ピノールの一生(28)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(140)
「ピノールの一生」(28)
誰も出てきそうにないので、何かあったのかと思っていると、「誰じゃな、こんな遅く。またおまえたちか?」という声が聞こえました。ゼペールじいさんです!
ピノールは、「ゼペールじいさん、ぼくです。ピノールです」と叫びました。
「何だって!ピノールか。少し待っていろ」ゼペールじいさんの声も興奮しています。
ガチャガチャとドアが開きました。ライトがピノールの顔に当たりました。
「ああ、ああ。ピノールじゃ。ピノールじゃ。まちがいない。よく戻ってきてくれた。さあ。お入り」とゼペールじいさんはピノールの手をひっぱりました。
「友だちもいますが、いいですか?」
「もちろんじゃ。早くお入り」
家に入ると、ピノールはゼペールじいさんを強く抱きしめました。「連絡もせずにごめんなさい」と謝りました。
「何か事情があったのじゃろ。必ず帰ってくると信じていたが、少し心配しておった」
二人は、また抱き合いました。
それから、二人のロボットを紹介しました。「急に法律が変わってもしもうたので、おまえたちも辛い目に会ったことじゃろ」ゼペールじいさんは同情しました。
「ゼペールじいさん、さっき、『またおまえたちか?』と言っていましたが、誰のことですか?」ピノールが聞きました。
「ケイロンの家来じゃよ」
「ここへ来ているのですか!」
「そうじゃ。2,3回来たな。おまえを探しておる」
「モイラはどうしていますか?」
「それは聞いておらぬ」
「ケイロンに連れさられたとき、モイラを助けだして、自宅に帰るように言ったのですが、自宅に帰ったケイロンをまた誘拐しないか心配していました」
「向こうの親も何も言ってこないから、わしもそれを心配しておった。ケイロンが帰ってこないうちに、どこかに引っ越しておればいいが」
「実は、こちらのロボットはケイロンと戦っているそうです。この前までケイロンのアジトまで行っていたそうです」
そのロボットは、「別に正義のロボットではなくて、同じギャングロボットです。すみません」と謝った。
「いやいや。謝る必要はない。今の人間はギャングより悪いことをしておる」
「一度モイラのことを調べてきたいのですが」
「そうじゃな。そうじゃ、思いだした。やつらが来るようになったので、監視カメラと集音マイクをつけるようにした。もっとも、監視カメラはやつらに壊された。集音マイクを聞くと、「親分はもうヘブン島に着いたかな」と言っておった。
「ヘブン島!また島に行ったのですか。モイラの家を見てきていいですか」
「それなら、わしがおまえたちに装備をつけてやろう。最新のものではないが、さしあたり困ることがないものじゃ。お前がいつ帰ってきてもいいように研究していたのじゃ」
「それでこんなに遅くまで起きていたのですか」
「まあそうじゃな」
翌日から、ゼペールじいさんは、徹夜をして3人のロボットを改造しました。
特にレーダーに映らないようにしてくれたので、3人とも大喜びでした。ただ、これをロボットにつけることは厳しく禁止されていました。
それを知っていたピノールは、「大丈夫ですか?」とゼペールじいさんに聞きました。
「そんなことはどうでもいい。この地球をまともに住めないようにしたのは人間じゃ。
それなのに、その鬱憤を、自分たちに刃向かっているという理由で自分が作ったロボットにぶつけている。おまえたちは、みんなで楽しく暮らせる地球を取り戻しましょうと言っているだけなのにな」いつも柔和なゼペールじいさんの顔が厳しくなりました。