神様の事情
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(133)
「神様の事情」
誰でも、生まれたかぎりは幸福になりたいものです。だから、こうしたら幸福になれる、こうしないほうが幸福になれると判断しながら生きていくのです。
しかし、あまり度が過ぎたり、人に迷惑をかけるようなことになったりすると、身勝手だとか打算的だと言われます。
これは人間に特有のものではなく、動物にも言えます。もちろん、動物の場合は、感情で物事を決めることは少なく、生きていくという本能で他の動物を食べて、その動物の家族を悲しませるのです。
それでは、神様の場合はどうでしょうか。神様がまだ一人だけのときですから、それはそれは大昔のことです。
一人ですから何でも自分でもしなければなりません。こちらがすめば、あちら。あちらをやっているときに、別の問題が起こるという忙しさです。
神様は後悔していました。「動物や植物が楽しい人生を送っているのを見るのはさぞ気持ちがいいだろうと思って、この世を作ってみたもののこんなに忙しくなるとは思ってもみなかった。こんなことなら、寂しいけれど一人に戻ったほうがいいかな」
「よし。今なら元に戻すのはそう手間がいらない」そう決心したのですが、「しかし、汗水流して、取りあえずここまでしたのだから、もう少し辛抱しよう。家来がいれば、仕事を任せられるのだがなあ」と考えは次々と変わります。
そこで、「この世」でない世界にいる神様に、「ちょっと手伝ってくれないか」と声をかけました。
「とんでもない。みんな自分の『この世』で精いっぱいだ」と断られました。
この世の神様は、「それなら、人間の中から優秀な者を神様にしよう」と考えました。
「人間を神様にする!これは、我ながらすごいアイデアじゃ。まさに発想の転換で、『必要は発明の母』とはまさしくこのことじゃ」と有頂天になりました。
神様は、早速、「業務多忙につき神様求む。但し人間のみ。委細面談」といチラシをこの世のありとあらゆる場所にばらまきました。
当時、すでに多くの人間がいたのですが、神様とは何かを知っているものはほとんどいませんでした。しかし、新しいことをやってみようと思う若者が好奇心から応募してきました。
大会場で行われた第一審査で、かなりの者が落とされましたし、また、「いくら役に立つ仕事だと言っても、朝まで晩まで働いでも残業手当はないし、しかも、日曜日も休みなしでは割に合わん」と辞退する若者もいました。
ようやく5人採用しました、それから、訓練に次ぐ訓練が行われました。それに耐えきれなかった者が2人出たので、3人が神様になれました。
まずは、一日の担当です。つまり、朝の神様、昼の神様、夜の神様です。新人の神様は緊張していましたが、教えられたとおり仕事をしたので、何事もなく一日という時間が流れていきました。
これに気をよくしたのが元々の神様です。「これはいいじゃん。ゆっくり昼寝ができるし、
ワインも楽しめる」
神様はまた募集を始めました。待遇もよくなったり、仕事の理解も広がったりしたので、応募者はものすごい数に増えました。
元々の神様は、年を取ったこともありますが、面接を新しい神様に任せました。
採用は100人を超えました。元々の神様は、「こんなに採用してどうするんじゃ!」と怒鳴りましたが、「みんな優秀な者ばかりです」と答えました。
仕方がないので、あちこち振り分けましたが、それでも余ったので、季節の神様に12人、つまり、一つの季節に3人ずつ当てました。
一日の神様も、新人の神様にそれぞれ2人ずつの助手をつけたので、9人の神様が担当することになりました。
朝の次に夜になったり、暑い日が続いたかと思うと雪が積もったりします。
人間はたいへん困りました。体の調子は悪くなるし、食料は取れないからです。
元々の神様は、「わしのために人間に迷惑をかけた」と後悔しました。
それで、新規採用をやめたばかりか、定年の補充をしなかったので、神様の数が減り、みんな仲良く仕事をするようになりました。
最近、また季節の調子がおかしいようですが、そんなことで神様のせいではなさそうです。