のほほん丸の冒険 第1章56~60

   

のほほん丸の冒険
第1章56
バッグを返すためにはどうしても聞いておかなければならないことがあったので、「お聞きしてもいいですか。もし都合が悪いのなら答えなくてもかまいませんが」とミチコに言った。
ミチコは、「何でしょうか。なんでもお答えします」とすぐに答えた。
ぼくも、「あのバッグは誰のものですか」と単刀直入に聞いた。
「ごめんなさい。それを早く言わなければならなかったわね。
男らはあれだけ必死でバッグを取り戻そうとしてるのだから、私が盗んだものと思われても仕方ないですもの」
「いいえ。そういうことではないのですが」ぼくはそう答えざるをえなかった。
「あれは私のものではありません。しかし、バッグは私のものです。中身はちがいます」と言ってから、「バッグの中身は見ましたか」と聞いた。
「いいえ。鍵がかかっていましたので見ていません」
「ほんとはこれ以上迷惑をかけたくないので言いたくないのですが、あなたたちは命がけでバッグを守ってくれたのですから言います」
ぼくらは黙っていた。「中身は自分のものではないといっても盗んだものではありません。中身は私の叔父の書いた研究論文です。男らがそれを盗みに来たので叔父の指示でバッグに入れて逃げたのです」
「叔父さんは研究者ですか」ぼくは聞いた。
「そうです。自分の研究を続けたくて大学を辞めて一人で研究していました」
「それを取られそうになったのですね」
「そうです。教授のときから親しくしていた新聞記者がよく訪ねてきていました。叔父も研究などの話し相手がいなかったものですから、叔父が呼んだのでしょう。
新聞記者は、話の中で研究の秘密を聞いたのだと思います。そして、彼が誰かに話したようで、どこかの国がそれを欲しがりました。
男らの会社が叔父に交渉したけど、叔父は断りました。それで、男らは研究論文を盗もうとしたわけです。
叔父はパソコンなどを別の場所に隠して、その論文を私が持っているように言ったのです。
ところが男らは私の家を見つけて論文を取ろうとしたので、バッグに入れて逃げましたが、新宿駅でつかまってしまったんです」
「それはどんな内容ですか」しゃかり丸は好奇心を抑えられなかった。
ミチコはしばらく黙っていたが、「悪用すれば人類が絶滅します」と言った。
「えっ!」しゃかりき丸が叫んだので、ぼくは、「静かに」と制した。
「ただ、叔父は悪魔の発明をしようとしたのではなく、地球を守るための電力供給を考えたのです。地域ごとに発電できるので、自然を破壊することもありません。
しかし、悪用すれば、持ち運びできる核兵器になるので、それを欲しがる人間や国がいるわけです」
「叔父さんが心配ですね」ぼくは思わず聞いた。
「そうなんです。今はどこにいるか、あるいは・・・」ミチコは黙った。
「おれたちが見てきますよ」予想どおりしゃかりき丸が言った。
それはぼくも同じ考えだ。ミチコはママかもしれないという考えは合っているのかどうかはまだわからないからだ。それがはっきりするまでミチコのそばにいたい。
ママは今何才なのかはパパから聞いたことがないが、ミチコはママと同じぐらいだ。
ミチコは、「ありがとう」と答えたが、具体的なことは誰も言わなかった。
疲れがどっと来た。ライトで腕時計を見ると、午前1時40分だ。バスの時間は7時20分なので、かなり時間がある。
ぼくは、ビニールシートを出して、ミチコとしゃかりき丸に渡して、「明日は忙しくなるので、少し休もう」と言った。
それぞれ少し離れて休むことになったが、しゃかりき丸はぼくのそばに来て、「やつら、『また子供か』」と慌てているぜ」と笑ったが、すぐにいびきをかきはじめた。
のほほん丸の冒険

第1章57
目が覚めた。しかし、しばらくは動かずに様子をうかがうことにした。
真っ暗だ。目を動かしてみたが何も見えないが、どうしてここにいるかはっきりわかった。しゃかりき丸とミチコはまだ寝ているようだ。
半ズボンから出ている足がかゆい。何かに刺されたようだ。そっと掻いていると、近くでごそっという音がした。しゃかりき丸が寝返りを打ったようだ。
遠くで鳥が鳴いている。頭を打たないように体を少し起こして外を見た。
まだ暗そうだ。しかし、鳥の声が聞こえるということは深夜ではないだろうと思って腕時計のライトをつけた。4時30分だ。バスの時間まではかなりある。
どうしようか。この時間にぼくたちを探していることはないだろうが、外に出るのはやめることにした。
もう一度横になったが、直接地面に寝ていたためか体が痛い。それで、横向きになって今日どうするかを考えることにした。
ミチコはママなのだろうかと考えた。ぼくが2,3歳のとき、どこかの駅のプラットホームで、パパが、「向こうにいるのがママだよ」と言ったので、10メートルほど離れたところに立っている女の人に向かって走っていったのを覚えている。
ぼくを抱き上げて泣いていた女の人はここにいるミチコなのか。でも、ぼくはどうしてミチコをママと思ってしまったのだろうか。
3か月前、施設を出てパパの親戚に行くために新宿駅に行ったが、時間があるので、柱にもたれてつい寝てしまったが、駅にいることを意識していたためかママに抱かれたことを夢に見たようだ。
ちょうどその時、ミチコが慌てて「バッグを預かってください」と声をかけてきたのだった。その声は、泣きながらぼくの名前を呼んだママの声と同じだと思ってしまったからだ。ミチコがほんとのママである確率はほとんどないのかもしれない。
はっきりしたいのなら、ミチコ本人に聞いてみたらと自分に言った。それ以外方法はないよ。横にした顔から涙が落ちるのが分かった。
ぼくは手で涙を拭いて、今からどうするか考えることにした。近くでごそごそ音がした。ミチコが起きたのだろう。外を見るとかなり明るくなっている。
ぼくは体を起こして、「おはようございます」と声をかけた。
ミチコも、「おはようございます」と言った。「昨日はありがとうございました。これからどうなるのだろうと不安で不安でたまりませんでした。
ののほん丸さんのおかげです」
「ののほん丸と言ってください。すぐに戻りますからと言われたので、いつの間にか3か月たってしまいましたね。とにかく返すことができてほっとしています」と答えた。
「ほんとにご迷惑かけました」
「いいえ。親戚に行くことになっていたんですが、あまり気乗りがしなかったので、ぼくも用事ができてよかったです」
時計を見ると6時だ。しゃかりき丸を見るとまだ寝ている。そろそろ起こさなければならないと思っていると、「どの道を通ってバス停まで行ったらいいか調べてきたぜ」と寝たまましゃかりき丸が言った。
「いつ」
「夜中さ。犬がいないルートを探した。犬を連れてきているのが多いからな」
「ありがとう。ここからどのくらい時間がかかる」
「まあ20分だな」
「それじゃ、6時50分に出ようか」
「それよりもっと大事な話がある」僕は身構えた。
しゃかりき丸は声を潜めて続けた。「八王子で降りるより終点の高尾まで行くほうが安全だと思う。そこからも新宿行きのバスがある。もしやつらが待ち伏せしているのなら八王子にいるだろうからその裏をかけばいい。ののほん丸はどう思う」
「なるほど。きみの言うとおりだ」ぼくは感心して言った。
それから、ミチコを加えて細かい打ち合わせをして、7時5分前に床下を出た。

のほほん丸の冒険

第1章58
あたりを見て、しゃかりき丸が見つけていてくれた道を用心しながら進んだ。道ではなく、家と家の間を通るから15分で着いた。
バス停は道路を渡らなければならないので、あいつらがいるのではないか用心しながら渡った。ミチコを助け出したのは昨晩だから、このあたりにはいないだろうが念には念をいれなければならない。
バス停は案内板があるだけだが、奥に小さな小屋があるのは分かっていたので、その陰に急いだ。
その小屋は道路工事のための工具など置いてあるようだった。鍵がかかっているので中には入れないが、小屋の前には木が数本あるので車などでは見つけにくい。
しゃかりき丸が、「道がカーブしているところまで見てくる。バスが来たらすぐに走って戻ってくる」
「どうしてそんなことをするんだ」とぼくは聞いた。
「不審な車がいないか見るんだ。もしいたらバスには乗らない」しゃかりき丸はそう言うと、バス道ではなく林の中を走っていった。
「しゃかりき丸はすごいわね」ミチコが感心して言った。
「そうでょう。ぼくもしゃかりき丸がいなかったら、あなたを助けることができませんでした。
やつらの車のトランクに入るなんてことはぼくにはできません」と答えた。
「二人が助けあってわたしを助けてくれたんですね」
「うまくいってよかったです。おっともうバスが来る時間です。しゃかりき丸が帰ってこない。どうしたんだろう」ぼくらは腰をかがめてバス停に行った。
バスが来るほうを見ると、200メートルぐらい離れたところにあるカーブをバスが見えた。
「これはやつらがいるということか」ぼくは迷った。「でも、しゃかりき丸が帰ってこないのはおかしい。つかまったのか」そう思っていると、バスが止まりドアが開いた。
しゃかりき丸が顔を出し、「おい。早く乗らないか」と早口で言った。
ぼくはミチコを乗せて急いで乗った。バスはすぐ走りだした。
しゃかりき丸は運転手に、「ありがとうございます。これで、速く病院に行けます」と話している。「ははあ。やってくれたな」と思って後ろに向かった。
客は2,3人しかいなかったが、一番後ろの席にすわり、体を低くした。しゃかりき丸が来て、「そういうこと」と笑った。
バスの前後を見たが、やつらがいる形跡はなく、バスは順調に高尾に着いた。時間まで駅から少し離れたところで待った。その間は話をすることもなく、あたりの様子をうかがった。20分ぐらいで新宿行のバスが来たのですぐに飛び乗った。
バスはかなり混んでいたがすわることができたので、体を低くして寝た。
新宿に着くと急いでおじいさんがいるテントに向かった。
「ただいま」しゃかりき丸が最初に飛びこむと、「おっ」という声が上がった。
最初ミチコは躊躇していたが、ぼくは、「早く入ってください」と急がした。
「帰ってきたか」テツとリュウが立ちあがって迎えてくれた。
二人はミチコをちらっと見たので、「ぼくにバッグを預けた人です」と紹介した。
二人は、「この度はどうも」と挨拶したが、それ以上言わないので、「ミチコさんです。ここの流儀に従って名前しか聞いていません」と紹介した。
テツとリュウも名前だけを名乗った。それからテツは、奥で寝ているおじいさんのところに行き、しゃかりき丸とぼくが帰ってきたことを報告した。
テツは、「じいさんが呼んでいる」と言ったので、3人で行った。おじいさんは体を起こしていたので挨拶した。
ミチコは、「お二人に助けていただきました。皆さんには大変ご迷惑をかけました」と丁寧に礼を言った。
「ミチコさん」とおじいさんは言った。「この度は災難でしたな。ここにあなたのバッグがあります。お返ししておきます。念のために中をあらためてくだされ」
ミチコはバッグを受け取り、頭を下げた。「ありがとうございます。ただ、鍵を取られたので開けることができません。だから、元のままだと思います」と言った。
「それならいいが。今後は取られないようになさい」とおじいさんはやさしく言った。
ぼくらはテツとリュウが待っているとところへ戻った。「じゃ、ミチコさんはお帰りですか」とテツが聞いた。
ミチコは言いよどんだので、「まだ一仕事ありますよ」としゃかりき丸が口をはさんだ。
「何があるんだ」リュウが不足そうに聞いた。「それはこのバッグの中身ですよ」しゃかりき丸がにやりと笑った。
ぼくとミチコは顔を見合わせて笑いを殺した。

のほほん丸の冒険

第1章59
「高価なダイヤモンドでも入っているのか」リュウが聞いた。
「具体的なことは言えませんけどね、それよりもっと大事なものかもしれませんぜ。
そのことでミチコさんが心配していることがありますから、その手伝いをするんですよ」
テツとリュウは苦笑いをしてうなずくだけだった。こいつらは相変わらず何かしたがっているという顔はしていたけど。
「そうしたら、これからどうするんだ」とテツが聞いた。
「それはミチコさんとおれたちが考えます」しゃかりき丸の説明が漠然としているのでミチコが口をはさんだ。
「このバッグの中身は私の叔父のものなんです。叔父に届けるまでお手伝いしますよと二人が言ってくれているのです」
「そうでしたか。おれたちも何かあったらお手伝いしますから遠慮なく言ってください」とテツが言った。
「ありがとうございます」ミチコは頭を下げた。
とりあえずミチコに休んでもらうためにビジネスホテルを探すことにした。
ミチコは長い間監禁されていたので疲れがたまっている。まずは休まなければならないのだ。それから、テントに戻って、少し休むことにした。
テントを出る時、ミチコは、おじいさんに「もう少しバッグを預かっていただけませんか」と聞いた。
おじいさんは、「構わない。必要なときに取りにきたらいい。それから、困ったことがあれば遠慮なく来なさい」とミチコを安心せた。
いつも行く公園の近くにホテルがあったので、そこに泊まることにした。
手続きをするとき、ミチコは、「必ずお返しします」と言ったが、ぼくは、「大丈夫です。パパの代理人が送金してくれますが、ぼくはあまり使わないんで」と答えた。ミチコをエレベータまで送ってから、テントで休むことにした。
横になると、すぐに寝てしまった。起きると午後5時だった。
その日はリョウがおじいさんの世話をする担当だったので、ぼくとしゃかりき丸はその手伝いしてから夕食を食べることにした。
昼食も食べていなかったからかなり空腹だった。それでコンビニで買って公園に行った。大人がいないときは、店に入らないことにしていのだ。
しばらく無言で腹を満たした後、しゃかりき丸が聞いた。「ミチコは、きみがバッグを預かった日からつかまっていたのだろうか」
「多分そうだと思う」
「すると一月以上監禁されていたことになる。ぼくは、4,5日監禁されていたけど、死ぬほど苦しかったもんなあ」
「ぼくもそうだ。ただ、ぼくの場合は、病院のようなところに何回か行ったから、少し息抜きできたからよかったけど」
「ミチコはこれからどうするのかな」しゃかりき丸がまた聞いた。
「叔父さんの研究所は新宿にあると言っていたから、まずそこを調べたいだろうが、あいつらもミチコを探している可能性はある」
「鉢合わせしたらまずいな」
「それが心配だけど、研究所には叔父さんはいないような気がするんだ。
ミチコが一月以上も監禁されていたということは、やつらも叔父さんの所在が分からないということかもしれないよ」
「なるほど。論文を書いた本人を監禁していれば、本人に内容を聞けばいいんだものな。
つまり、わざわざ秘書をしていたミチコを監禁しておく意味がないというわけだな」
「そうだ。ミチコも、やつらは自分を探しているということは分かっているから、用心しているはずだ」
その時、携帯が鳴った。ミチコだった。「今から会いたい」ということだったので、すぐに迎えに行った。
ミチコは少し疲れが取れたように見えた。午前中はぐっすり寝て、午後から研究所や親戚などに電話したそうだ。
研究所の電話は切られていて、親戚はどこも叔父さんから連絡はないし、来てもいないということだったそうだ。叔父さんは元々親戚づきあいが嫌いで必要なことはすべてミチコがしていたそうだから、連絡がないのは不思議なことではないのだ。
しゃかりき丸が、「おれたちが研究所を見てきますよ」と言った。

のほほん丸の冒険

第1章60
しゃかりき丸は、ミチコを助けた勢いを続けたいようだ。
「あいつらが来ていなくても、子供一人でビルの中をうろつくの目立ちすぎるよ」ぼくは、しゃかりき丸を制した。
「それなら、どうしたらいいんだ」と不服そうに聞いた。
「テツに頼もう。手助けしてやると何回も言ってくれているからここで頼むんだ」
「テツなら背広が似合うかな。それならいいが」しゃかりき丸が納得した。
所在地やビルの様子は、直接テツに説明することになった。それで、テントに戻ると、テツとリュウがいたので、そのことを相談した。
「そうだろう。おれたちがいないと事は進まないだろう」リュウが大きな声で自慢した。
「おまえが行くんじゃないよ。前に行ったやつの面が割れることはないだろうが、念には念を入れておれが行くよ」テツが言った。
「おれはどうしたらいいんだ」テツが聞いた。
「もしテツに何かあったら助けてくださいよ」ぼくはリュウに頼んだ。
リュウも納得して、5人で話をした。
研究所が入っていたビルはここから歩いて30分ぐらいにあった。
電話をしてもつながらないのであれば多分他のテナントが入っているか、空室のままだろうと思って、ぼくは、「その部屋を近所のビルから見えますか」とミチコに聞いた。
「そうだ。おれたちは監禁されたからよくわかる。ののほん丸がどの部屋にいるかはビルから離れて調べないと分からないからな。ミチコさんの場合は木に登って調べたけどね」しゃかりき丸が賛同してくれた。
ミチコは少し考えていたが、「近所はビルだけですが、確か2,3軒離れたビルが高くて、その屋上で昼休みなどに社員がいるのが見えましたね。そこからなら逆に研究所が見えると思います」と言った。「部外者でも上がれたらいいのですが」
しばらくその他のことも話し合い、それぞれ自分の役割を確認しあった。
現地にはテツ、リュウ、ミチコの3人で行くことになった。テツはビルに入り、リュウとミチコは近くのカフェで待つ。
もし緊急事態が起こればリュウが助けに行くことになった。ミチコは研究所が見えるビルに案内するのだ。
そして、ぼくとしゃかりき丸はおじいさんの世話をすることになった。
「これで作戦会議は終わり。今から仲間に背広を借りてくる。昼から決行だ」とテツが言った。
結局、部屋は閉まっていた上に、社名のプレートもなかったのであきらめざるをえなかった。
そこで、研究の部屋が見える近所のビルに行ったが、警備員がいたので、ミチコが入ることになった。部屋は見えたが、研究所はブラインドが下りていたそうだ。
その帰り、ミチコは新宿警察に行き、叔父さんの消息を調べてもらえないか聞いた。
しかし、担当者は丁寧に聞いてくれて、長時間調べてくれたが、身元不明者は分からなかった。叔父さんの知りあいや友だちに連絡したら何か分かりませんかね。あるいは、自宅がある警察なら何かしてくれるかもしれませんとアドバイスしてくれたそうだ。
ミチコは、ホテルに戻って不動産屋を調べることにした。ミチコが秘書として研究所に来たのは、すでに準備がすんだ後だったので、不動産屋のことは分からなかった。
ビルの所有者の会社や新宿のあちこちの不動産屋に連絡して、ようやく見つけることができた。
しかし、その部屋を担当した社員はすでに退職していたので、詳しくは分からないが、関係者と名乗る男がが解約手続きをしていたそうだ。残る家賃も払い、荷物もすべて運んだそうだ。
事情を話して、その関係者の名前と住所や電話番号を聞いた。最初は躊躇していたが、ようやく話してくれたが、心当たりはない。思い切って電話をしたが、つながらなかった。
「やはり叔父さんは連れ去られた可能性はあるな」しゃかりき丸がそう言うと、みんなうなずいた。
ミチコは途方に暮れていたので、ぼくは、「その住所も調べなくてはいけませんが、まず叔父さんの自宅に行きませんか」と提案した。

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