ホモ・ファベル

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「ホモ・ファベル」
この前、セルフでガソリンを入れていたら、ぼくぐらいのおっさんが、スタンドの兄ちゃんと話をしているのが聞えてきた。
「わしも、ETCをつけたいんやけど、会社の人間に聞いたら、機械つけるだけではあかんねやてな。そのカードここで売ってるか」
兄ちゃんはていねいに教えていたけど、腹では、まだこんなおっさんがおるのかいかとびっくりしたやろな。
それにしては、何でETCだけ割り引きなんや。現金はあかんのか。事情があって、ぼくは長い間認められんかったけど、そんな人間はどうなるんや。
それより流通を支えているトラックがあかんのはどう考えてもおかしい。
「天下り役人はETC特需でふはふは」と週刊誌に載っていたけど、エコより経済やとゆう中国のことはゆわれへんで。
マスコミも、「それでは現在の道路状況はどうでしょうか。報道ヘリに、小仏トンネルの様子を聞いてきましょう」や(空にいらんCO2をばらまくな)。
セルフのガソリン給油のことに戻ると、兄ちゃんの話では、最初はどなられたり、給油機のノズルをぶつけられたりとたいへんやったとゆうことや。
人間は、道具を使う動物(ホモ・ファベル)やけど、年がいくと、道具とのつきあいがむずかしくなる。
年明けに義理の叔父の葬式があったけど、お骨を拾うときに、ケータイが鳴った。見ると、どこかかおっさんがごそごそしていた(はじめて見る顔やったけど、向こうの濃い親戚なんやろ)。
「わっ、えらいこっちゃ」とスイッチを止めると思うやろ。せやけど、ちごうた。
「はい、そうです。はいはい、*時ですね。行けると思うのですが。はいはい、そうそう、それは、わたしの方からなんとかかんとか。はいはい」
「この骨はどうたらこうたら」と話がはじまっているのに、部屋の隅に行って話を続けた。
怒ったがな、骨になった叔父が(多分)。「うるさい、おまえ、ええ年して何考えとるねん。こっちは熱い目に会うてきたんや。まじめに拾え。足から先や。順番まちがえるな」といいたそうやった。
電子レンジに、「早く開けろ、ピッ、ピッ、ピッ」と催促されたり、ローガンを上げて、ケータイに顔を近づけて、「小さい『つ』はどうして作るんやろ?」と悩んだりと、新しい道具はストレスの元や。
せやけど、道具がうまく使えないからゆうて世間から取りのこされたように思うたらあかん。その道具がどうしても必要なら使えるようになる。
父親は、ガス湯沸かし器を爆発させたけど、そんなことはみんな女がするもんやと思うていただけや。
それに、これからは道具もチエがついてくる。つまり人間様に近づいてくるのや。
たとえば、介護ロボットの研究が進んでいるようやけど、まずこれやろな。
「あなた、アタシにはいつもツッケンドンな態度をするわね。でも、アタシのこと好きなんでしょ。ほんとのことおっしゃい。でないと、おしめ替えてあげないから」なんて藤あや子みたいな介護ロボットにゆわれたらどうする?
「ごめんよ~。昔好きだった人にそっくりなんだ」
「いいわよ。今度ゆっくり聞いたげる。どうれ」なんてね。
寝たきりも悪くないかもしれんな。
そうなれば、今の若いもんのように、道具を道具扱いすると気ぃ悪くしてゆうこときいてくれなくなる。
今テレビの画面に「アナログ」と出ているけど、そんな脅しに乗ることはない(あれも、延長になるゆう専門家もいる)。
ただし、ケータイの電源を、かけるときだけ入れるクセはなおそな。

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