時を待つ

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復活ノート

「時を待つ」
「剣岳」という映画が評判になっています。
監督は、黒澤明から一番信頼を得ていた木村大作というカメラマンです(業界ではキャメラマンというそうですが)。
だから、映画監督ははじめてとはいえ、質の高さには疑いの余地がないために、企業が資金を投資したのでしょう(監督の製作意図は知りませんが、「日本が最初に世界不況を脱する」という国や経済界に、平成の「黒部の太陽」と歓迎されたのはまちがいありません。当然文科省の推薦にもなっています)。
ところで、監督は自説を曲げない性分で、煙たがられることも多いようですが、「気にくわねえ仕事をするぐらいなら、アルバイトのほうがいいよ」とべらんめえで言うとおり、実際交通整理員などをしたようです。
そうやって、自分の夢が叶う時を待ったというのです。
交通整理員は、今真っ黒になって、道路工事やスーパーなどで、事故が起きないように、旗を振っていますが、監督のような人は少なく、意にそぐわない人生を送ってきたのか、何か鬱々したものを持っている人もいます。
男でも女でも異常に太っている人もいますし、髪の毛を伸ばしに伸ばしたりして、自分を主張しているおじさんもいます。
ところで、アルバイトは、学生だけのものではなく、正社員になれない若者、事業が頓挫した経営者にとっても、「藁(わら)」どころか筏です。
偽装マンションを売っていた、あの社長も、詐欺事件を起した老舗ソース会社の坊ちゃん社長も、清掃員のアルバイトをしたそうです(どちらも腰を痛めたということですが)。
私も、学生時代はアルバイトにあけくれ、結婚後も、25才で事業を興したときは、地下街の清掃、焼き肉屋の店員などをしました。
5,6年前までは、「今までよくがんばってきた。お陰で一生金に困ることはないだろう」と思っていましたが、やむをえず会社をたたむと、金に困り、30年ぶりのバイト復帰となりました。
宅配便大手の深夜の倉庫の仕事はなかなかのものでした。トラックから荷物が詰まっているカーゴを降ろして地区別に分けるのですが(ピラミッドの石を運んだ奴隷の気持ちがわかりました)、若い社員から、あほ、ぼけとなじられるのにはちょっと閉口しました。
しかし、いいこともありました。84キロの体重が、1ケ月で78キロになりました(2週間で10キロ減ったという人もいました)。
メタボで困りならぜひおやりください。しかも、時給1000円いただけます。
その後、大手スーパーのグロッサリーといわれる陳列係りや清掃の仕事は全部不採用でした。世の中の厳しさを痛感しました。
これではいけないと危険物取扱者の資格を取りました。セルフのガソリンスタンドの監視員です。これは楽でした。すわっているだけですので、深夜文章を考えられますし、その日はアルコールを抜くことができるのですから。
復活をめざしている人は、何か資格を取ってください。そして、監督のように、焦らずその時を待ってください。