッキャッと叫んでいます。仲間のサルが来たようです。4,5匹ぐらいいるサルは岩に登りました。そして、助かったサルに何か叫んでいます。オニロたちがこサルを助けたら、どこかに連れていくのではないかと心配して、じっと様子を見ていたのでしょうか。
サルたちは子ザルを岩から下ろして去っていきました。とにかくよかった。オニロはそう思い、ノソスグラティを探すことにしました。
翌日、オニロとピストスがいつものように分かれてノソスグラティを探していると、キャッキャッという声が聞こえました。また何か起きたのかと思ってその場で耳をそばだてていると、声が大きくなってきました。
大勢のサルがそばまで来ました。何か言ったかと思うと、小さなサルをオニロの前に出しました。昨日助けたサルを見せに来たようです。ピストスもその声に驚いて戻ってきていました。オニロは、「元気そうじゃないか」と声をかけました。
次の日またサルの鳴き声が聞こえました。すると、サルが数匹近づいてきました。手に何かもっています。草です。
オニロたちが草を探しているのを見ていたのか、自分たちも役に立とうと思って草を集めてきたようです。サルが帰ってから、草を調べると、ノソスグラティではなさそうです。しかし、サルの善意を無にするわけにはいかないので、これから持ってきても受けとることにしました。
それからも、オニロとピストスは雲の中を歩いてノソスグラティを探しましたが、まったく見つかりません。最初ピストスが見つけた場所は岩の下になっているだろうが、別の場所で生えていることがあるはずだ。オニロはとにかく探しつづけようと思いました。
数日後、遠くでキャッキャッという声が聞こえました。サルがまた草を持ってくるのだろうかと思っていると、その声は今までとちがって雲を切りさくような声です。しかも、怒りに満ちています。サル同士が喧嘩しているかのようです。オニロは鳴き声がするほうに向かいました。
近づくにつれ声は大きくなり、暴れまわるような音もします。さらに近づくと、サルより大きなものが激しく組みあっています。
あっ、ピストスだ。ピストスが何かを押さえつけているようです。相手はピストスよりも大きいようです。何匹かのサルもピストスに加勢して相手を噛みついているようです。もう一匹は巨大な鳥のようです。羽をばたつかせてピストスから逃れようとしています。
オニロは、「ピストス。止めろ!」と叫びました。ピストスが力を一瞬抜くと、鳥は慌てて走り去りました。
あたりをよく見ると、サルが集まっています。一匹のサルが倒れています。オニロがそこに行って、横たわっているサルを触ると息はしています。大丈夫のようです。
他のサルやピストスも無事のようです。オニロはほっとしました。鳥を殺すこともできたが、もし殺せば神に仕えている鳥を殺したことで、仲間の鳥だけでなく神を怒らせるかもしれないのです。
そんなことになれば、またノソスグラティを探すことが困難になるかもしれないからです。とにかく鳥はまた動物を集めはじめたことはまちがいないようです。何かの気配があれば隠れて様子を見ました。
この島にノソスグラティがあるのはまちがいないのだから、それを見つけて動物がいる島に持って帰って植えるのだ。そして、それをもってみんなが待っている町に帰る。自分がしなければならないことは決まっている。
それにしても、神はぼくらがノソスグラティを探すのをどうして怒るのか。神の使いである巨大な鳥を殺さなかった。このことでぼくらがしていることを見逃してくれないものか。オニロがそんなことを考えている間にも、サルは草を集めてくれました。
ある日、雲の中からざわめきのような音が聞こえました。サルでもパスカルでもなさそうです。
オニロは鳥が近づいてきたのかと思って岩の陰に隠れました。そのざわめきはさらに大きくなりました。
何か声のようです。まさか人間かと思い身構えて聞きました。しかし、遠いので何を言っているのかは分かりませんが、まちがいなく人間です。
オニロは、この島に人間がいたのかと思って、自分から近づこうかと思いましたが、もし自分たちに敵対す者であれば、また障害になる。
しかし、疫病でぼくと同じように親や兄弟をなくした者かもしれない。しかも、夢の中で神様からどこかに薬草があると聞いてここにたどりついたかもしれないのだ。
それなら、助けあってノソスグラティを探すこともできる。オニロは今度声が聞こえたら、自分から近づこうと思いました。
オニロの長い夢
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しかし、三日たっても、人間らしき声は聞こえません。それなら、あれの声は何かの声と聞きまちがったかもしれません。この島に人間がすんでいるとは思われないのだから。
オニロは、いつものようにノソスグラティを一生懸命探しました。雲が地表にも下りているので、丁寧に見なければと集中しました。
4日後、どこからか大きな声が聞こえたと思うと、またそれに答えるかのように声が聞こえました。
オニロはその声のほうに向かいました。しばらくすると、「たいへんだ!早く来てくれ」というような言葉が聞こえましたな。自分が話す言葉ではないが、何とか分かりました。
オニロも声のほうに急ぎました。
カン、カンと杖などで転がっている石に気をつけながら足早に進む音がします。それも数人いそうです。しばらくすると、「これはなんだ」という声が聞こえてきました。
すぐそばまで来たオニロはそれが何なのか気になって仕方がありません。
「奥からシューシューという音がする」と言っています。「ここから雲が出ているのか」と聞こえます。
オニロは驚きました。「そんなことがあるのか。雲というものは空から降りてくるものでないのか」
近くにいた人間たちは、しばらくそこにいましたが、「このあたりをもっと調べよう」と言って離れたようです。静かになりました。
オニロは、何かがあるのか見たくて近づきました。すると、雲の向こうに何か大きな黒いものが見えました。まわりには木や岩などもなく、ただ丸くて黒いもののようです。それもかなり大きいものです。
何だろうと思ってゆっくり近づきました。足で黒いものを踏もうとすると、そこに落ちそうになりました。何と大きな穴だったのです。
「何だ、これは。ここに落ちると死んでしまうぞ。あの人間たちは、この穴からシューシューという音がする」と言っていたことを思い出して穴をのぞきこみました。確かにかすかにシューシューという音がします。
「ここから雲で出ているのか」オニロが穴を見ていると、ガサガサという音がしたので、慌てて振り返るとピストスがあらわれました。「ピストス、よくわかったな」と声をかけて、穴の説明をしました。
それから、足元に気をつけながら穴の大きさを調べることにしました。穴のまわりの木を数えると156本もありました。
「人間は今近くを調べているけど、またここに帰ってくると言っていたのでノソスグラティを探すときは注意しなければならないよ。ただ、神様が誰も島に近づけないように雲を出しているのなら、このあたりにノソスグラティがあるかもしれない。穴に落ちないように気をつけて探そう」またオニロとピストスは分かれて探しに行きました。
それからも大きな穴に近づかないように探していましたが、数日後どこからか大きな叫び声が聞こえてきました。
「サルが喧嘩でもしているのか」と思っていましたが、どうもかなり高いところから聞こえてくるので、また巨大な鳥が獲物を運んできたのかもとしれないと心配になって叫び声のほうに向かいました。
近づくにつれて、人間が、「何をする!」と叫んでいると思えば、バサバサという音もします。「やはり人間だ。あの黒い穴を見つけた人間にちがいない」
ようやくオニロが近づくと、人間はさらに叫んでいます。激しい動きで少し雲が薄くなったので、巨大な鳥が何かを押さえつけようとしているのが見えました。
オニロは急いでそこに行き、巨大な鳥の背後から手に持っていた杖で思いっきり叩きました。慌てた鳥はバタッと倒れましたが、すぐに立ち上がって羽を広げて飛んでいきました。
オニロは倒れている人間に、「大丈夫ですか」と声をかけましたが、うーんと唸っているだけです。ようやく「ありがとう。鳥にさらわれたが、暴れたので落ちた」と苦しそうに言いました。さらわれているときに暴れて地面に落ちたようです。オニロは自分と同じことになったのだと思いました。自分は海に落ちてけがはなかったが、この人間は地面に落ちて体を打ちつけたのです。幸い命は助かったけど、骨折などをしているとたいへんだ。どうしたらいいのだろうかと考えていると、背後から、「何をしている!」という声と共に数人の人間がやってきました。
「ヤニス。どうした」一人が大きな声で言いました。ヤニスと言われた男は、苦しそうな声で「見たこともないような大きな鳥がいきなりおれをもちあげたのだ。おれは空中で必死に暴れたので、鳥はおれを落とした。幸いいったん枝にぶつかってから地面に落ちたが、体を打ったので、動けなくなった。その鳥がまたおれを見つけてどこかへ連れていこうとしたんだ」
オニロの長い夢
1-89
駆けつけた3人の仲間はヤニスの説明を聞きながらも、オニロが横に立っているので、何が起きたのかまだ納得できないようでした。
一人が「その巨大な鳥はどうしたのだ」と聞きました。まだ立ちあがることができないヤニスは横になったまま、「この人が追っ払ってくれたんだ」と答えました。
それでも、どう見ても子供であるオニロがそんなことができるのかと思っているようようでした。
「おれが浮き上がったところで、この人が突然あらわれて、枝で鳥の背中などを攻撃してくれた。鳥もおれを離して、この人に向かっていった。確かシカもいた。二人で鳥と戦ってくれた。そして鳥は逃げていった」
3人の仲間は、ようやくオニロ向かって、「ありがとございました」と頭を下げました。
「いや。鳥の鳴き声が聞こえたので、また動物が運ばれているのかと思って慌てて駆けつけました。まさか人間が襲われているとは分かりませんでした。ぼくも鳥に運ばれたことがあります」
「ほんとか!」男たちは驚いたように聞きました。
「鳥に運ばれていたイノシシが暴れて海に落ちていたので、船に乗せていたとき、今度はぼくが鳥に捕まりました。島の上に来たときぼくが暴れたので、地面に落ちました。幸いぼくも枝に当たったので、大事に至りませんでした」
「この島に住んでいるのですか」と聞くものがいました。
「いいえ。薬草を探しています」
「薬草か。何に効くのか」
「ぼくの町で流行っている疫病です」
「でも、きみ一人で探しているのか」
「いいえ。ピストスと二人で探しています」とシカを紹介しました。
「見つかったのかい」
「一度見つかりました。ピストスが見つけてくれたんです。しかし、鳥に連れてこられた動物を別の島に運んでいるときに、岩の陰に隠していたら、大きな爆発とともに島は揺れて岩が降り注いできて、何もかも岩の下敷きになりました。薬草もわからなくなったので、もう一度探しているのです」
「ここに薬草があるというのは誰から聞いたのか」
「ぼくのママとパパが疫病で死んだときに夢の中で老人が出てきて、今すぐ山に行け。そこにおばあさんや村の人を助ける薬草があるから言ってくれました。
そのまま山に入りましたが、山には薬草がなくて、船に乗って探すに行くようにという声を聞きました。それでそのまま見つかるまで海を進みました」
「誰が船に乗れと言ったのか」
「神です」
「神か。どんな神なのか」
「サルです」
「サル!サルが神か」
オニロの口から次から次へと初めて聞くことばかり出てくるので、男たちは顔を見回すことしかできませんでした。
「確かに島が揺れて大きな岩が落ちてきたと言いうことは、あの穴から溶岩が噴き出したのか。ヨルゴス」一人が聞きました。
ヨルゴスと言われた男は、「もう少し調べなくてはならない。火山はもっと荒々しいものだ。こんなに木が生えてはいないはずだし、最近の爆発ならもっとにおいがあると思う。今日はテントまで帰ってヤニスを休まそう」と指示を出しました。
ヤニスはオニロに礼を言ってみんなに抱きかかえながら雲の中に消えていきました。
オニロの長い夢
1-90
オニロとピストスはしばらくそのまま立っていました。今起きたことが夢のように思えたからです。
しかし、枝で巨大な鳥を追い払ったのはまちがいないと分かりました。その枝は足元に落ちていましたし、両方の腕が痛いのです。
しばらくして、4人の調査隊が、「この穴から岩が噴き出したかもしれない」と言っていたことを思い出したので、オニロはもう一度黒い穴を見ることにしました。
確かに大きい穴です。しかも林の中にあるので、雲が厚くなるとまちがって落ちてしまうかもしれません。いつまたここに来るかもしれないので、しっかり覚えることにしたのです。
「ピストス。気をつけろよ。一度落ちたら二度と上がれないのだから」オニロとピストスはゆっくり穴のまわりをまわりました。
どこかで小鳥が鳴いています。穴のまわりも、穴をのぞきこんでも静かです。ここから何か噴き出すとは思えません。
ただ、大きな岩が空から落ちてきたのはまちがいありません。この島が神の島なら、ぼくらがまだ知らないことがあるのだろう。
オニロはピストスとともに今までのように探すことにしました。
ときどき巨大な鳥らしき鳴き声が聞こえます。「また動物が運ばれているのか。それにしても、自分が食べるためならここまで運ばなくてもいいはずだが」と思いながら、ノソスグラティを探しつづけました。
島を左右に行きながら、端まで行くのは、ピストスと分担しながらでも相当時間がかかります。しかし、ピストスが見つけたのです。あの場所だけにあるということはありえない.必ず島のどこかにもあると信じて歩きました。
三日後、少し雲が薄れたとき、あたりを見ると遠くに海が見えました。ようやく島の端まで来たようです。
オニロは、「ピストス。どうやら島の端まで来たようだぞ。しかし、ノソスグラティは見つからなかったな。しばらく休んで帰りもがんばろうか」と声をかけました。
しばらく休んでいると、何か鳴き声の音が聞こえてきました。また「鳥が来たのか」と思いましたが、その鳴き声がだんだん大きくなると、人の声のようです。あの人たちかと思ったオニロは、おーいと叫びました。
向こうも、おーいと返してきました。まちがいない。あの人たちだ。しかし、雲の中では声は反響するので、方向が分かりません。向こうもそうでしょう。だからお互い何回もおーいと叫びました。
そして、ようやく会うことができました。向こうは4人います。巨大な鳥に連れ去られそうになったヤニスが、「オニロ。あのときはありがとう。助かったよ」と声をかけてきました。
隊長らしきヨルゴスが、「あのとき、ヤニスが鳥に喰われていたら、今ごろ鳥の一部になってて、おれたちを空から見ていたかもしれないよ」と笑いました。
「でも、雲で見えないですよ」とヤニスが言うと、他の二人も大笑いしました。
「ところで、薬草は見つかったのかい」とヨルゴスが聞きました。
「いや。見つかりませんでした。帰りも注意しながら探します」とオニロが答えました。
「そうか。どんな草か教えてくれないか。おれたちも探すから」とヨルゴスが提案しました。
オニロは丁寧に説明しました。「それじゃ。おれたちもできるかぎり探すよ。そして、どこで見つけたかも言うことにするから」男たちは去っていきました。
オニロとピストスも再び探しはじめました。
オニロは、あの人たちは、あの穴を何回も調べていると言っていた。そして今からまた行くそうだが、確かにあの穴には何か秘密をあるような気がする。何か分かれば、ぼくらも助かる。とにかくまた岩が噴き出す前にノソスグラティを見つけなくてはと考えました。
数日後、もうすぐ穴の近くに近づいたことが分かる木が見えました。幹が根元から分かれているので、穴の目印にしていたのです。そこから横にかなり歩かなければなりませ音が聞こえました。
オニロの長い夢
1-91
しかし、叫び声のようにも聞こえる。声は雲の中で響いていて、どこから聞こえているのかわからないので、オニロはまず穴のほうに行こうと決めました。
さらに雲が厚くなってきたので、あたりはまったく見えません。オニロはピストスの影を追いながら急ぎました。
やはり人間の声です。あの人たちが叫んでいるのだ。また何かあったな。オニロは急ぎました。
叫び声がはっきり分かるようになりました。「デニス!」と叫んでいるようです。何が起きたのか。みんなでかわるがわる声をかけています。
オニロも、「オニロです!」と叫びながら、声のほうに急ぎました。みんなの影が見えました。「どうしたんですか」と叫ぶと、「オニロ。大変なことが起きたんだ」とヨルゴスという隊長の声が聞こえました。他の人が、「デニスが穴に落ちたんだ」と叫びました。
「えっ!穴には気をつけるようにしていたんじゃないですか」
「そうなんだ。みんなで話しあっていた。しかし、このあたりに来ると、大きな鳥らし
き鳴き声が聞こえてきた。ヤニスのことがあるから注意して歩いていた。
すると、バタバタという音がしたので、慌てて逃げようとした時に、デニスが、アッという声をあげて落ちたんだ」
「この穴は深いかもしれませんね」
「そうなんだ。もうだめかもしれないと思ったが、みんなで声をかけたら、『助けてくれ』という返事が聞こえたんだ」
「それじゃ。そんなに深くないのでしょうか」
「いや。それはわからない。おれたちが大きな声で呼ぶと深い穴のような反響があるから、かなり深いと思うんだけど」
他の二人は、「デニス。すぐ助けるから」と穴に向かって叫びました。確かに反響は響きます。耳を澄ますと、小さい声ながら、「早くしてくれ」という声が聞こえます。どうなっているんだろう。すぐ近くにいるように聞こえます。
「穴の深さは分かりませんが、ここの穴からは大きな岩が飛び出したと思われます。急がなければなりません。ぼくが助けに下ります」とオニロは三人に言いました。
「きみが助けるってどうするんだ」隊長は大きな声で聞きました。
「何とかやってみます。まずロープを出してください。ぼくも少し持っています。それから、急いで木のツルを集めてください。なるべく細くて頑丈そうなのを。それを伝って声のほうに下りて行きます」3人はそれぞれツルを集めに行きました。
その間に、オニロはロープを調べました。あの人たちのロープは20メートルぐらいで、オニロはその半分を持っていましたが、ロープは2重にしなければなりませんから、デニスが深いところにいるのならかなりツルが必要となるし、デニスを乗せるかごもいります。
3人が戻ってきました。ツルはかなりあります。まずツルでかごを編みました。それにロープを繋ぎました。そして、どの木の幹に結びつけるかを決めました。そこにロープを巻くのですが、長さが足らない場合のために、残ったツルをロープ代わりに結びました。
以前動物を運んだ時にしたように、穴の端にロープが擦りきれないように服などを置きました。
「じゃ。これから下りていきます」オニロはかごに乗りました。
隊長は、「おれが行くよ」と言いました。
オニロは、「ぼくが一番軽いですから、ぼくが行きます。ロープやツルが切れたら
元も子もありません。それでは徐々に下ろしてください」3人はうなずいてロープを下ろしはじめました。
徐々に下りていきましたが、それにつれて穴の中は真っ暗になりました。それに、下に行くほどきつい臭いがするかもしれないので、そのときはすぐに上げるからと言われていたので、臭いをかぎながら下りていきました。
オニロは、「デニス。どこですか。助けにきました」と何回も叫びました。反響は大きく響きました。
静かになるとかすかに声が聞こえます。しかし、デニスがどこにいるか分かりません。声が聞こえたあたりの上の木にロープを結びつけたのですが、場所をまちがったかもしれない。
臭いが少しきつくなってきました。オニロは焦りました。
オニロの長い夢
1-92
オニロは少し頭が痛くなってきました。やはり隊長が言っていたとおり、この臭いが毒なのかと思いました。しかし、デニスを置いて戻るわけにはいきません。
オニロは、「デニス。どこにいますか。助けにきました」と何回も叫びました。
しばらくすると、声は聞こえませんでしたが、何か動く気配を感じました。オニロは、暗闇の中を、足を穴の壁に置きながら音が聞こえるほうにゆっくり進みました。
すると、何かが足にぶつかりました。それに触ると石のように固いものです。手で触って調べていると、それはかなり大きいものです。どこまでも続いています。穴の途中に大きな石が突き出ているかもしれません。
そこに足を置いたりして確認していると、脆いものではなくかなり頑丈なもののようです。さらに足を延ばす何か柔らかいものに当たりました。
「デニスだ!」デニスは幸いにも石の出っ張りに落ちていたのです。「よかった。底まで落ちていたら助けることはできなかった」と思ったオニロは急いでロープからゆっくり手をはなしてデニスの方に行きました。まちがいなくデニスです。「デニス。助けにきました」と大きな声で叫びました。
しかし、かすかに唸っていますが、何も言いません。オニロは、腰に巻いていたロープをデニスに巻きました。もし元気ならそのままかごに乗せたのですが、ぐったりしているので、デニスが落ちないように自分とデニスを括りつけて、デニスの上半身を起こしてロープのほうまで動かしました。
ようやく乗せてから、オニロは、「デニスを助けました。上げてください」と叫びました。
ロープはゆっくり引っぱられました。臭いはさらにきつくなってきましたので、自分が気を失わないようにしなければならないと思って、口を布で押さえて待つことにしました。
しばらくすると壁に何かが当たる音がします。かごのロープが下りてきたようです。ロープを引っぱって大丈夫か確認してかごに乗りました。
ようやくロープは地上に着きました。みんなは、「ありがとう」と言いながら、オニロをかごから出してくれました。
オニロはかごから出ながら、「デニスはどうしましたか」と聞きました。
「ぐったりして意識がなかったが、みんなで手当てをして、おれたちの声がわかるようになった。命の心配はない。あるがとう。よく助けてくれた」
「それはよかった。幸いにも穴の途中に大きな出っ張りがあって、そこに落ちていたから助けることができました。もしそれがなかったら助けることができなったと思います。
穴の臭いがきつくなっています」とオニロが答えた時、穴からゴオーという音が聞こえました。
「これは危ない。ここを離れよう」と隊長が叫びました。オニロはすぐに、「大きな岩陰がいいです。できたら岩の穴に避難してください。石が空から降ってきますから」と大きな声で言いました。そして、みんなでデニスを抱えながら雲の中を急ぎました。
地面が揺れだしました。「もうすぐ爆発します!急ぎましょう」オニロは叫びました。
その時、ドオーンという音が響きました。地面が大きく揺れて、オニロは地面に叩きつけられました。
近くで無数の石が、木にぶつかったり、地面に落ちたりする音がします。慌てて起き上がり、「ピストス!」と叫びました。ピストスは鳴きながらオニロの体にぶつかってきました。オニロは、「ピストス、大丈夫だったか」とピストスを抱きしめました。
オニロは、「おーい。みんな大丈夫ですか」と叫びました。「大丈夫だ」という返事が遠くで聞こえてきました。
少し安心しましたが、今は声のほうに行くのは危険です。以前爆発が収まっても、また爆発があったからです。それで、「今は動かないでください。また爆発があるかもしれません」と叫びました。
まだ地面が揺れていますが、爆発が少し落ち着いたので、ピストスと声が聞こえたほうに急ぎました。
3人は一緒に大きな岩に隠れていました。しかも、その上に大きな木があったので、降りそそぐ石に当たらなくてすみました。
隊長は、「きみのおかげでデニスは穴に取り残されずにすんだよ」と喜びました。
デニスはまだしゃべることはできませんでしたが、オニロに抱きついていてきました。
オニロの長い夢
1-93
隊長は、「この島全体が火山だ。火山は突然地面の下が割れて石が噴き出してくる。きみの話でももう2回爆発が起きている。
その原因はやはり神が怒っているとしか考えられない。この島が雲に覆われているのも、この島に入らせないようにするためだ。きみも早く島を出たほうがいい」と真剣な顔で言いました。
オニロも、天地がひっくり返るようなことをするのは神かもしれないと思うこともあったのですが、そもそもノソスグラティを探しているのは神の指示だったはずですので、神がこんなことをするのかという気持ちもありました。
王様に命令されてこの島を調べている隊長は神が怒っていると断言している。そして、すぐにこの島を出るように言っている。
オニロは「どうしようか」というようにピストスの頭を撫でました。そして、「神がいくら怒っても、ノソスグラティを見つけなければなりません。この島で一度見つけたことがありますから、どこかにあるような気がするのです」と言いました。
隊長は深くうなずいて、「きみの考えていることはよくわかる。しかし、おれたちは王様に報告をするために帰らなければならない。とにかく気をつけて自分の決めたことをしてくれ」と言って、たくさんの食べものを渡してくれました。4人は雲の中に消えていきました。
4人を見送りながら「これからどうしようか」オニロはピストスと岩が転がっている林の中を歩きながら考えました。
しばらく進むと、ピストスが何かに気がついたようで、少し離れた場所に向かっていきました。
オニロもピストスの後についていくと、ピストスが立ち止まりました。何かが大きな石の下敷きになっています。
オニロが近づくと、かなり大きなものが横たわっています。木の枝か何かかと思ってよく見ると動物のようです。まだ動物がいたのかと思ってよく見ると、あの巨大な鳥です。飛んできた石に当たったのでしょうか。ぐったりしています。死んでいるのかと思って、鳥を触ると、まだ体は温かいのです。
オニロは急いで岩を押しましたがびくっともしません。しばらく考えていましたが、落ちている太い枝を探して、そこについている細い枝をナイフで切り落としました。それを数本集めて岩の前に並べました。
それから、もう一本の枝を岩の反対側にさして、力一杯自分のほうに引っぱりました。岩は徐々に動いて並べた枝の上に乗りました。
何回も力を入れて岩はようやく鳥の上からは外れました。
すぐに鳥を触りました、まだ生きています。そこで、隊長からもらった食べものを少し口のあたりに置きました。
オニロはピストスに「よく見つけたな。動物をさらってくる悪いやつだけど、ほっておくことはできない。多分大丈夫だから行こうか」とそこを離れました。
二日後、二人で休んでいると、またピストスが大きな声を上げました。オニロがそっちを見ると、また巨大な鳥がこっちを見て立っています。
何が起きたのかと思っていると、その背中が赤くなっています。この前石の下敷きになっていた鳥だ。なぜここに来たのか。あのときぼくらがおいて言った食べものがおいしかったので、またそれがほしくなったのか。
すると、その鳥はくるっと後ろを向いたのです。そして、羽をバタバタと広げました。
オニロはしばらく見ていましたが、あまりにも羽を動かすので鳥に近づきました。
鳥は後ろを向いたままオニロのほうに近づいてきたので、オニロは鳥の背中に乗ってしまいました。
オニロは鳥から降りようとしましたが、鳥はフワッと浮きました。もう下りられません。
鳥は雲の中を飛び上がりました。ピストスは吠えています。
さらに高く上がっていくと、今度は横に行きます。それを何回も繰りかえすと、今度は下に向かい、そして地面に下りました。
オニロは何が起きたのか分からず足を地面に足を置きました。ピストスが鳴いている声が聞こえます。
オニロは頭がくらくらしていましたが、ピストスが横に来たので、元の場所に戻ったと分かりました。
鳥が自分を乗せて飛び上がった時は一瞬あの穴に落とそうとしているのではないかと思ったので、鳥が何をしたかったのか分かりませんでした。
翌日もノソスグラティを探していると、バタバタという音がしました。あの鳥です。
羽を大きく広げています。オニロは近づきました。また乗るように言っているようです。
オニロが乗るとすぐに飛び上がりました。
オニロの長い夢
1-94
オニロは、「まさかぼくを穴に落とすために乗せるんじゃないだろうな」という不安はあまりありませんでしたが、「それではどうして毎日ぼくを乗せてくれるのか」という疑問は残っていました。
ぼくが食べものを渡したお礼としてもは何回も必要がないと思いましたが、オニロは、とにかく乗ってみようかと思うと、体が自然に動き鳥の背中に乗っていました。
すぐに鳥は羽を動かし飛びあがりました。オニロは少し余裕が出てきて、「それならぼくが言うように飛んでくれないだろうか」と思って、鳥に「雲の外に出たい」と大きな声で言いました。
鳥はそれがわかったようで、ぐっと力を入れて高く上がりました。オニロは落ちないように力を込めて鳥の体にしがみつきました。
オニロの体はぐんぐん高く上がりました。冷たい雲が顔に当たってあたりがまったく見えません。ただ、風の音がゴーゴーと聞こえるだけです。
上がっているのか下がっているのかさえ分からなくなりました。静かになったので、目を開けると明るくなっています。鳥はゆっくり旋回しています。あたりを見ると、青い海と青い空がどこまでも広がっています。そして下に雲が見えます。
「これはすごいぞ。ぼくらが雲の中にいた間に世界はこんなに輝いていたのか」オニロは興奮してあちこち見ました。
そして、雲を見てこの中に島がすっぽり隠れていることを改めて分かりました。この中にノソスグラティがあるのだと思って見ていると、地から石が噴き出してくるのは、やはり「早く出て行け」という神の警告ではないかという思いがまた頭に浮かびました。
自分の船はどこに置いたか見ようと少し雲を離れて確認しようと思いました。
「もう少し下に行ってくれないか」と頼むと、すぐに高度を下げてくれました。オニロは、岬や陸にある高い山などを確認して、船を置いた場所を推測しました。さらに海面近くから船を見たくなって、足が海面に触れるぐらい下を飛んでもらいました。
雲のためにはっきり見えませんでしたが、動物を運ぶために使った海から出ている岩があったので、確かにここだと思いました。
しばらくして島をもう少し旋回したいと思って上に上がろうとした時、島に向かっている船がありました。
「漁船らしいが、漁師は雲には近づかないように言われていると聞いたけど、どうしたんだろう」と様子をうかがっていると、こちらを見上げている人影がありました。
びっくりしてさらに下りていくと、自分を助けてくれた漁師のミハイルです。ミハイルもびっくりしていて、「オニロじゃないか!なぜ凶暴な鳥に乗っているのか」と叫びました。
「びっくりしたでしょう。詳しいことは後で話します」オニロも大声で応じました。
「どこで話そう。おれが雲の中に入るのか」ミハイルは心配そうに聞きました。
「いいえ。岩の上で話しましょう」そう言うとオニロは岩まで行くと、そこで下りました。
ミハイルも急いで岩に登りました。岩の端にいる鳥を見ると、「大丈夫か」と小さな声で聞きました。
「大丈夫です。まだ知りあって数日しかたっていないのですが、ぼくの言うことを聞いてくれます」
「以前このあ鳥に大変な目にあったじゃないか」それでオニロはこういうことになった経緯を話しました。
「鳥は自分を助けてくれたことに恩義を感じているんだな」
「そうだと思いますが、毎日来るんですよ」
「そもそもこの鳥はなぜ大きな動物をこここまで運んでくるのだろう」
「詳しいことは分かりませんが食べるためではなさそうです。その形跡はありませんから」
「ではこの島は何だろう。いつも雲が湧いているから悪魔が住んでいるに違いない。だから絶対近づくなと教えられてきた」
「ぼくとピストスだけいる時とこの島を調べに探検隊が来た時の2回島が大きく揺れて地面にある穴から大きな石が飛び出してきたことがあります。探検隊は調査をしてこの島は神の島であると言って帰っていきました」
「やはりそうか。きみも早く島を離れたほうがいいぞ」ミハイルはそう言いて去っていった。
オニロの長い夢
1-95
オニロはミハイルが舟を漕いで去っていくのをずっと見ていました。魚を釣る大事な時間を犠牲にして、オニロを心配して来てくれたはずです。やがて仲間の船と同じように豆粒のように小さくなりました。
オニロはそれを確認すると、自分もしなければならないことに取り掛かりました。
「グリフィン。島まで戻ってくれないか。隠している船を見たいんだ」と言いました。そう言ったオニロが、どうして、グリフィンという名前が出てきたんだろう、グリフィンって何だっけと思いました。ようやく教会にあった鷲の上半身とライオンの下半身を持っている動物の像についてパパが教えてくれたことを思い出しました。
この鳥を今後もグリフィンと呼ぼうと決めました。グリフィンは近くまできてオニロのほうに背中を見せました。
雲の中に入るとすぐに海岸に着きました。しばらく隠していた場所を探しましたが、爆発で海岸の形が変わっていたので分からなくなりました。そこで、見覚えのある木を探して場所を見つけました。
岩と岩の間だったはずですが、その間に大きな岩が落ちてきていて、まるで洞窟のようになっていました。
しかし、そのために船がつぶれることなく残っていました。洞窟に入って様子を見ようとした時、ピストスが来ました。
「ピストス。船は大丈夫かどうか見てくるよ」オニロはピストスにそう言うとゆっくり中に入っていきました。
船は浮いているので水が入っていないようです。ただ、石がかなり乗っています。それらを出してから、あまり光が差し込まないのでいったん外に出すことにしました。
それから船を丁寧に調べました。幸いなことにすぐに航海に行けそうです。折りたたんでいた帆も大丈夫です。
「ピストス、船は大丈夫だよ。いつでも出航できる。それと島にいる動物はみんな元気らしい。ミハイルから聞いた。
後はノソスグラティだけだ。爆発がないことだけを願うが、隊長は、自分たちの国にも火山があるけど、そんなに爆発はないそうだ。しかし、今回のように、続くときもあるから油断はできないけどね。
とりあえず島中を探したから、今度は思えが見つけた場所をもう一度探そうか」オニロは自分の考えをピストスに説明しました。
翌日、オニロとピストスは最初にノソスグラティを見つけた場所に向かいました。
ピストスが示す場所は大きな岩があるところです。最初の爆発の時よりもさらに岩が増えているようです。
しかも、岩の上に岩が重なっているのもあります。うーんとオニロは唸りました。「ここにあったのはまちがいなのだから、何とかしたい」
岩のまわりを何回も回っている時、そうだと思いつくことがありました。岩の下を掘ってみることでした。
しかし、そう簡単には行きそうにありません。もし掘っている間に石が穴に転がってきたら助かることはできないからです。
「そうか。岩がぐらりと穴のほうに傾いてもそれを防ぐようにしたらいいのだ。岩の重さに負けない木を穴にかけるのだ」
その時グリフィンが来ました。オニロは大きな声で、「グリフィン。また来てくれたんだね。それなら頼みたいことがある。ぼくらがこの岩の下を掘っていって草を見つけたいんだけど、その時に岩が落ちてこないように穴に大きな木を置いてくれないか」と頼みました。
それから、毎日掘りつづけました。ピストスは土の中に太い木の根あれば、噛み切ってオニロを助けました。
ただし、重い岩に押しつぶされてノソスグラティかどうかわからなくなっているので、
明らかにちがう草は捨てて、そうでない草は後で調べることにしました。
三日後、ピストスがノソスグラティを見つけた場所をすべて調べることができました。ノソスグラティではないか判断した草もかなり溜まりました。それをもう一度調べて、まちがいないものと多分そうだろうと思われるものを袋に入れました。
「ピストス。終わったぞ。すぐにここを出よう」と叫びました。そして、「グリフィン。ありがとう。きみがいてくれたから、ノソスグラティを見つけることができた。ぼくらはこの島を去る。元気で暮らせよ」と言って、船を止めている場所に向かうことにしました。
そして、船を岩の隙間から引きだした後、ノソスグラティを入れた袋などを乗せて、雲の島を出ました。
すると、雲の中から何か飛び出てきました。オニロはびっくりして見ていると、何とグリフィンが船に乗ってきました。
「グリフィン。きみも動物の島まで来てくれるのか。それなら、島まで護衛をしてくれないか」オニロは大きな声で船首にいるグリフィンに言いました。