シーラじいさん見聞録

   

アントニスは、マイクが電話を切るとすぐにミセス・ジャイロ、ジム、イリアスを呼んだ。そして、慌てることはないからと前置きをしてから、それを伝えた。
しかし、ジムの顔がみるみる赤くなって、「何だって!ほんとか。誰がそんなことをしたんだ」と叫んだ。
「どうも助手の一人の行方が分からなくなっているそうだ」
「助手がオリオンを連れだしたのか」
「多分そうらしい」
「なんということだ。教授がついていたのじゃないのか。オリオンはニンゲンのために自分を犠牲にしているのだ。同じニンゲンとして恥ずかしい!」
イリアスは泣きそうな顔で、「オリオン」と言うばかりだった。ミセス・ジャイロがすぐにイリアスのところに駆けつけやさしく抱いた。「大丈夫よ。オリオンは勇気があるし、仲間も大勢いるでしょ。オリオンのために人生をかけているニンゲンもいるわ。イリアスもそうじゃないの。仲間が一つになれば、絶対助けることができるから」
「教授と別の助手二人がその助手の行方を探している。そして、何か分かったらマイクが連絡してくれることになっているから、それまで待とう」
「二人の助手も仲間というわけじゃないだろうな」ジムは食いさがった。
「そのあたりはマイクとジョンがいるから、2人を見てくれている」
アントニスはすぐにシーラじいさんに手紙を書いて、定期的に来てくれるカモメに渡した。

マイクが、オリオン一人でいたプールを隈なく調べた。すると、天井部分に何かがつけられたいたような後を見つけた。それを、教授とミューラー、ヨンセンに見せた。そして、「ここに何かありましたか」と聞いた。
「いや、ここには何もなかったはずだ。監視カメラも前からあるのだけだ」3人は断言した。
「ラーケは周到な準備をしていたようですね」
「そうすると、それをどこかに持ちこむために必要だったのか」
「そうでしょう。単独ではオリオンをどうにもできないでしょうから」
「何てことだ。ぼくが知っているところは全部聞いてみたが、どこも連絡はなかったと言っている、ノイペルトもまったく知らないそうだ。それに、大学のトラックも使用されていないんだ」教授は泣きそうな声で言った。
「冷静に考えて、今新たにイルカを研究しようと考えている施設は世界中のどこにもないはずです」
「それならどうするつもりなんだ」
「しかし、唯一言えるのは、オリオンの価値を認めた施設です」
「ラーケが売りこんだのか!それなら、外国かもしれないな。きみらには迷惑かけてしまった」
「まだ心配することはありません。ぼくらには大勢の仲間がいます。それに、オリオンは賢明ですから、今頃はどうするべきか考えているはずです」
「それを信じるよ。ぼくらはどうしたらいいのだ」
「空港か港に連絡して、それらしき荷物をもちだしたものがいないか調べるとはことはできませんか」
「ぼくの教え子に運輸担当の役人がいる。それに聞いてみよう」教授と二人の助手は出ていった。

リゲルたちもアントニスの手紙でオリオンがいなくなったことを知った。
それを聞いたものは、最初教授から聞いたマイクやジョン、二人の助手のように、オリオンがいなくなったという意味が分からないという顔でシーラじいさんを見た。
「いなくなったというのはどういことですか」誰かが聞いた、
「大学のプールにいたはずのオリオンが、ある朝教授がそこに行くと姿を消していたのじゃ」
「オリオンが消えた!」そんなことがあるのですか」
「どうやら一人の助手が仕組んだらしいらしいが、今みんなでその行方を探しているらしい」
「その助手がオリオンをどこかに連れていったということですか」
「そのようじゃ。わしもこれ以上のことは分らんから、次の手紙を待つしかない」
「オリオンは大丈夫でしょうか?」
「助手は、何のためにそんなことをしたのだろうか」誰かが言った。
「海に戻してくれたのではないか」
「それならいいが」
みんながやきもきして、次の手紙を待っているとき、北極海のクジラが来た。
みんなから事件のことを聞くと、「ここに来るとき、妙な船を見ましたが関係ないでしょうか」と言った。
それを聞いたリゲルが、「みんなの前で話してください」と頼んだ。
「いや、船が2隻止まっていました。このあたりでそんなことはあまりないので、故障でもしたのかと見ていましたが、小さな船から大きな船に何か乗せているようでした。
ただそれだけですが、もう少し気をつけてみていたらよかったですね」
「どんなものでしたか」リゲルが聞いた。別のクジラが、よく覚えていませんが、長いもののようでしたが、何しろ遠かったので」と答えた。
「シーラじいさん、ぼくらも準備しておいたほうがいいですか」と聞いた。
シーラじいさんは、「そうじゃな。その助手の写真がいるじゃろな。ベラ、アントニスに手紙を書いてくれないか」と言った。
リゲルがカモメを呼んだ。みんなは何が起きるのだろうと思った。

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