
ブーム
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復活ノート
「ブーム」
お笑い芸人が芥川賞を受賞したというので大騒ぎになっています(芸人が好きだと言っている太宰治は、クスリをやっていたためか、選考委員に臆面もなく、「自分にほしい」と頼んだそうですが、選考委員の一人である川端康成に、「目下の生活に厭(いや)な雲もありて」
で受賞できなかったそうです)。
数年前、ノーベル賞候補作家が新作を出したときも、徹夜組が出て大騒ぎになりました。それを読んだと言う人に会ったことはありませんし、新聞の書評も目にしていません。
iPHONEの発売ときと同じ大騒ぎです。出版社はほくほくでしょうが、こういうことは今までなかったように思います(買った人はぜひ読んでほしいと思いますが)。
どうして、ここまで大騒ぎになったのでしょうか。まず小説の出来があるでしょうが(私は読んでいませんが)、作者の意外性(昔、ある男の俳優が小説で何か賞を受賞したときも、世間は、「俳優が!」と驚きました。そのときは俳優と出版社の猿芝居が発覚しましたが)。
そして、周到に用意されたPR作戦です。
この三つがうまく機能したのです(質はともかく、意外性はそうありませんから、これだけブームになるのは稀有のことです)。
それと忘れてならないのは、時代のことです。文学的に不毛だからこそ、一つの花がもてはやされるのです。優秀な文学作品が、雨後の竹の子のように出てくる時代ならこういうことは起きなかったでしょう(そのときは、興味がないから、「見る目」を持っている人も少ないといえるかもしれませんが)。
ビジネスをしている人も、自分の商品やサービスの人気が出ないか毎日考えていることでしょう。
今はネットのことに頭が行くでしょうか。ネット広告はいくらするのか。検索したとき、上位に出るようにならないものかなどと。
ネット検索するエンジンはグーグルとヤフーがあるようにですが、ヤフーはグーグルのエンジンを使っているので、同じような上位ランクになるようです(ただし、ヤフーは、自分のスポンサー企業を優先するようです)。
上位に行くようにするのを「SEO」(検索エンジン最適化)と言いますが、費用をかけないで最善の方法を考えてください。
そして、人気が出たらすばらしいことですが、それに有頂天になることは禁物です。
ブームに乗った人はすぐに次のブームを探します。ライバルのほうに行くというより、あなたが懸命に取りくんでいる分野に飽きたのです。いずれそうなります。
ブームのときは、資金の工面に走りまわる時間が浮きますが、飲みに行くのを少し押さえて、自分が追いもとめているものにさらに近づくように努力すべきです。
私の反省はそれです。今後、もう一度浮かれることがあるかどうかわかりませんが、そのとき、あのお笑い芸人のように静かな目で自分を見つめたいと思います。