シーラじいさん見聞録

   

「了解」2羽のカモメが残り、5羽が、仲間のカモメとペルセウスを探しに飛びたった。
そのとき、ヘリコプターの音が背後から聞こえてきた。だんだん大きくなる。オリオンたちは、すぐに潜った。カモメも、風に巻きこまれないように、すばやく逃げた。
いよいよ警戒区域に近づきつつあるのだ。常に警戒しているようだ。
クラーケンたちやニンゲンに見つからないようにしなければならない。それで、ときおり海面に顔を出すだけで、カモメを待つことにした。
翌日の早朝、オリオンたちが様子を窺っていると、上空にいるカモメが下りてきて、「帰ってきたようです」と叫んだ。
朝焼けを背にして、遥か向こうに黒い点が見えるが、あれがそうだろうか。
「あれが仲間ですか。あちこちにいますが?」オリオンは聞いた。もし、まちがっていたら、危険に会うことも考えられるからだ。
「あれは仲間です。わたしたちに向かっています」カモメはすぐに応えた。
「わかりました」それなら、あの下にはペルセウスがいるのだ。オリオンたちは、まわりに何かいないか確認して、カモメが来る方向に向かった。
カモメが静かに再会を喜びあったのを見て、オリオンたちは一気に潜った。
しばらくすると、ペルセウスが目の前にいた。「ペルセウス、お疲れ。どんな様子だった?」オリオンが叫んだ。
「かなり集まりだしている。紅海から南100キロぐらいの場所だ。
クラーケンたちは、スエズ運河を突破しようとしているはまちがいない。
センスイカンやヘリコプターも続々集結している。いつ何が起きてもわからない状況だ。
それから、紅海の入り口も調べてきたが、アフリカから向かう場合、でっぱりがあって見落としやすい。もちろん、ぼくが案内するが」
「よし、それなら、アフリカ大陸にできるだけ近づいてから、紅海に入ろう。もう一度確認するが、もし何かあったら、アフリカ大陸のほうに戻ることを忘れるな」
みんなうなずいた。そして、今度は、オリオン、ミラ、シリウス、ベラの順で進んだ。
ペルセウスが、道案内のために先頭に立ったが、何かあったら、すぐにオリオンの指示を受けることができる。
オリオンたちは注意深く進んだ。やはり、ここは静かだ。とりあえず作戦は成功だとみんな感じていたとき、「オリオン、もうすぐアフリカのでっぱりだ。そこを曲がれば、紅海に入る」とペルセウスが言った。
「了解。問題がなければ、すぐに入ってくれ。そして、しばらく行ってから、どこかに隠れて、シーrじいさんとリゲルを待とう」オリオンは指示を出した。
「了解」
しばらく進むと、背後から、シリウスとベラが飛んできて、「ミラがおかしい!」と叫んだ。
「どうしたんだ?」オリオンが聞いた。「ミラがんどん上に上がろうとする」
オリオンは急いで戻った。確かにミラの体は斜め前方に向いていた。ミラ自身も、これはいけないと思っているのか、体を戻そうとするが、その都度、体が揺れて、しかも、向きが定まらない。
「ミラ、どうしたんだ。上に行くと危ないぞ」オリオンが叫んだ。
ミラは、「ああ」と答えたが、意識が薄くなっているようだ。
オリオンは、「みんな、ミラを押さえてくれ」と叫んだ。オリオン、シリウス、ベラが、ミラの体に乗って、上がらないようにした。
しばらく向きは水平になったが、また、上に向かう。力も抜けてきたようだ。
ミラを押さえていたオリオンたちも、だんだん力が入らなくなってきたのを感じた。
無理に力を入れると、体がひっくりかえり、上下左右がわからななくなってしまう。
「おい、みんな大丈夫か」オリオンは必死で聞いた。
「大丈夫」シリウスとベラも、必死で答えた。
「戻ろう」オリオンが言った。
「了解。ミラは大丈夫か?」シリウスが聞いた。
「意識は充分戻っていないが、体はさっきのようなことはないから、大丈夫だ」
「どっちに向かうのかよくわからなくなった」シリウスが叫んだ。
「わたしも見当がつかない」ベラも感覚が鈍ってきたようだ。
「ぼくもだ。ペルセウス、ぼくらはこっちを頭にしているから、アフリカ大陸は右にあるか左にあるか見てきてくれないか」
「了解」ペルセウスは急いだ。
オリオンたちは、ミラの様子を見ながら待った。ようやくペルセウスが帰ってきると、「アフリカ大陸は右にある」と叫んだ。
「よし、このまま戻ろう」オリオンたちは、ミラを促しながら、そのまま進んだ。
しばらく進むと、ミラの体に生気が戻ってきたように見えた。
「ミラ、どうだ?」オリオンが聞いた。「突然頭が真っ白になったんだ。ここはどこなんだ?」オリオンは、さっきのことを話した。
「全然おぼえていない。どうしたんだろう?」ミラは自問した。
「紅海付近に防衛システムがあって、ぼくらの感覚を狂わしたのかもしれない」
「どうしようか?」シリウスが聞いた。
オリオンは、じっと考えていたが、ようやく声を出した。
「今度は、できるだけ深く潜ってから一気に紅海に入ろう。防衛システムもそこまでは届かないだろう」
「そうね。わたしたちぐらい潜ることに慣れているものはいないものね」ベラも賛成した。
「カモメは心配しているだろうが、紅海に入れば会える。どのように入ったかシーラじいさんとリゲルに伝えてもらおう」
「時間がないぞ」
「急ごう」
オリオンたちは、ようやく戻ってきた感覚で、大陸を左に感じて進んだ。

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