失踪(7)
「今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(195)
「失踪」(7)
10日後、警察から電話があった。対応してくれた警察官の名前は憶えていないが、多分あの時の警察官だった。
「高橋君。遅くなって申しわけない。きみも知っていると思うが、連続不審火事件で捜査が忙しくてね。
会議のとき、君のお父さんのことは聞いた。担当者が調べてくれたのだが、はやりこれといったことがないので、そのままになっているというのが本当のところだ。何か事件性があれば捜査もできただろうが」
少年はお礼を言ってから、「これから同じように状況でしょうか?」と聞いた。
「今の事件が解決すれば、警察本部になるコンピュータを確認する。それで見るかることもあるから、もう少し時間をくれないか」
「分かりました。もう一つお聞きしたいのですが、外国に大勢の日本人が囚われているいういうことはありませんか」
「それはぼくらでもどうしようもない。何か心当たりでもあるの?」
「いや。日本にいなければ、そんなことがあるかなと思ったもので」
「今は世界でテロが頻発しているので、日本人が加害者になることもあるだろうが、そうなればすぐに国際問題になって何かわかるかもしれないね。
もちろん、新聞には写真が出るだろうから気をつけて見ておく。きみもあきらめずにがんばるんだよ」
少年は、今は言うべきときではないと判断して具体的なことは一切話さずに聞いたが、担当の警察官は山田と名乗ったが、丁寧に答えてくれた。
それを藤本に言うと、「きみのがんばりで仲間は増えたんだ。これからもできるだけのことをやろう」と喜んでくれたのだった。
それから、3日後だった。成田空港で不審な外国人と同行の日本人らしき男が捕まるというニュースが流れた。
どちらもパキスタン政府のパスポートを持っていたが、あまりにも顔がちがっていたので再審査をした。
日本人らしき男もパキスタンに帰化したと主張しているそうだ。
テレビや新聞に出た日本人らしき男は50代だったが、少年の父親とは違っていた。
藤本も連絡してくれたが、「顔は全く違います」と言うしかなかった。
「警察は行方不明者などを調べているから、何か分かるかもしれないよ」と励ましてくれた。
数日、そのニュースは途絶えたが、ある日、東北の県立高校の教師ではないかというニュースが流れた。
その男が黙秘していることもあって、またニュースは止まった。藤本は、「におってきたじゃないか!」と電話してきた。
少年の母親は夫が行方不明になってから懸命に探しまわったが、今は、その反動からかあきらめがちであった。
しかし、少年が父親を見つけるためにあちこち行き、そして、気持ちを理解してくれる人と知り合いになるのを見て、自分も何かしなければならないと思いようになっていた。
その外国人はテロ組織の人間だということが分かったようだ。後は、本人は黙秘したままだが、教師であった男がどうしてまた偽名で日本に戻ってきたかということだった。
政府は、行方不明の人間、特に仕事を持っていて突然行方不明になった人間の
調査を始めたようだ。
日本の場合は、外国人が自由に動きまわるのはハンデがあるので、日本人を使って行動するかもしれないからだ。