ジャングルフェスタ24

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(96)

「ジャングルフェスタ24」
営業、企画の合同会議が終わろうとしていました。一頭のライオンが立ち上がり、「それじゃ、最後に一言。パフォーマンス一つ一つは申し分ないが、流れをもう一回考えてくれ。観客のテンションが上がっているのに、もたもたすると全体の印象が悪くなる。それは企画責任者に任す」企画責任者らしいゾウがうなずきました。
「観客の人間がもっと近くで見られるように、しかも、動物に対する恐怖を和らげる工夫を至急頼む。それは即売上げに繋がるからな。同じ人間の立場から頼むぞ」
営業責任者らしい人間も何度もうなずきました。
「今日はこれで練習を終わってくれ。あした早いからゆっくり休め」ライオンは、そう言うと、ゾウ、キリン、チンパンジーの秘書を連れて森に消えました。
しかし、ゾウやキリン、チンパンジーなどの営業部門は、解散せずに観客席やネットの見直しをしました。
動物がほとんどですが、人間もいる企画部門は、明日のためのおさらいをもう一度しました。
翌日午後1時から、「ジャングルフェスタ24」3日目がはじまりました。総勢1000頭の動物がオリンピック競技やサーカスなどをするのです。
上記の数字どおり、今年は2305年ですが、人間が少なくなっているので、人間を励ましながら、自分たちも、その収益で温暖化の影響で減少した食料を買うことにしたのです。
このフェスタは、先ほどのライオンなどの動物が考案して、企画なども自分たちで考えたのですが、そんなことが信じられない人間や、腹が減った動物に食べられるのではないかと不安に思う人間がいるので、人間が調教したということにしているのです。
これは、今やアフリカツアーの目玉で、21世紀のころには、80億人いた人間も30億人を切るようになったので、アフリカにいる動物を地球の同じ仲間と思うようになったのです。
しかも、その仲間が、見事なパフォーマンスをして、人間を喜ばせてくれるので。人気がでないはずがありません。
さあ、「ジャングルフェスタ24」のはじまり、はじまり!人間の観客は1000人以上集まったでしょうか、すぐそばで動物が動いているのが見られます。
まずは、ゾウやキリン、チーター、シマウマなどが参加した1000メートル競走。優勝は、何とゾウでした。チーターは最後には力尽きたようです。
すぐに50キロ、100キロマラソンなどもはじまりました。その間に、観客があきないようにサーカスです。
ライオンの背中にシマウマが乗ってチームを作り、それぞれが戦って落ちたチームが負けです。
木と木の間の約50メートルに木の弦を張って、チンパンジー同士が早く向こうにつけば勝ちです。引き返すことは反則です。相手との駆け引きが興味のあるところです。
キリンの頭に籠を乗せての玉入れも楽しいです。チンパンジーやシマウマ、ライオンだけでなく、ヘビもしっぽで球を入れます。
おや、マラソン走者が帰ってきました。かなりいます。あの小さいのは人間です。グラウンドを3周しなければなりません。誰が勝つのか。バッファローか、シマウマか、ゾウもいます。みんなかなり疲れています。勝ったのは人間です。そして、後から入って来た動物と抱きあっています。
そして、1000頭の動物がダンスをはじめました。壮観です。みんなうれしそうです。
観客も、ネットを越えて仲間入りをしました。それからも、楽しいゲームやスポーツが続きました。
力自慢の動物たちの綱引きや、ワニが背中に胡坐(あぐら)をかいたシマウマを乗せての競争です。
目隠しをしたライオンが、みんなにぐるぐる体を回されてから、食べ物を探すゲームに観客は大笑いです。5位でしたが、フェスタをまとめたライオンもがんばりました。
ゾウやサイ、カバの背中に次々に乗る組立て体操には拍手が止りません。
いよいよフェスタもお開きです。アフリカの見事な夕焼けがはじまりました。観客の顔も赤く染まっています。
統括責任者のライオンは、それを見て、「今日は成功だ。後3日気を締めてやろう」と思いました。
そして、人間の担当者に、「みんなに腹一杯食わせてやれ。それから、今日の売上げをまとめておいてくれ」と言って、秘書とともに会場を後にしました。

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