レリゴー

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「レリゴー」
そこを通るのは令さんやないか。えらいむずかしい顔をしてどうしたんや。
これは、大家さん。いつもはばかりさんで。今かかに怒鳴られてきましたんや。おもろないから酒を飲ませてくれる連れがないか思案してましたんや。
酒ぐらい自分の金で飲みなはれ。それにしても、いつも気のええおさきさんが怒るとは、おまはん、よほどのことをしたんかいな。
何もしまっかいな。娘のおたきが、てておやのわたいのことを呼びつけにするさかいに、ちょっと叱っただけですわ。
あのかわいい嬢ちゃんがか!
そうだす。わての名前は令一といいまして、親父から聞いたところでは、生まれたときの顔を見ると、こいつは大将になる器やない。それなら、大将にかわいがってもらえるように、命令を一番よく聞く人間になるのがええと令一と名づけたそうです。
それで、棟梁や連れからはレイコーと呼ばれていますけど、おたきまでが、最近、レイコー、レイコーとゆうので、「親をよびつけにしたら罰が当たる」と叱ったんですわ。
すると、おたきは大声で泣きだしたんですが、外で洗濯をしていたかかが飛んできて、「あんた、それは歌やないか。おたきは流行りの歌を歌っているだけや。何にも知らんと、この唐変木!」とぬかしよりまんねん。それで、家を出た次第で。
レイコー。流行りの歌。わかりました。
何ですか
それは、レリゴー、つまり、レット イット ゴーと歌ってなさる。「アナと雪の女王」とゆうディズニー映画に出てくる歌で、今大ブームになっている。
ほんまですか。わては、家に帰ったら、酒飲んですぐに寝るさかいに聞いたことおませんのや。
帰ったら嬢ちゃんに謝りなはれ。3、4才で、英語の歌が歌えるなんてたいしたもんや。
へい、そうします。それから、また恥をかかんように教えてほしいことがおます。
ゆうてみなはれ
最近、アフリカで出血熱とゆう病気が流行っているようですね。
そうじゃな。
何でも、あれにかかると何もしたくなるそうで。
病気になるとたいていそうやな。それどころか、長い間隔離されるとゆう話や。
やっぱりあくびでうつるんで。
何を馬鹿なことゆうている。あくびでうつる病気なんてありますかいな。
いや、ズボラ出血熱やさかいに、そう思うたんですわ。
ズボラやない、エボラや。そんなら、どうしてズボラで出血しますんや?
痛い目に負うて出血する。
意味がちがいます。
それなら、もう一つあります。
おまはんがゆいたいことはわかった。鼻が伸びる病気がおましたなやないか。
図星ですわ。さすがに大家さんや。昔から大家とゆえば親も同然店子とゆえば子も同然とゆう。子の考えは親には手に取るようにわかるわけですな。
何をべんちゃらゆうています。おまはんはときどきぼけますから、すぐにわかります。
それは、テングやのうてデング熱。
外国から来た病気ならしゃあないけど、何でも外国から来た言葉をそのまま使うのは考えもんや。
いくら英語を解すお人が増えても、手間を省いて、何でもそのまま使えばいつかしっぺ返しが来ます。
なんでですか?
言葉とゆうもんは、その国の文化そのものが詰まっていますからな。それをないがしろにすると、国ゆうもんがなくなる。
それなら、わてどこへ行ったらええんで。
おまはん宇宙人やから、自分の星に帰ったらええ。

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