仕事
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「仕事」
―春やなあ
―ほんまやなあ。春とゆえば卒業や就職の季節や
―そうや。そうゆえば、きみとこの息子は大きくなったやろ
―大きくなった。2メートル8センチある
―アホか。年令のことや
―21や。今年大学3年になるので、そろそろ就職のことを考えんとあかんゆうているわ
―へえ、大学に行っとんかいな。アホやったのに
―アホちゃうで。小学6年で、自分で「おしめ」変えらるようになったんやで
―6年生まで「おしめ」しとったかいな
―早いほうや。うちのばあさんなんか、90でも変えられへんで
―それとはちがうがな
―九九かって、7ケタまでゆえる
―まだアホや
―同級生で、5ケタまでしかゆえんもんがいるそうや
―どこの大学へ行っとんのや
―それはプライバシーやからゆえん、
―今までプライバシーを切り売りしてきたくせに。そんなこはどうでもええけど、ほんまに就職難らしいな。息子は何をしたいねん?
―国際オリンピック協会の委員になりたいとゆうとてるけどな
―オリンピックの委員てか?
―今度のオリンピックをどこでしようか決める役や
テレビで見てへんか?日本に来た委員なんか、ものすごい接待を受けていたやろ
毎晩一流ホテルで宴会や。皇太子も挨拶しとった。みやげもすごいらしいで
―なんや、そんなことか。ぼくもどうかと思うけど、あれは、元オリオンピック選手しかなれへんようやで
―ほんまかいな。それなら、オリンピック委員の丁稚からはじめよか
―まだゆうか。ところで、きみは、子供の時は何になりたかったんや?
―歌手や。1曲当たったら、ガッポリや
―それなら、ここで歌うてみい。歌手なら、年取ってからでもなれるで
―わかった。いくで。♪晴れた空~ そ~よぐ風 港 出船のドラ音(ね)愉(たの)し
別れテープを笑顔で切れば 希望はてない 遥かな潮路 あ~あ あこがれのハワイ航路♪
―もうええわ。心が晴れん お客さんも、拍手するようなもんやおまへんで
―ほな、きみは、何になりたかったんや
―漁労長や
―漁労猟長って何や
―漁船の大将や。今日食べたい魚を取れゆえるやろ
―ぼくとそう変わらんな
―人間は、なかなか希望とおりの仕事はでけんもんや。それで、ぼくは、小さいことをやれゆうとるんや
―小さいこと?
―そうや。世の中の動きを見てみい。小さい細胞や電波を研究した人が、ノーベル賞をもらったり、大金持ちになったりしとる
―なかなかええことゆうやないか。今は、「末は博士か大臣か」ゆう時代やないもんな
いろんなことをやれる時代や
ぼくらも、「人に笑われんようになれよ」とゆわれたけれど、人に笑われてなんぼの仕事をしているもんなあ
―ぼくも、ときには、ええことゆうやろ
―見なおしたわ。せやけど、息子には、大学出るまでに、九九だけは教えとけよ