ピノールの一生(14)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(113)
「ピノールの一生」(14)
「じゃ、協力してここを出ようよ」
「おれは辛気くさいことは苦手だから、きみが指示してくれないか」
そのロボットは、ピノールから1メートルぐらい下にいました。しかも、その声が出る方向から考えて頭がピノールの腰付近にあるようです。
「了解。まずぼくが自由になって、きみを引っぱりだす」ピノールは落ちついてスクラップの重なり具合を調べました。
それから、動かせるものはどんどん動かしました。両手が自由になったのでかなりはかどりました。
ようやく頭を上げるぐらいの空間を作ることができました。それで、腰や足の様子を見ました。
「長い板が縦方向に突き刺さっているけど、これをのければうまくいくはずだ。それを動かせないないか」
「何本もあるから、どれだかわからない」
「それじゃ、一本一本動かしてみてくれ」
下にいるロボットは動かしました。「それだ!そいつを何とかできないか」
「まかせておけ」そのロボットは何度も力を入れたようですが、何もかわりません。しかし、しばらくすると、その板はピエールの腰の横からすっと消えました。
「消えた!すごいじゃないか」
「引き抜けないので、曲げてやった」
「ありがとう。これでよしっと!」
まわりのスクラップはすべて外れ、ピノールは立ちあがることができました。すぐに下のロボットのまわりのクラップをのけて、そのロボットに手を伸ばしました。
そのロボットはゆっくり立ちあがりましたが、確かに右足がありません。それで、スクラップの山からなかなか下りられませんでしたが、ピノールの支えでなんとか無事に下りることができました。
「ありがとう。もう立つことがないと思っていたが、生きかえったようだ」と壁に手を置きながら礼を言いました。体はピノールと同じぐらいですが、つやつやしています。
そして、「初対面なのに失礼だが、どうしたんだ?体が錆びている」とつけくわえました。
「そうだろう。ぼくは数百年前のロボットだから、今の金属はまだできていなかったんだ。だから、海にいるとこうなるんだ」
「お礼に磨いてやるよ」
「いや、その前にぼくの足をきみにつけるよ。汚い足だけど」ピノールは、スクラップの山から見つけていたドライバーなどの工具で自分の右足を外して、そのロボットの右足につけました。
「歩きにくいと思うけど、ゼペールじいさんがぴったりのを作ってくれるまで辛抱してくれ」
「いや、すごいよ。でも、きみは不自由になったな」
「また返してもらうから大丈夫だ」
それから、お互いの体を磨きあいながら、おしゃべりを続けました。
「それなら、この船にいたら帰れるかどうかわからない。聞けば、きみらが住んでいるカルロは山岳地帯にあるようだが、その近くの港に行く船を見つけよう」
「でも・・・」
「さっき思いだしたんだが、おれは10分ぐらいなら空を飛べるんだ。ずっと工場で働かされていたから飛んだことがないけどね。
そこに行く船を見つけたら、きみを背負ってその船に飛びうつる」

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