超能力

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「超能力」
キーホルダーに5,6本のキーをつけているが、そのうち一本だけ中ほどからギューと曲がっているのに気がついた。
店のシャッターの鍵や。なんとか使えるけど、どうしてそうなったのか不思議でしゃあない。
尻ポケットに入れることはないけど、もしそうしても、そんなことにはならへんやろ。
数日心当たりを考えたが謎のままやった。ひょっとして、ぼくに超能力がついたんとちがうやろかと思うようになった。
今まで体からは汗しか出んかったけど、何か物質を変形させるもんを出せるようになったか、とうとうぼくの番が来たと思うと感無量や(鍋やフライパンが体にくっつく人間をテレビで見たことある)。
今までの人生は、誰かの超能力に邪魔されつづけてきたもんなあ。
小学生のころは、このまま行ったらエライもんになれるとゆわれていたのに、この世にテレビがあらわれて勉強せんようになってしもうた。
サラリーマンを2年した後、事業をはじめたけど、最初の4,5年は失敗続きやったが、その後はとんとん拍子で全国展開できるまでになったのに、酒と女に溺れるようになった。
全部、ぼくを妬んだもんが、超能力でぼくを陥れたのや。
このまま死んでいくのかと思うていた矢先に、救いの手があった!
せやけど、超能力で人を苦しめたくないし、鍵やスプーンばっかり曲げてもつまらん。大体不経済や。
これで儲けたろと思うても、古臭!ゆうて、テレビにも出してもらわれへんやろし。
そこで、手始めに自分の弱点を改善することに決めた。
字ぃがきれいに書けることと、歌がうまく歌えることや(どちらも超能力をかけられている気がする)。字ぃはパソコンがあるから、後回しにして、まず歌や。
いつものようにテレビのチャンネルをテキトーに回していたら、超能力が「となりのマエストロ」とかゆう番組を見ろとゆうた。
「みんなの党」の渡辺喜美みたいマエストロが出てきて、「オンチは聴覚の問題やない、声帯を使ってないだけや」と何かええことゆうてくれる(絶対音感をもっていても、オンチのもんはなんぼでもいるんやて)。
声帯を鍛えるために、大きな声でホ~、メェ~とゆうだけで、オンチが直るとゆうことや。
超能力が超能力を呼んだんや。
それで、毎日犬の遠吠えとやぎの鳴声をやってまんがな。何が歌いたいんやてか。「また君に恋してる」や(デヘッ)。
せやけど、今の歌は、オンチいじめのメロディーが多いなあ。
「愛ちゃんは~ た~ろおの 嫁になる~」のような単純明快なもんはない。
しかも、この歌詞は気に喰わん。「若かっただけで 許された罪」とか「涙ふけば 虹も架かるよ」とか他人事みたいに言いくさって、「また君に恋してる 今までよりも深く」やて。
こんな得手勝手なやつ知らんわ。
でも、歌っちゃう。昔からビリーバンバン好きやし、聴いていると涙が出てくるもん。
それに、近々歌わんとあかんシーンがあるかも知れんよってにな(「あほくさ、何がシーンや」てゆわんといて。これについてはまたゆうから)。
声帯のまわりが胃液のように苦くなるまでやっているけど、歌はまだずれずれのままや。
なんでやろ、超能力を使っているのにと不思議やったが、思い出した!
10日ほど前に、店に忘れもんをしたので、夜中にシャッターに鍵を差しこんだまま、ザーと開けたことがある。あのときになったんやな。道理で歌がうまくならへんはずや。
それやったら、もっと練習せんとあかん。ホ~、メェ~。

 -