もう一つのクリスマスキャロル(後編)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(209)
「もう一つのクリスマスキャロル」(後編)
「エルマ、起きなさい」と声が聞こえました。エルマは目を開けました。
二人の男がエルマをのぞきこんでいます。二人とも髭もじゃもじゃの顔をしていますが、目は優しそうです。一人の男が、「びっくりしたかな?」と笑顔で言いました。
エルマは、「はい。突然体がどんどん上がっていったので。でも、あなたたちは誰ですか?」と聞きました。
「わしらはおまえを案内するように言われた者だ」
「どこに案内するのですか?」
「もうすぐわかる。まずゆっくり立ち上がりなさい」と別の男が声をかけました。
その時ノックがしました。エルマは二人の男を見ました。
「早く出なさい」その声に押されるようにドアを開けました。
誰か立っています。しかし、外の光で顔がわかりません。すると、「エルマ!」という声と同時に部屋に入ってきた人はエルマを強く抱きしめました。
エルマは、「その声は」と思ったのですが、きつく抱きしめられていて声を出すことができません。
ようやく膝を折った人が「エルマ、会いたかった」と言ったので、エルマは、「ママ」と泣きだしました。それから、二人はまた抱きあいました。
しばらくして「ママ、生きていたの?」エルマは聞きました。
「いいえ。ママは死んだけど、ここでは生きているの。あなたも教会で勉強しているからいつかわかるわ」
エルマはまだママの話はよく分かりませんでしたが、「ママ。会いたかった!」と叫びましたが、すぐに、「でも、おばあさんの世話があるの。おばあさんが呼んだらすぐに行かないと怒るの。あっ、おばあさんがいない!」エルマは、おばあさんのベッドが空っぽなのに気づきました。
「エルマには本当にすまないわ。私の母親をエルマに世話をさせて」母親はまたエルマを抱きしめました。
「でも、この三日間はみんなが世話をしてくれているからゆっくりできるのよ」
「ほんと!でも、パパが帰ってきたとき私がいないと心配しないかしら?」
「パパの仕事は明日終わるけど、家に帰るまで3日かかるから心配ないわ。山のようなプレゼントをもって帰ってくるから待ってらっしゃい」
「ママにどうしてそんなことが分かるの?」
「あっ、これは言ってはいけないことだったわ。でも、パパは昔からエルマを喜ばすことが大好きだから」
「そうね。それなら安心だわ」
「あら。家具の場所を変えたの。このほうが便利ね。それに新しい家具もある」
一通り家のことで話が弾んだ後、二人は外に出ました。何と花がいっぱい咲いている野原の真ん中に家は到着していたのです。
夜になると母親が料理をして楽しく食事をして、それから一緒に寝ます。朝になるとまた外に出るのです。母親の最後の数年間はずっとベッドに寝ていたので、親子とも花を摘んだり走り回ったりするのが楽しくて仕方ありませんでした。夢のような三日間があっという間に過ぎました。
その間、二人の男は、神様に面会を求め、「エルマが地上に帰ったとき、もっと幸せになれるようにしていただけませんか」とお願いしました。
「どんなことじゃ?」神様は聞きました。
「はい。父親が金持ちになれるようにしていただきたいのです。そうすると、おばあさんの世話は女中がしてくれますし、エルマも毎日学校に行くことができます」
「エルマは賢く、神様のことをもっと勉強したく思っています」
「わしもよく知っている。しかし、エルマ以上に不幸な子供はいくらでもいる。
重い病気の子供。両親がいないみなしご。エルマ以上に不幸だとは言わないまでも、多くの子供が苦しんでいる。お前たちもよく知っているはずだ」
二人は黙ってうなずくだけだけでした。「まあ。何か考えておく」神様はそう言うだけでした。
4日目の朝、母親は、「エルマ、元気で暮らすんだよ。下りるときは目をつぶっていなさい」と言うやいなやドアを開けて外に出ました。
エルマは、「ママ!」と叫んでドアを開けようとしましたが、どうしてもあきません。やがてゴオーという音がしたかと思うと、家が動きだしました。
野原の真ん中に立っていたはずの家はどんどん下りていきました。エルマは母親が言ったように目をつぶりました。
「エルマ、エルマ」という声が聞こえました。「はい」と返事しました。
「はいじゃないよ。何度も呼んでいるのに」その声はおばあさんです。
エルマは夢を見ていたのかしらと思いながら、急いでおばあさんのベッドに行きました。「何か用なの?」
「おまえ。私の枕を変えたかい。固くて寝られないよ」
「それなら、私が作ります。よく寝たら元のように元気になりますよ。
それに、パパが今日帰ってくるからごちそうを作りますね。みんなでクリスマスを祝いましょう。これからもっと勉強をして立派な人間になります」
エルマは、どんなことにも立ちむかっていく勇気が湧いてくるのを感じていました。そして、パパが帰るまで休むことなく働きました。

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