姉妹

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(202)
「姉妹」
蝉の声が朝から夕方までかしましく鳴いている夏のことです。
しかし、昼食にはワインを飲むので、いつの間にか蝉の声も気にならなくなりみんなお昼寝をしました。
そこの女主人がぐっすり眠っていると、「秋風のお嬢様」という声がしたような気がしました。
夢を見ているのかと思ってそのままにしていましたが、それでもお嬢様、お嬢様という声がしました。
ようやく目を開けた彼女は、「誰じゃ。今昼寝をしておる」と答えました。
「それは申しわけございません。あなたのお父様にお嬢様をすぐに連れてこいと命じられましたので」と恐縮した声が聞こえました。
お父様という言葉が出たのでは仕方がありません。思い切ってドアを開けました。
「これは執事のウイダースじゃないの!お父様がどうしたっていうの?」
「お嬢様。お久しぶりでございます。とにかく急いでお父様がいらっしゃるアネモス城に戻ってください」
「何かあったの?もうすぐ忙しくなるのはわかっているでしょ!
今は兄が夏の風を吹いているけど、そろそろバトンタッチの時が近づいているのよ。
しばらくは兄と私が一緒に吹かなくてはならないのよ。うまくやらないと兄が怒るわ。蝉の声に元気がなくなったら、私が少し強く吹くのよ。いつまでも元気がなくならないときも、私が吹いて、もうそろそろ来年の準備をしなさいと吹くこともある。その見極めが難しいの。弟が冬の風を吹かすまで気が休まるときがないわ。それでも、私が吹かないと季節は回らないのよ。そんな時にどこにも行けないわ」女主人は一気にまくしたてました。
「そうですとも、秋風のお嬢様。今が一番大事なときだということは重々存じあげております。しかし、お父様はすぐに連れてこいとおっしゃるので」執事のウイダースは譲らなかった。
秋風は自分の考えを言いましたが、心では父親の命令に逆らえないことはわかっていました。
風の神は代々同じ家から出ています。つまり、代々親から子供に伝えられていますので、親の命令は絶対だからです。
秋風は仕方なくウイダースとともに父親がいるアネモス城に向かうことになりました。急いで空を飛んでも1日はかかる距離があります。
途中、ウイダースは、「そうそう。お妹の春風のお嬢様も来るそうです」
「ほんとなの。どうして妹も?」
「それはわかりませんが、何でもお二人にお聞きになりたいことがあると聞いた同僚がいます」
「私と妹に聞きたいこと?私は秋の風。妹は春の風よ。一緒に吹くこともないのにどうしてかしら?」
秋の風には心当りがありません。しかし、それだから余計に不安になってきました。
アネモス城はホーラー山の頂上にあります。そこからは世界の山はもちろん、世界の海も見ることができます。つまり、季節の移り変わりを見ることができるわけです。
季節はここからはじまりました。もちろん、風の神だけでなく、花の神や鳥の神、虫の神など無数の神がいて、その上に四季の神がいます。それぞれの神が協力して四季の神を助けています。
四季の神は季節のめぐりを世界に広げるために、それぞれの神をあちこちに住まわせたのです。
城に着いて休憩していると、「あら。お姉様もここへ?」という声が聞こえました。妹の春風です。
「それは知らないわ。今日明日にも私の出番なのにお父様が戻ってくるようにとおっしゃったから」
「お姉様の仕事が気に食わないからかしら?」
「ばかおっしゃい。厳しいお兄様からも及第点をいただいています。それに、誰でも簡単にできる仕事じゃありませんから」秋風は怒ったように答えました。
その時、「お父様がお待ちです」という声が聞こえました。

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