ピノールの一生(30)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(142)
「ピノールの一生」(30)
相棒のチィートは、「ピノール、きみの気持ちはよくわかるが、まずモイラの家に行ってみようよ。何か情報が見つかるかもしれないから」とピノールの性急さを制しました。
それに納得したピノールは、最近仲間になったエトーレというロボットと3人でモイラの家をめざすことにしました。
モイラは、そこから二つの山を越したところに人間の両親とともに住んでいる
はずでした。
1時間ほどで着きました。森の中に赤い屋根がかすかに見えました。「あそこだ」3人は近づきました。
大きな木から、赤い三角屋根の家やそのまわりをじっと見ましたが、ときどき鳥の鳴き声がするだけでした。
「物音一つ聞こえないな」エトーレが言いました。「やはり引っ越したのだろうか」とチィートが言ったとき、、「しっ。誰か来た。あれはモイラのママとパパだ!」ピノールは二人に言いました。
「ぼくが話をしてくるから、ここで待っていて」と言って、走りだしました。
「こんにちは」とピノールが声をかけると、二人の老人は驚いて振りむきました。
戸外は、あいかわらず50度を超えていますが、森の中は少し涼しいので、二人は、防熱服を着ていません。
二人がようやくわかって声をかける前に、「ピノールです」と挨拶をしました。
「ああ、ピノール!無事だったか」二人は駈け寄り、ピノールを抱きしめました。
「娘を助けてくれたあと、ロボットを厳しく取りしまる法律ができたものだから、きみが無事に帰ってこられるのか心配していたんだ」
「そうですよ。娘は無事に帰ってきたので、お礼にあなたの家に行こうと思っていたの。ところが・・・」
「何かあったのですか」
「娘の内部がかなり壊れていましたので、すぐに修理に来てもらってメンテナンスしてもらいました。
2,3日、親子水入らずでゆっくりしたので、またあいつらが来るといけないので、これからのことを決めてから、ゼペールじいさんのお家に行こうとしていた矢先、あいつらがきて娘をさらっていってしまいました」ママはそこまで言うと言葉を詰まらせてしましまた。
「そうでしたか」
「今度はそうならないように、ある場所に引っ越ししたんだ。それで、娘が帰ってきてはいないかと毎日ここに来ているんだよ」パパも悲しそうに言いました。
「そうでしたか。かわいそうに。まだ行方が分からないのですね」
「せっかく助けてもらったのに申しわけありません」ママはまた泣きはじめた。
「何というやつらだ!」
ピノールは、ケイロンは島が好きで、それで前回ブリーズ島にいるだろうと考えたら、やはりそこにいたこと。今度はヘブン島が考えられると、二人に説明した。
そして、絶対連れてかえるから希望をもって待っていてほしいと励ましました。
それに、今は仲間がいるからと、二人にチィートとエトーレを紹介しました。
また、ゼペールじいさんがぼくら3人に、最新とは言わなくとも、今までなかった装備をつけてくれたので、どんな敵でも怖くありませんと安心させました。
「さあ、港に行こう。今度は証明書があるから堂々とな」
空にはヘリコプターが警戒しているし、ロボット相手の装甲車も走っていましたが、3人はまっすぐ港に向かいました。
幸い誰にも咎められることもなく港に着きました。ヘブン島行き大型船の出発まで1時間あります。3人はロボットですので、冷房の効いている待合室ではなく、外で待つことにしました。
すると、向こうからドタバタという音がしました。3人の男がこちらに向ってきます。その後ろからは装甲車が猛スピードで追いかけてきました。
「ロボットだ!」ピノールが叫ぶと、3人は待合室に入り込みました。すぐにキャ―という叫び声が聞こえました。
3人は慌てて待合室に向かいました。人間の女性を人質にしようとしていました。
ピノールたち3人は、暴れているロボットの電気系統を遮断する特別なビームを発射しました。3人のロボットは動かなくなりました。
警官や乗客はピノールたち3人に感謝しました。しかし、ピノールたちは複雑な気持ちになりました。自分たちのために捕まり、いずれ処分されるのは同じロボットだったからです。

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