シーラじいさん見聞録

   

そう言われれば動いているようだが、ミラのほうが遠くまで感じることができるので、そう思うだけで確信がない。
「ぼくが見てきましょうか?」ミラが言ったが、相手が気づくと、また時間がかかる。
オリオンは、「ぼくが見てくるから、きみはそっとここを離れろ」と言った。
相手がミラに気づいてここに来れば時間がかかるからだ。
「分かりました」ミラは体を動かすと、ゆっくり離れた。
ミラは岩陰に隠れながら影のほうに進んだ。しかし、相手も動いているようで、わからなくなった。
何かのまちがいかと思ったとき、影が動いた。かなり近くにいるようだ。
オリオンはゆっくり岩陰に隠れた。慌てると気づかれる。そのまま動かずにいた。
何事も起こらないので、ゆっくり岩陰から顔を出した。
4つ、5つの影が動いている。この大きさはクラーケンだろう。しかも、影が止まる。何かを探しているのはまちがいない。
この近くに怪物はいるのか。体はまだ大丈夫だ。しばらく様子を見ることにした。
数分して顔を出すと影は消えていた。どうしようか。まず上に上がろう。
ミラとはまた会えるだろう。
海面に上がるとミラが待っていてくれた。「どうでしたか?」と心配してくれた。
ミラが言ったように、クラーケンで、しかも、怪物を探しているようだ。しかも、
執拗に探していると答えた。
「どうします?同じ場所を何回も探すのなら、ぼくも見つからないようにしなくてはなりませんね」
オリオンも、「ぼくもそこを考えていた。怪物は言葉を話さないが、ぼくらいうことがよくわかっていた。そうか、そうでないかをもう一度聞くと唸り声で返事していた。
それで、岩の間に向かって、ぼくが声を出すと、ぼくだということはわかるはずだから、向こうも唸ってくれるような気がするんだ」
「なるほど。怪物も逃げ込んでいるはずですから、オリオンの声が聞こえると安心しますね」
「そう思う」
「ぼくは上のほうにいます。何かあったら上に上がってください」
「了解。頼むぞ。さあ行こう」
オリオンとミラは怪物がいる岩礁をめざした。ミラは途中で横に向かった。オリオンは海底に向かった。
そして岩陰に隠れた。動きはない。しかし、戻ってくることがあるかもしれないので細心の注意が必要だ。
岩と岩の間に向かって、「ぼくだよ。聞こえるか」とクラーケンに察知されないようにして叫んだ。しばらく待って返事がなければ次の岩礁を探した。
そして、三日後、岩の間からウッーという声が聞こえた。
「ぼくだよ。探していたんだ。出てきて大丈夫だ」とオリオンは興奮して叫んだ。
もちろん、ここで気づかれるとすべて水の泡だから用心して叫んだ。
しばらくすると、オリオンでも出入りできないほど狭いところから何かが出てきた。足のようなものが出てきた。怪物だ!
オリオンが見守っていると、足から体、手、頭が出てきた。ミラの半分ほどあり、力も強いのにそんなことができるのだ。
そして、すっくと立ちあがった。そして、オリオンを抱きしめるようにした。
オリオンは、「よくがんばったなあ」と声をかけた。
怪物も、オー、オーと叫んだ。「これからはぼくらがいるから大丈夫だ。それでは御南がいるところに戻ろうじゃないか」と言うとうなずいた。
そのとき、ミラが来た。怪物は驚いて逃げようとしたが、「大丈夫だよ。ぼくらの仲間だ。
昔きみと知りあったときもいたのだが、洞穴が小さいので中に入れなかったので外で待っていたんだ。きみを襲ったものからも守ってくれるので何も心配しることはない」と紹介した。
3人はリゲルが待つ場所に戻ることにした。先頭にオリオンが及び、次が怪物だった。最初は泳ぐことはできないのかと思ったが、ゆっくりだが泳ぐことができた。その後にミラが続いた。

イリアスは毎日眠れなかった。オリオンはすでに洞穴についているはずなのに、どうしてその結果が知らされないのかと考えるといてもたってもいられなかったのだ。
行方不明だったミラも戻ってきて、すぐにそこに向かったことも聞いていたし、シーラじいさんとベラも向かっていることも手紙で知った。それなのにどうしたんだろう。
それはイリアスだけでなく、大人も全員同じ気持ちだった。空を見上げてはカモメが手紙を持ってこないか待つ日が続いた。
アントニスは、イリアスがそのことで疲れていることがわかっていたので心配だった。
そこで、ジムやミセス・ジャイロ、マイク、ジョンとともにオリオンたちについてことを話し合うことにした。
みんなも何か話したいと思っていたので、マイクとジョンが大学の仕事を終えて帰宅した後、夕食をしながら話した。
「イリアスだけでなく、ぼくらも毎日手紙を待っているが連絡がない。カモメがシーラじいさんを見つけられないからかな?」とアントニスが話を始めた。

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