すし屋にて(1)
今日も、ムーズがやってきた~きみと漫才を~
「すし屋にて」(1)
この前、大阪のすし屋におったら、隣に30代ぐらいのサラリーマンが二人すわって、いろいろしゃべりはじめた(ぼくは、すし屋や居酒屋で、人の話が聞くのが一番好きや。最近、OL同士が来るようになって、上司や夫の悪口をゆうようになった。同伴出勤のホステスと客のかけひきもおもろいけど)。
「この数ヶ月は、ボーナス月のようなもんやな」、「急がしゅうて、使うヒマおまへん」、「それまで、嫁はんに隠しとかんとな」と景気のええ話やった。
その後、いろんな会社の株価の話が続いていたから、どこかの証券会社に勤めているんやろな(そのわりに、ええもんにぎってもらってへんかった)。
確かに株価が、バブル以来の上昇やゆうニュースが流れている。売買が盛んで、証券会社に手数料がようけはいるんやろな。
昔、ぼくが知っている人が、証券会社に務めよかとなったとき、親が、大学まで出したのに、何ちゅうことするねんゆうてたいへんやった。親戚のおっちゃんまで出てきて、そんなやくざな商売するなと大騒ぎや。
昔は職業に貴賎があった(あんまり大きな声ではゆわへんかったけど、自分の子供となると、話がちがう)。不動産屋(周旋屋)は、人の財産をさらっていくから「トンビ」、人材派遣(口入屋)は、人の「上がり」をくすねるから「ピンハネ」(1割を取る)てなもんや。そんなもんを、自分の子供にさせたくなかった。
ところで、株は、資本主義の根幹やからゆうて、子供のときから教えんあかんゆうて、証券会社どころか、学校で教えるゆうてるで。
教えるゆうても、「安く買って、高く売る」以外に何があるねん。人生を投機の対象と考えるような子供が増えてくるような気がするけどな。それよか電鉄や航空会社(これは、アメリカのように経営が不安定やけど)の株を買って、優待券もらったり、「吉本」の株で、入場券もらったほうがええのんとちがうの。
そんなこと教えんでも、金が好きなもんは、においのするほうへ集まる。今は、それが株や。そして、株の時価相場世界一を目指したもんが出てきた。世界一の金持ちになったろと、その心意気や、とどまるところ知らずや(今は堀の中にいるから「堀」エモンになっているけど)。阪神や松坂屋などの大企業の株を買うては、なんやかや(他人の財産の有効活用とか)ゆうて、高く売りぬける男も、「ベニスの商人」に出てくるシャイロックのように思えてしゃあない。特に獲物を狙う鷹のような目が。
いつでも金(きん)に変えられる「金本位制」のように、土地があれば、金が借りられる「土地本位制」が、ついこの前あった。もう懲りたかなと思うていたら、今度は、株があれば、なんでもできるとゆう「株本位制」になっているんやな。
金(かね)は、いつもいろんなもんに化けて、人をたぶらかす。