姉妹

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(203)
「姉妹」(2)
二人は立ちあがって執事の後に続きました。子供のときはこのあたりでよく遊んだものです。
しかし、他の神様が来ているときは遊ぶことが禁じられていました。日頃よく遊んでくれた父親もそのときは厳しい顔をしていたものです。
しかも、少女になるとこの城を出ていかなくてはなりませんでした。
父親は、「この家で生まれたものは、男でも女でも仕方がない」と泣き崩れる二人に声をかけました。
それからは厳しい修業がはじまり、ここに帰ってくることが許されるのは、自分の仕事が終わったときの数日ぐらいでした。
執事が呼びに来るのですが、父親に用事ができればそれもありませんでした。
しかし、今回は今まさに仕事を始めようとするときに執事が来るとは。
しかも、妹の春風とともにです。秋風の心は複雑な思いであふれていました。
父親の部屋の前に来ました。執事がノックしてドアを開けました。
父親の声が聞こえました。二人は部屋に入りました。
「おお。よく来たな。ゆっくしておいで」
「お父様。ゆっくしておいでと言われても、私は、今日明日のうちに吹きはじめなくてはなりません。『みんなが期待しているように吹くのがおまえたちの仕事じゃ』とお父様が教えてくれたではありませんか」姉は懐かしい気持ちを抑え、わざと怒ったように言いました。
「そうですよ。私も、しばらく時間があるように見えるけど、次はどう吹こうかと考えています」妹も負けていません。
「それは十分わかっておる。しかし、急いで話すことがあったので、無理を承知で来てもらった」
「何でしょう?」
「おまえたちの仲はどうじゃ」
「いやですわ、急に。仲が悪いとで思っていらっしゃるの?」
「いやいや。ただ妙な噂があるようなのでな」
「噂?」
「お互い時間がないから手短に話そう。お前たちは、自分が4人兄弟の中で一番優れていると自慢していないか」
「お姉様の前ですが、お姉様はことあるごとにそのようなことを言ってらっしゃると聞いたことがあります」
「まさに風の便りと言うやつじゃな」
「お父様ったら!それに妹も何を言うのよ。私がそんなこといつ誰に言ったのよ。教えてちょうだい」
「秋風が夏風のようになったわい」
「もう帰ります!」
「まあ。そう興奮するな。秋風は人々の心身を癒(いや)し、春風は人々に新たな希望を宿す。会うことは少ないが、お互いが助けあうのじゃ。
もちろん、夏風や冬風もそうじゃ。夏と冬も嫌われることがあっても吹かないと大変なことになる」
「それはお父様からも教官からも教えられています」
「そうじゃろ。そうであれば自分のほうがえらいということは思いつかん」
「だから、私は言っておりません!ただ、友だちが、『あなたの家は風の家系なのね』と聞くから、いろいろな話をしたことがあるので、そのときのことが広まったのですわ。でも、妹のことがうらやましいといったことがあっても、私が一番すぐれているなどに言うわけがありません」
「まあ、そうじゃろ。来てもらったの別のことがあるのじゃ」
「なんだ。そうですの!」姉が叫びました。
「おまえたちの兄と弟のことじゃ」
「夏風と冬風のこと!」妹も大きな声で言いました。
「最近、二人が必要以上に吹いていることが分かった。そんなことをしておれば、自分を見失い、いつかは夏風と冬風が戦うことになる。これは風の便りではない。証拠がいくらでもある」
「どうしてそんなことを?」姉が聞きました。
「二人はわしの跡目を狙っている。いかに自分が勝っているかを世界に見せつけようとしているのじゃ」
それを聞いて、姉は、「兄がなかなか私に吹かせてくれないのは確かです」と言った。
「そうね。私も、弟がいつまでもいるのでなかなか吹けません。山や野の花や草は困っています」妹も兄弟のことで言いにくそうだったが続いて言った。
「それで、どうされるつもりですか?」姉が聞きました。
「もちろん二人を呼びつけるつもりじゃ。しかし、今年も強く吹くだろうから、世界は混乱する。それで、おまえたちは、兄、弟の風の後に吹くが、今まで以上に強く吹いてもらいたい」
「世界にいつものように季節が回っていると思わせるのですね」
「そうじゃな。さすがに姉じゃ。わしらの任務は単に季節の風を吹くだけでなく、それによって、世界を回すことじゃ」
二人は、我を通すとそれが自分に跳ね返ってくるだけでなく、世界を苦しめることをあらためて分かった。そして、父親との再会を願って急いで自分の場所に戻っていきました。

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