シーラじいさん見聞録
しばらく行くと、リゲルたちがいるのが見えた。急いで近づくと、すでにシーラじいさんもいた。
「いや、遅れました」アントニスはあわてて言った。
「いやいや、わしらこそ、忙しいのに何回も来てもらってな」シーラじいさんは恐縮して答えた。
「何かありましたか?」
「いや、昨日言ってもよかったが、まず、あなただけに話したほうがよかろうと思って黙っておった」アントニスは、わかりましたというようにうなずいた。
「実は、オリオンと一緒に閉じこめられていたイルカがここに来たのじゃ」
「えっ。それなら、オリオンは?」
シーラじいさんは事情を話した。「そのイルカはどこにいるのですか?」
「まだニンゲンを怖がっているので、シリウスといる」
「ああ、オリオン!なんというやつだ」アントニスは鳴き声で言った。イリアスの目から涙がぼたぼた落ちた。
「アリオンは強い子じゃ。絶対無事に帰ってくるとわしらは信じておる。
ただ、陸にいるので少し時間がかかるかもしれぬ。そこで、あなたに頼みたいのじゃが、あの研究所がどういう組織かアレクシオスに調べるように言ってくださらんか?」
「実は、アレクシオスには、オリオンがあそこにいることを言いました。オリオンのことをひじょうに心配してくれていましたので」
「そうじゃったか。それなら話が早い」
「それで、アレクシオスは、あの研究所を取材に行くと言っていました」
「それは助かる」
「何かわかれば、どうしたらいいでしょうか?」
「ミラの話では、地中海では、またクラーケンが動いているようじゃな。イルカやシャチがあちこちで集まるようになっているのを見たそうじゃ。当然、ニンゲンもそれを知っているじゃろ。
すると、体に何かつけられたイルカやシャチも放たれるじゃろうし、オリオンもさらに調べられているはずじゃ。
ニンゲンは、オリオンを使って、実際の海で実験をするかもしれない。そのときがオリオンを助けるチャンスじゃろと思うている。
あなたが見てきたように、アメリカ人などの外国人が多いそうじゃから、どのようなことしているかわかれば、どうするべきかわかると思う」
「わかりました。今から電話をします」
「よろしく頼みます」
アントニスとイリアスは戻った。早速、いつもの雑貨屋へ行って、アレクシオスの新聞社に電話をした。
受付のテスピナが出た。「あいにく、アレクシオスは、スパタ岬にある海洋研究所の取材に行っています。
今日は帰りませんが、取材が終われば連絡が来るようになっています。どうしましょうか?」
「それなら、今晩は8時にいつも行く店に電話をするように言ってください。電話番号は知っていますから」
「了解しました。それから、『オリオンとイリアス』はたいへん標板がよいようで、ギリシャ市内の本屋ではすべて売り切れだそうですよ」テスピナの笑顔が浮かんだ。
「それはすごいな。これで、オリオンを助けることができたらうれしいよ」
「わたしも、そう願っています」
「それじゃ、また」
「さよなら」アントニスは、イリアスに、今のことを話した。
「世界中がオリオン知るようになるんだね?」イリアスもうれしそうに言った。
「そうだ。イリアスという名前もね」
「ぼくのことはどうでもいいけど、世界中のみんなが、あの研究所に、オリオンを海に戻せと言えばいいじゃないか」
「でも、クラーケンを退治するためには、どうしてもオリオンがいると言うかもしれない」
「それじゃ、童話が売れたら、そのお金で買うわけにはいかないの?」
「そうだね。それのほうが簡単かもしれないな」
2人は家に帰り、夜を待った。8義前に店に行き、店主に電話がかかってくることを言った。ちょうど8時に電話が来た。
「アントニス、取材に行ってきたよ」
「どうだった?」
「ギリシャ人の秘書が応対してくれた。まず、ここは、どのような研究をしているのかと聞いた。
もちろん海の生態を研究しているのだが、この異常事態がなぜ起きているのかを調べている。
攻撃してくるのを次々殺していけば、海の生物は絶滅してしまう。そんなことになれば、人間も絶滅するので、そんなことにならないようにしなければというのが返事だった。
それで、何かわかったのかと聞いたが、まだわからないということだったので、クラーケンは、人間の言葉を理解しているのではないか、あるいは、どこかの国がイルカやシャチを操っているのではないかと聞いたが、そんなことはないだろう、体からは何も見つからないのだからと言った後、顔が緊張するのがわかったよ。
とにかく、早くこんなことが早く終わるように、成果を出しますということだったが、研究施設を見せてほしいと頼んでも、責任者がいないと言って断られた。
きみが言っていたように、かなり軍事が絡んでいるようだが、今は宇宙人が攻めてきたような事態になっているのに、あまりにも秘密主義だ。これは何かあるぞ」