シーラじいさん見聞録

   

「気をつけろ!バリアがきつくなるぞ」リゲルは、若い仲間に叫んだ。「もし意識が朦朧としてきてもあわてるなよ。すぐにぼくに言え」
「わかりました」若い仲間は緊張して答えた。
ミラが先頭になり、リゲルとベラが両端に位置し、その間を若い仲間が進んだ。そして、シリウスとペルセウスはあたりの警戒に当たった。
しばらく進むと、耳が痛くなってきた。そして、体が重くなってきた。バリアがきつくなってきたのだ。リゲルは、若い仲間の動きに注意した。
やはり蛇行をはじめてきたものがいる。リゲルはすぐにそこに行き、体をぶつけて、「もう少しだ。辛抱しろ」と声をかけた。
そのとき、先頭にいたミラが戻ってきて、「前からセンスイカンが来ている。ぼくがひきつけるから、リゲルはみんなを見ておいてくれ」と叫んだ。
「ミラ、無理をしないでくれよ」リゲルが答えた。「わかった。ここは狭いので、大きなセンスイカンはいない。うまくやるよ」ミラは戻っていった。
リゲルは、「もう少し下に行こうか。ペルセウスとベラは先に行ってくれ」と言った。
センスイカンが攻撃してきた。ミラは一気にもぐり、そのままセンスイカンの下から体当たりをした。センスイカンは大きく揺れた。そこを何回も体当たりをした。センスイカンは、必死で逃げた。
これで、他のセンスイカンがかけつけるだろう。急ごう。早くしないと、また方向がわからなくなってしまう。ミラも、動きが悪くなってきているのを感じるようになっていた。
リゲルたちは急いだ。バリアはさらに大きくなり、若い仲間はそれを避けるかのように曲がりだした。
力が入らなくなったのか、浮かぼうとするものがいる。リゲルは、それを押さえつけようとしたが、必死で逃げる。
もう2,30メートルは浮いている。このままでは見失ってしまう。しかし、1人を追えば、収拾がつかなくなってしまう。
ベラが来て、「わたしが連れもどしてきます」と言った。
「いや、きみはいてくれ。ペルセウスとシリウス、きみらが行ってくれないか。ミラが帰ってきたら、すぐに向かわせるから」
「了解」2人は後を追った。
「ベラ、先頭を進んでくれ。ぼくがみんなの動きを見ているから」
「了解しました」ベラは急いで、先頭に行った。
若い仲間は苦しそうだった。リゲルは、たえず励ましつづけた。
「ベラ、海面まで行け」少し休まなければ、取りかえしがつかなくなると思ったのだ。
ペルセウスとシリウスは若い仲間を追った。「どこへ行ったのだろう?」
「まっすぐ上に向かったのではなさそうだな」
「陸地にぶつかっていれば、ニンゲンにすぐに見つかってしまう」
「まず海面まで行こう」
「シリウス、きみは大丈夫か」
「大丈夫だ。ニンゲンは、夜は苦手なのだろう?それに、船がいれば、その光で、あいつがどこに向かっているかわかる」
「それじゃ、気をつけていこう」
海面近くになって、ペルセウスは、何かいるのを感じた。「この上にいるのはセンスイカンか」とシリウスに聞いた。
「確かに何かいる。でも、どうもちがうようだ。音を出していない」
「見てくる」
ペルセウスは、少し離れて浮きあがった。「ミラじゃないか!」と近づいた。
「ペルセウス、探しにきてくれたのか」
「そうなんだ。きみじゃないが」
「この子だろう?」ミラの横に誰かいる。探していた若いシャチだ。
「あっ、見つけてくれていたのか」
「みんなに追いつこうと急いでいるとき、何かが浮いてきた。近づくと仲間だとわかった。『どうした?』と聞いても、ぼくから逃げようとするんだ。バリアにやられたなと思って、落ちつかせているところだ」
「もう少しの辛抱だよ」ペルセウスも声をかけたが、返事をしない。
追いついたシリウスが、「船がこちらに来るぞ!」と叫んだ。すると、ヒューという音がしたかと思うと、バーンという音がした。ミラが、うっと声を上げた。
「大丈夫か!」シリウスが叫んだ。
「ああ、大丈夫だ。急所を外れている。何分、面の皮は厚いからね」ミラは冗談を言ったが、かなり痛そうだ。
「さあ、戻ろう」シリウスは若いシャチに声をかけた。
リゲルたちは、海面に上がるまでセンスイカンには出会わなかった。そこで少し休むことにした。ミラたちも、すぐに追いついてくれるだろう。
「もう行こう」リゲルがそう言ったとき、光が走った。近くに大きな水柱がいくつも上がった。
「潜れ!」リゲルは叫んだが、誰も潜ろうとしなかった。リゲルは、「ミラ、みんなを押さえてくれ」と叫んだ。若いシャチは恐怖で潜ることができなくなっていたのだ。
リゲルとベラは、シャチの上に覆いかぶさって、ようやく攻撃から逃げることができた。
そのとき、ペルセウスの声が聞えた。「大丈夫か!」
「大丈夫だ。みんなは?」
「ミラが若いシャチを見つけてくれた。今、こちらに向かっているところだ」
「よかった」
ミラが若いシャチを守りながら来た。
「ミラ、ありがとう」
「光が走るのが見えたので、急いでこちらに来た」
「誰もけがはなかった」
「よし、もう少しだ」

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