先祖

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「先祖」
―もしもし
―あっ、はい、すぐに降ります
―いやいや、電車はあと10分後に来るよ
―それじゃ、どうして起こすの?
―こんなところで居眠りしたら風邪をひくと思って。おもしろくないことがあって、いっぱい引っかけてきたんだろ?
―はあ、まあ、でもお宅に関係ないでしょ
―まあ、そう言わずに。おまえのことが心配なんだよ
―おまえって。お宅、誰?
―おまえの先祖
―先祖?いつぐらいの
―寛政年間
―江戸時代の?ところで、ぼくに何の用ですか?
―最近先祖のことで何か思っていることない?
―さあ。別に
―そんなことない。胸に手を当てて揉んでごらん。気持ちいいだろう
―何言っているんですか。どこかに行ってくださいよ。お宅、関西人ですか。ぼく、関西人がきらいだ。いつもくだらんことばっかりを言って
―そう怒るな。おまえにも、関西の血が流れているのだから。
ところで、最近おまえは、「先祖のたたり」で自分の人生がうまくいかないなどと考えているようなので、ちょっと話しておいたほうがいいかなと思ってな。大体お釈迦さんは、先祖のことは何にも言ってない
―思っていませんよ。大体ぼくの先祖って、たいした者いませんから
餅を28個食べで29個目に喉に詰まらせて死んだやつとか、近所の娘が行水をしているのをのぞこうとして、登った柿の木が折れて死んだやつとか
―それ、おれのおやじとおじさん。正確には30個目と松の木。
―やっぱりほんとのことだったんだ
―時間がないから手短に言うけど、おれたちは、おまえのことを心配することがあっても、たたったりしないから
それを聞くたびに血圧が上がる。うちは血圧の高い家系だからな
―血圧!そんなもの江戸時代は知らなかったでしょ?
―何にも知らんやつだな。今日(きょうび)、地獄でも、健康が命より大事と言われている。 おれも、朝晩血圧を測っている。しかし、おまえが先祖のことを言うたびに、下の数字が上の数字より高くなることがある
―またまた。そんなことあるわけないでしょ。
ぼくが、先祖のことを言うのは、先祖一人一人のことではなくて、DNAのことを言っただけですよ。DNAってわかります?
―そんなもの食べたことないなあ。うそうそ、老人大学で聞いたよ。
来週は、iP細胞について勉強することになっている。理科系なのでな
―お宅、ほんとにぼくの先祖?
―まあね。おれがいたから、おまえがいるなどと野暮なことは言わないが、妻子のためにも、しっかりやってくれ。
優秀なDNAを伝えられなかったのは申しわけないが
―そう言ってもらったらうれしいけど
―おっと、電車が来たようだ。今度ゆっくり飲もうや。うちはほとんどの者が地獄にいる。こっちのほうが楽しいぞ。
おーい、気をつけて帰れよ。おまえのひいじいさんの弟は汽車から落ちて死んだからな。    

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