新しい人生
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復活ノート
「新しい人生」
店舗の明け渡しがようやくすみました。20坪の店でしたが、スケルトン解体といって、セメントやブロックが見えるようにしなければなりませんでしたので、厨房機器の処分などを入れて100万円近くかかりました。
店の設計や厨房機器の搬入をした20年前と反対のことをしたわけですが、共に苦労してきた者のことを思えば、胸が張り裂けそうになります。
そして、今度は近くに借りていた部屋の片づけをしなければなりません。
年内はここにいて、来年自宅に帰る予定にしていますので時間はあります。
逆に、時間があるからこそ20年間のことが毎日浮んできますが、いくら苦しくてもいつか片づけをしなければなりません。
家にある一つ一つのものに捨てるか捨てないかを判断して、捨てると決めたものは袋に入れて、決まった日にごみステーションにもっていきます。
家の片づけが自分のルーティンになるとは思いもよりませんでしたが、私以上に本人がこんなことになるとは予期せぬことだったでしょう(病院に運ばれた日にも、予定のことで私にラインを送ってきていましたから)。
家の片づけの間に、私が「ファンタジー」といっている童話や、「復活ノート」というタイトルで新しいビジネスの提案などを朝から晩まで書けるわけですから、それに夢中になることで少しは悲しみから逃れられるかもしれません。
年をとると、最愛の人との今生の別れは避けられないことです。しばらく何も手につかない日があるのも仕方がないことです。
しかし、何かしなければと思う時もあります。その時が、最愛の人を思いながらも新しい人生のはじまりだと思います。私も、まだその途中ですが、経験からそれを話します。
まず一日の計画を立てて、メモをすることです。散髪とか銀行とかどんな些細なことでもメモをつけます。そして、終われば消します。これで一日が終わったと実感できます。
私の場合、もっと幼稚で、セルフでガソリンを入れたことはないし、スーパーで一人で支払ったこともないし、電車のICカードのチャージをしたこともなかったので、勇気を出して店員や駅員に聞いて覚えました。
一番怯えたのは、最初に書いたごみの捨て方です。ネットを見たり、近所の人に聞いたりして、何とかできるようになりました。
しかし、一日中誰とも話さない日がありますが、これが地獄のような苦しさで一番辛いです(子供にラインを送っても返事がない時もあります)。
新しい人生をどうはじめるかをまとめて、「男やもめの新しい人生」という本を書きませんか。
新しい人生の流れができたら、きっと最愛の人も喜んでくれているでしょう。そして、流れの向こうにどどっという水が落ちる音が聞こえても、怯えることなく自分の人生を全うできるような気がします。同じ境遇の人お互いがんばりましょう。
復活ノート
「新しい人生」(2)
前回はとにかく心と体を動かさなくては一歩も進めないと言いました。
私も、数日は、今何を起きているのかわからず、一日中店にすわっているだけでした。もちろん電話はそのままにしていましたので注文が入ります。
「申しわけないのですが、お持ちできません」と断ると、なじみの客は、「どうして」と聞きます。
今起きていることなど信じたくなかったのですが、客に現実のことを言わざるをえません。
そんなことが続くと、何かしなければという気持が湧いてきました。
何かしなければといっても、もう営業はしないのですから、店を明け渡すしかありません。
私にとってはこんなことは初めてですから、まずネットで近所の業者を調べました。
昔会社を倒産させたときは管財人が入りましたので、こちらが何一つすることはありませんでした。
だから、今まで「復活コンサルタント」としてお話していますが、明け渡しなどのことは経験がありませんでした。
とにかく不整脈の老骨にはこたえました。今心臓が止まればいいと毎日のように思いましたが、1か月で何とか明け渡しをすることができました(約80万円かかりました)。
前回は、立ち直るためには、今日することをメモしてそれができたら消していけば、1日が大事なものだと感じられると言いました。
誰か助けてくれる人がいればいいのですが、私の場合、大型ごみなどは便利屋に頼みましたが、ゴミ出しなどは一人でしなければならなかったので、予定には気を使いました。
さて、今回は単にメモした予定をどう実行していくか徹底的に考えるのです。
あらゆる方向から考えていきます。もっと効率的な方法はないか。費用や時間を見直せないかなどを常に頭に入れるようにすれば、次の予定をしなくてもいいようになるかもしれません。
つまり、点と点が一本の線になるのです。これは自分で事業をはじめるための心構えとしてずっと言ってきていることと同じです。
ただ、事業を始める時は孤独や不安がつきまとうものですが、今回はそれ以外に苦しさ、悲しさ、やるせなさという感情が突然自分を襲うことがあります。
それらに振り回されないためには、メモを地図のようにして一日一日を過ごすのです。
先ほど、新潟県で5人の若者がレンタカーの中で練炭心中しているというニュースが流れました。
いつ不整脈の心臓が止まってもいいと思っている身にとって衝撃的な事件です。
とにかく今日1日の予定をこなすために前を向くだけです。