ピノールの一生(29)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(141)
「ピノールの一生」(29)
「ゼペールじいさん、ありがとうございます。人間もいつかはわかってくれるでしょう。私たちロボットも今の苦難を懸命に乗り越えようとがんばっていますから心配しないでください」ピノールは言いました。
「ありがとうよ。こんな時代におまえを作って申しわけなかった」
「そんなこと言わないでください。作ってくださったことをいつも感謝しています」
「まあ、3人で力を合わせれば、なんとかなるじゃろ。最新の装置は高いのでな。少し古いが、そこそこは対応できるはずじゃ」
「これから3人で力を合わせてがんばります。それで、もう一つお願いがあります。いざというときに、すぐにチームワークが取れるように二人に名前をつけてくれませんか」
「それはいいアイデアじゃ」ゼペールじいさんはしばらく考えていたが、相棒には、守護をあらわすティート、最近仲間になったものには、軍人をあらわすエトーレと名づけました。
二人のロボットはひじょうに喜びました。相棒は工業用ロボットでしたので、自分が名前で呼ばれるなんて夢のようだったのです。
また、最近仲間になったロボットも、「その他大勢」という「生まれ」だったので、相棒と同じように、認められたんだと思うと勇気がわいてきました(たとえ、他のロボットにもエトーレという名前がついていてでもです)。
3人は、数日間ゼペールじいさんがつけてくれた装置を使う練習をしました。それから、敵が攻めてきたときに、3人でどう戦うかも話しあいました。
「ゼペールじいさん、ケイロンのアジトを見てきます。この前人間がそこを攻撃していましたので、モイラが巻き添えで攻撃されていないか心配なのです」
「それじゃ、気をつけて行っておいで」
「すぐに帰ってきますから」
3人は外に出ました。遠くでヘリコプターが数機旋回しています。レーダーに捕捉されませんが、森の中を行くことにしました。
5時間後、ようやくアジトの近くに着きました。木が黒くなっていますし、油くさいにおいがします。
アジトもまだ黒い煙が上がっています。「相当攻撃されたようだな」ティートが小さな声で言いました。
「あっ、あちこちで何かが倒れている!」エトーレが叫びました、
3人は思わず走りだしました。ロボットです。黒焦げで何もわからなくなったもの。体がバラバラになったもの。一見損傷が見られないものなど、十数のロボットが倒れていました。
ピノールは、モイラの名前を呼びながら探しました。モイラは足が赤いので、それを目印に庭に横たわるロボットを調べました。
黒焦げのものは、色はわかりませんが、体の形などを見ました。どうやらいないようです。
それから、アジトの中へ入りました。家の形は残っていますが、中は完全に燃えています。
それに、家具なども燃えているので、ロボットとの見分けがつきにくくなっています。
3人で丁寧に調べました。内部にはロボットは13人いましたが、どれもモイラではなさそうです。
「モイラがいないということは、ケイロンは脱出しているということだ。やはりヘブン島か」ティートが言いました。
「モイラが人間の親といればいいが」エトーレも言いました。
「そこに行こう。もしどこかに引っ越ししていれば確認のしようがないから、ヘブン島に
だ!」ピノールはきっぱり言いました。

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