オニロの長い夢
オニロの長い夢
1-81
しかし、いつも以上に雲のが深くてまったく様子が分かりません。ピストスの後についていこうとするのですが、すぐに木にぶつかってしまいます。
それで、落ちていた枝をどうにか見つけ、それを杖にするだけでなく、木と木の間を見つけるために使いながら登っていきました。
ようやく坂道が終わりました。そこは海にいたイノシシと自分が巨大な鳥から逃げた場所であり、船に乗せるために動物たちを集めた場所です。しかも、この近くにピストスが取ってくれたノソスグラティらしき草を隠しています。
オニロは、すぐにノソスグラティが生えている場所に行こうと思いましたが、あたりがまったく見えないので、雲が晴れるまで待とうと思いました。
雲が晴れるまで、巨大な鳥がどうして動物を掴まえてこの島に運ぶのか調べることにしました。
巨大な鳥は夜になると動きだすことが分かっていたので、声などの気配を感じるまでここで待つことにしました。
やがて、どこかでバサバサという音がしました。「来たぞ!」オニロはピストスに声をかけて立ち上がりました。ピストスもすぐ立ち上がったようです。
「あの音が行くほうについていこう」と耳を澄ませましたが、すぐ音は消えました。すでにどこかに飛んでいったようです。
雲は一向に晴れそうにありません。それに、雲が木に当たるためかシューシューと音がしています。「雲はまるで地から湧いているようだ」オニロは立ち止まらざるをえません。
ときどき、どこかで鳥の鳴き声が聞こえました。それは動物を掴まえて空を飛ぶ巨大な鳥の鳴き声ではなく、森に住んでいるさな鳥の鳴き声です。こんなずっと雲に覆われている島には愛らしい鳥の鳴き声が聞こえるのかオニロは不思議に思いました。
「もう元の場所に戻ろうか」と考えたとき、またギャーという鳴き声が聞こえました。
巨大な鳥が空を飛んでいるようです。しかも、かなり近くを飛んでいます。オニロは立ち上がって鳴き声を追いかけました。もちろん、ピストスもついてきています。
しばらく進むと、近くで何か物音がしました。人の話し声のようであり、鳥とはちがう叫び声のようです。何だろう。どこかで聞いたような声ですが、何か分かりません。
オニロは木の陰に隠れて声のほうに近づきました。
はっきり見えませんが、大勢集まっているようです。とにかく雲が少しでも晴れればと様子をうかがっていた。
そのとき、何かが動きました。ピストスが勢いをつけて走り出したのです。「ピストス!」オニロは叫びましたが、ピストスは何かが集まっている場所に向かって走りだしたようです。
すぐに叫び声が上がりました。そしてバタバタという音が続きました。それから、叫び声はだんだん小さくなりました。ピストスはそのまま逃げたので、何かが追いかけようとしたようです。
オニロもそっちに行こうとしたとき、何かがオニロの背後からぶつかってき思わず前に倒れたので、すぐに立ち上がろうとしました。オニロは痛みをこらえて、慌てて四つん這いで逃げました。幸い木と木の間が狭かったためか誰も追ってきません。
少しの間休むと、ピストスのことが心配になりました。「ピストスは、あそこで何が行われているのか見えるように飛び出したのにちがいない。急ごう」と思って、そっと動きだしました。
先ほどの物音は聞こえません。「もしかしたら大勢でピストスを追いかけているかもしれない」オニロは雲の中を急ぎました。
しかし、気配はありません。そのとき何かにつまずいてこけそうになりました。何か黒いものです。動きません。それで手探りするとクマのような動物です。
しかも、何匹も横たわっています。「かわいそうに。ここまで連れてこられて、こんなことになってしまったのか」オニロは8頭いる動物をやさしく撫でました。
「それにしても、動物たちを集めて何をしていたのだろう。巨大な鳥もかなり集まっていたようだが、真ん中に何がいたのかちゃんと見えなかった。ピストスがぼくに見せようとしたのに」と思ったとき、またギャーと叫んでいる声が聞こえます。
その声がかなり遠くで聞こえたり、少し近づいたりしています。ピストスは逃げ回っているのですが、あちこち走って敵を攪乱(かくらん)しているのです。オニロは鳥の叫び声のほうに急ぎました。
オニロの長い夢
1-82
オニロは,枝を杖代わりにして地面の様子を見たり、左右に振ったりしながら前に進みました。雲が流れると木があることが分かるのですが、雲の厚いと木にぶつかってしまうことがあるからです。
しばらくすると体が傾くような気がしました。坂道になっているのか思っていると、急に地面が揺れだしました。これは何だと思うまもなく、立っておれないほど地面が揺れだしました。
オニロは近くの木にしがみついて揺れが収まるのを待ちました。しかし、揺れはさらに激しくなり、突然ドーンという音がしたかと思うと何かがばらばら降ってきました。
それは木にぶつかるとバリッという音がし、そのまま地面に落ちるとドンという音がして体が飛び上がるほどになりました。
オニロは耐えるしかありません。あちこちで大きな音します。それに空から降ってきたものは熱を持っているのか付近が熱いのです。
確かに雲の向こうは赤くなっているところがあります。まるで山火事のようです。いや山火事が起こっているのです。遠くで雷もなっています。オニロは、ピストスのことが頭に浮かびましたが、どうしようもありません。
しばらくすると雨が降ってきました。次々と災難が起きます。オニロは神様を怒らせてしまったのかと思いました。しかし、どんなことがあってもピストスを見つけなくてはなりません。
ようやく雨が収まりました。オニロは歩きはじめました。しかし、木と木の間の道は石がゴロゴロ落ちています。木も折れて目の前に横たわっています。どこに道があるのかさえ分かりません。
オニロは、やみくも歩いていてもピストスを見つけらない。どうしたらいいか考えました。
雲は渦のように流れています。一方から雲はにおいがしませんが、反対側の雲は腐った卵のようなにおいがします。これた!このにおいが爆発した場所から出ているのだ。ピストスはこのにおいを避けるためにそこから離れたのにちがいない。
オニロは渦の様子を見ながら進みました。そして、どこかでガサッと音がすると、ピストス、ピストスと叫びながら、音のほうに急ぎました。
それは石が崩れたり、枝が落ちたりする音だったのですが、こちらに来る音が続く音がしました。オニロは急いで音のほうに行きました。
すると、何かがこちらにゆっくり向かってきます。オニロは、「ピストス、ピストス」と叫んで夢中で走りました。ピストスも喜んでオニロのそばに来ましたが、かなり疲れているようです。
オニロは,石が頭や体に当たっていないか調べました。やはり歩き方がおかしいのです。
右足の灰を払って調べると、どうも骨が出ているようです。慌てて逃げるとき、石や木にけつまずいたようです。
これでは動くことができません。幸い雷も聞こえなくなったので、ここでしばらく休むことにしました。
ピストスがすぐに動こうとするので、オニロは、「今無理をすると歩けなくなるぞ。ぼくらはノソスグラティを見つけて村の人々を助けることが任務なんだ。だから今はゆっくり休め」と何回も注意しました。
10日ほどそこで休みましたが、自信はときどきありましたが、爆発もなく、石が降ってくることもありませんでした。
ピストスもようやく歩けるようになったので、まず何をしようか考えました。
まずここから船を止めている場所に戻ろう。その間に儀式が行われていたところがある。待っているように言った動物の様子を見てから、ノソスグラティを探す。それはピストスが知っている。
オニロはピストスに計画を話して出発しました。しかし、道らしきところも石が転がっていてなかなか進めません。慌てるとピストスがまたけがをするかもしれないので、ゆっくり歩きました。
数日かけて儀式が行われていた場所を見つけました。灰に覆われていましたが、一段高い場所に見覚えがありました。オニロはピストスに見せるために、祭壇の前にあるいくつかの灰のかたまりを払うと動物が横たわっていました。「何か儀式をしていたのはまちがいないだろう」とピストスに言いました。ピストスは茫然と見ていました。
オニロは、「それじゃ。戻るよ」と先に歩きだしました。地面が揺れたような気がしたからです。
ここからは徐々に下り坂になっているはずですが、石や枝が邪魔をしているのでよくわかりません。それでも注意しながら進みました。
ようやく目印にしている木があったのでまちがいないと確信しました。それは、2本の大きな木の間に小さい木がぴったりひっついて立っているのです。
オニロはパパとママの間に自分がいるんだと思うようになりました。3本とも倒れずに立っていました。オニロは、ピストスに、「もうすぐだ」と声をかけました。
オニロの長い夢
1-83
確かにここから先は空き地のようになっていたはずですが、空から降ってきた石が積もっていて、様子はかなり変わっています。ピストスも歩きにくそうですが仕方がありません。
また、待っているように言ったイノシシの子供はどうしているのだろうか心配になってきました。
「おーい」と何回も叫ぶと、何かがごそごそと石と石の間から出てきました。イノシシです。
「生きていたか」オニロは大きな声を上げました。すると、その後ろからも2匹出てきました。どうもクマとウシの子供のようです。合計3匹です。無事にいてくれたか。
イノシシ以外は初めてでしたが、クマもウシもオニロのそばに寄ってきました。まだ子供だ。石が降るありさまがよほど怖かっただろう。
「じゃ。今からみんながいる島に行くが、船の様子を見てくる。もう少しピストスといっしょにいてくれ。すぐに戻ってくるから」オニロはそう言って、船をつないでいる場所に向かいました。
ただ、下りになっているので、降ってきた石がそのまま海に向かって転がったのか石は徐々に積み重なっています。
いつもなら勢いがついて10分ぐらいで海に着くのに石の山を越えなければなりません。
ようやく海に着きましたが、どこに船を停めていたのか分かりません。細い木が数本生えていたのが目印だったのに,木も消え、船を隠せるようになっていた場所も石が積み重なっています。「石に当たって粉々になっているのかもしれない」と思って、石の隙間を探しましたが、船らしきものはまったく見つかりません。
オニロは今すぐ船を出して動物を島に届けてすぐ帰ってきてノソスグラティを探すという計画が消えてしまったと思うと涙が止まらくなりました。
しかし、負けてはおられないという気持ちも生まれました。船を作るのに時間がかかるが、筏ならできる。向こうの島には大勢の仲間がいる。そう考えると少し希望が出てきました。
そのとき、ピィーと鳴く声がします。ピストスの声です。オニロはあたりを見渡しました。
すると、下り坂にある石の上にピストスが立っています。そして、海のほうを見て何回も鳴くのです。
オニロは坂を上ってピストスがいるほうに行きました。そして海のほうを見ました。幸い雲が薄れています。するとかなり先に岩のようなものがあり、そこに巨大な鳥が一羽止っています。
「あそこに岩がなかったはずだが」オニロはいぶかしみましたが、ひょっとしてと思いました。石が降ってきたとき、上から転がってきた石が船を押し出したかもしれないのです。
「ピストス。ありがとう。ぼくらの船かもしれないぞ。見てくるよ」と言って泳ぎだしました。
幸い波はないので船が動くことはないようですが、かなり疲れているので、思うように泳げません。
鳥が一匹増えています。オニロは少し休みながら、「あいつらは獲物を掴まえては一直線に島に運んだはずだ。あの爆発が起きてから獲物を持っていないし、島にも行っていない。あれはよほど大きなことだったにちがいないと思いました。
2匹はまだいました。オニロはいつも体につけているナイフを手にして近づきました。確かに大きい。子どものクマでもウシでも鷲づかみして空を飛べるぐらいです。オニロはナイフを持っている手に力を入れてさらに近づきました。
するとオニロに気づいた鳥は2匹とも大きな羽音を立てて飛びたっていきました。
すぐに転覆している船に着きました。まちがいなく自分が作った船だとわかったオニロは、「よくがんばった」と船を抱きしめました。
そして、船を元どおりにしようとしましたが、重くてできません。それであきらめて転覆したまま雲の島に戻ることにしました。
かなり重いですが、懸命に押すとゆっくり動きました。そこで、船首を雲の島に向けて進みました。
途中で船がまた元に戻らないように体と船をロープで結びました。疲れと空腹で意識が薄れたときのためです。
それでも体が動かなくなるときがありました。ようやく目が覚めて力を入れるといつもより早く進んでいるようです。何だろうと思っていると、何かいそうです。
オニロは、あっ!と叫びました。ピストスが船の左側にいるのです。ピストスも押しているのです。「おまえも泳いでここまで来てくれたのか」オニロはぐっと足に力を入れました。