ピノールの一生(24)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(134)
「ピノールの一生」(24)
船に乗せてくれた家族、特にネイサン、ルイという男の子とマノンという女の子は一生懸命磨いてくれたので見ちがえるほどカピカになったピノールとその相棒は、家族の人気者になりました。
子供たちとはいつもいっしょにいてゲームをしたり楽しい話をしたりしました。ピノールは片足ですが一生懸命相手をしました。子供たちは一日中大喜びでした。
食事のときも一緒でした。二人はロボットですから食べなくてもいいのですが、子供たちがいっしょにいてほしいというのです。それで、食事の手伝いをした後は。テーブルにすわって家族のお相手です。
船は自動運転ですから、その時は両親ともゆっくり話をしました。ピノールと相棒の身の上を理解してくれました。また、モイラを助けるという計画を感心して聞いてくれました。
「ロボット同士でもそういうことがあるんだね。モイラが無事だったらいいが」主人が心配しました。奥さんも、「ピノールも早くゼペールじいさんに会いたいでしょう」とやさしく言ってくれました。
それを聞いていた子供たちは、二人と遊べなくなるのが悲しくなりましたが、二人のために我慢しようと思いました。
二人になったとき、ピノールは、「これでうまくいきそうだ」と言いました。しかし、相棒は、小さな声で、「でも、気をつけなくっちゃ」と答えました。
「どうしてだい?あんなにやさしくしてくれているじゃないか」
「それはそうだけど、人間は、言うことと腹で考えていることがちがうことがよくあるからね」
「そうかい?ゼペールじいさんはそんなことはないよ」
「ゼペールじいさんはいい人だと思う。でも、ぼくはあちこちの工場でこきつかわれてきたから、いろいろな人間を見てきたから知っているんだ。
大昔のロボットは言われることを黙々としてきたが、今のロボットには心がある。準人間のような存在だ。つまり、理性と感情がある。だから、機嫌が悪いと働かないし、意気に感じることもある。また、人間と「合う、合わない」ということもある」
「それはわかるが、この家族は心配ないよ」
「それならいいが。ちょっと心配なことがあるんだ」
ピノールは相棒の顔を見ました。「昨日、リビングのテレビを見ていたら、ロボットの反乱が世界中で起きていると言っていた」
「ほんとか!」
「工場や家庭でのサボタージュだけでなく、人間を殺すロボットまで出てきているらしい。それで、登録書を持っていないロボットはすぐ逮捕されて分解されるようだ。
そういうロボットを見つけたり密告したりした人間にはかなりの褒章金が出る。体力では人間はロボットには勝てないからな」
「そうだったのか」
「でもいくら出るかわからない。そのとき、奥さんがは入ってきて、「今日はいい天気ね」と言いながら、すぐにテレビを消したからな」
「奥さんはやさしいからな。とにかく、陸に上がるまでは今までのように振るおう」
翌日、子供たちが部屋に飛びこんできました。「『今晩港に着くと二人に知らせてこい』とパパに言われた」とネイサンが泣きそうな顔で言いました。
「ありがとう。それじゃ、もう少し遊ぼう」とピノールは言いました。
遊びが思ったとき、マノンは、「もう遊べないの」と聞きました。
「しばらくは遊べないかもしれない。でも、仕事が終わったら絶対帰ってくるから、また遊ぼう」ピノールが答えると、マノンは、何回も飛びあがって喜びました。
暗くなったとき、父親が来て、「ようやく着いたよ。知っているかもしれないが、きみたちに対する取り締まりが激しくなっているようだ。
ぼくの友だちにゼペールじいさんの家まで送らそうか?」
「いいえ。もし迷惑がかかるといけないので、ぼくら二人で帰ります」
「その足で大丈夫か?」
「疲れたら返してもらいます。ゼペールじいさんが作ってくれるまでの辛抱です」
「そうか。もし捕まることがあれば、これを見せたまえ。ぼくの身分証明者だ。警察から連絡が来たら、すぐに駆けつけるから」

 -