すし屋にて(3)
今日も、ムーズがやってきた~きみと漫才を~
「すし屋にて」(3)
法人は粉飾できても、人は粉飾でけへんとゆうた。いつかは、本人の正体が出る。冷酷非情に、「守銭奴」で生きたろと思ても、年を取ると、自分が、気持ちよく生きていける、つまり、気持ちよく死んでいけるもんを選ぶようになるんやろ。それが、自然なんやろ。
自分とゆう経験が少ない若いもんが、それこそ「金で買えんもんはない」と豪語することもあるやろ。かくして、株を売り買いしたり、ナンバーワンホストを目ざすわけや。
もっとも、金がほしいのは、年がいっても変わらんけどな。宝くじに当たって、酒屋を、その日にやめた人を知っている。ぼくかって、5年ほどまえに、宝くじに当たっていたら、たかが4,5000万で、銀行や保証協会に頭下げんかってもよかったんや。年商8億やったんは、バブルのときやろ、あとは下がる一方やったやないか。自分で、よう考え(また愚痴か。だいぶ酔うてきたわ)。
最近、テレビ、新聞などに、サラ金やパチンコ屋のCMが、ばんばん出るようになったやろ。あれかって、スポットの収入が減ったからや。
今までは、ああゆうもんのCMは取り扱いませんゆうとった。まず、「わがのふところ」を心配したんや。倫理規定もくそもあるか。銀行も、サラ金に、20%もの金利で金貸して、何が「お客様のため」や。「ご利用は計画的に」てか。計画的やないから、そんなとこから借りるんやないか。それを、助長しているのは、まちがいなくマスコミのCMと銀行や。とにかく、犬を、サラ金で借りて買うな。「そんなやつおらんやろ~」と、大木こだまのようにゆうても、そんなやつが多いらしい。とにかく、自分にとって、大事なもんを見つけたほうが、ええ人生送れる(それが、金ゆうもんもおるやろけど)。
おっと、タバコの臭いがしてきた。OLが二人隣にすわった。二人とも、チューハイやて。ぼくは、芋焼酎を、生(き)のままでやるのが好きやけど、すし屋では、焼酎は飲まへん。日本酒で「ぬる燗」や。冷酒は邪道や。日本酒と老酒は、温めて飲むのが正しい。売りあげが低迷して、日本酒メーカーが血迷うとるんや。すしに対して、申しわけなくないのか。
せやけど、今は、おっさんでも、チューハイやからな。そして、「アボガドのにぎり」ゆうようなものも出てきたから、誰が、何飲んでもええか。
とにかく、女の変わりようはびっくりするな。昔とスタイルが全然ちがう。ぼくらのときは、ベッピンでも、足が、盆栽みたいやった。正座せんようになったからか。
そこへ、社会でも、男と女は対等や。この前、ワンボックスカーが、ぐんぐん迫ってくるから、横へのけて、どんなやつか見たら、40ぐらいの主婦や。ワンボックスカーの中で、くわえタバコをして、煙がけむたいのか、目ぃ細めながら、「おら、おら」と、としよりの車をあおっている。男がしてきたことを、全部やったるゆうわけやな。韓流ブーム、ジャニーズ人気がうなずける。子供が増えんわけや。これからは、出産と育児を分けんとあかん。オルダス・ハックスレーが、「ブレー・ブニューワールド」の中で描いた未来の社会が近づいてきたようや。
人生は、「酒と泪と男と女」か。河島英五は、それがわかったから、早う死んでもうたのやろか。あかん、最終電車に遅れそうや。それに、次のもんが、立ってまっているから、帰ろ。