たんこぶ
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「たんこぶ」
牛丼屋が値下げ競争をしているらしいな。他の外食がどんどん安くなっているので、世間は、単品400円前後では高く感じるようになったそうや(家族連れは中華料理や回転ずし店に行くようになった)。
吉野家は30年ほど前に関西に進出したように思う。
元々どんぶりもんやから、若い娘はあんまりゆかんかった(ほんまはどうか知らんけど「吉野家なんか行ったことないですよおー」とゆうていた)。
ぼくも、昔、仕事の合間に小腹が空くと行ったことがあるけど、あるとき、犬を連れたおっさんが、「もってかえるわ。しょうが抜いといて」と注文したことがあった。
出来上がると、下において、犬に食わした。
あれは忘れられん思い出や。「外で食わせろよ」と怒るわけにゆかんし、「わしは、犬と同じもんを喰うとるんか」と泣きながらも口に放りこんだ。
あれで傷ついて、行かんようになった(そのうち、マクドみたいなもんが出てきた)。
それはともかく、アメリカ産牛肉問題などが起こったとき、吉野家は、アメリカ産やないと、うちの味は出せんと販売中止したことがあったやろ。せやけど、この不況で、世間は、味より値段を優先するようになったわけやな(もう少し出すと、「餃子の王将」で定食が食べられるもんな)。
そうゆうわけで、「店は世につれ、世は店につれ」となるわけやけど、その前に戸立ての店や商業ビルを作ったり、潰したりすることが必要になる。
この前から、ぼくの事務所のまわりは騒がしくてな、前の田んぼは耕作をやめて住宅地にするのか、どんどん土を運んできて整地した。
また、どこが入っても続くかん商業ビルを取りこわした。
そうこうするうちに、隣のマンションは壁の塗りかえや。数軒先のビルは、長いこと空き家やったけど、持ち主が自分とこの事務所にするための工事をした(バブルの後始末をしている大阪府といっしょや)。国道の横の歩道の拡張工事も始まった。
近くの沼地に大型スーパーが来るうわさがある。そうなると、またたいへんや。
不況でも(いや、不況やからか)、現場関係は忙しそうや。
近所は、騒音や出入りでうっとうしいけど、うれしいもんもいる。地主もそうやけど、工事を見学するおじいや。
工事現場では、「働く車」が活躍する。日頃見られへんブルドーザ、クレーン、ショベルカーが自由自在に動いている(あんな恐そうなおっさんがうまいこと動かすもんやと感心する。ぼくも、気象予報士の受験勉強中やけど、それが通ったら、クレーンの学校へ行こうかと思っている。何トンもあるもんをレバー一つで上げるのは楽しそうやからな。60のおっさんの出番はないやろけど)。
「働く車」は教育テレビなんかでようやっていたように、小さい子供が好きなもんやけど、ほんまの工事現場では、昼間のこともあってか、おじいばっかりや(おばあがいないのは、年を取っても、男女差があるのやろな)。
若いときは、何にもすることないのかいな。年行っても、あんなとしよりにはならんとこと思ったもんやけど、自分とは関係なくとも、鉄人28号のような作業車と熟練の腕で、図面どおりにみごとに作業が進んでいくのを見ると案外楽しい(作るほうでも、潰すほうでも)。
50になったとき、おれは、25からがんばって地位も名誉も手に入れた。計画通りやと思うた。
それから、数年して何かがおかしくなったわけやけど、ぼくの場合は、図面に無理があるのに、家族が悪い、社員が働かんと責任を押しつけたのが敗因かもしれん。
工事現場に日参しているとしよりも、あんなふうにちゃんとやっていたら自分の人生もとか、失敗したことをドカンと壊したら今度はとか、自分の人生と重ねているのやろとか。
あるビルの空き室の工事が始まったので、何屋が来るのやろかと毎日横目で見ながら通っていた。
数日前、でぼちんをガーンと打って、ふらふらとなった。作業をする職人が、ライトバンの裏のドアを上げていて、ドアの端におもくそ当たったのや。
どこにもゆうていくとこがないし、もう少し下やったら、たいへんことになると思うしかない。
みるみる大きくなるたんこぶをさすりながら、「おれは、どんなとしよりになるのやろか」と思うたことよ。