王様

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(57)

「王様」
西暦2048年、核爆弾が落とされた。あれほど核廃絶が叫ばれたが、その根底には、「自国以外の」という条件がついていたので、そう効果はなかったのだ。
ある大国が、領土問題に抗議する近隣の国を脅かすために核を持ちだしたのだが、それが誤って発射されたというのだ。その国の国民100万人が犠牲になり、健康被害は計りしれない。
その暴挙に対して、国際社会はすぐ非難をし、「人類の破滅を招く行為をした国にはすぐ国際社会から排除せよ」という意見が大勢を占めた。
核を落とした国は、「我々は、どこの国よりは平和を望むものだ。今回は申しわけないことをしたが、訓練上のミスだ。
核を持っている国は、ただ持っているというだけでなく、日頃の訓練による核のコントロースをすることも、国際社会への責任だ」という声明を出した。
世界は、とりあえず、第3番目の被爆に対して懸命の救助したが、いつのまにか、核を落とした国への非難は少なくなっていった。
その国が、助けるための資金を出しただけでなく、管理の不手際はあるにしろ、ミスはえてして起きるものだということがわかったからである。さらに、ここで核廃絶が声高に言われると、少しまずいという思惑もあった。
しかし、多くの国は、国際社会に幻滅してきた。国際社会と言っても、力のある国が自分の都合のいいように牛耳るだけだし、「グローバル経済」も、ただ資金が入りやすくして、売れそうなものを根こそぎ持っていくだけだからである。
そこで、多くの国が「鎖国政策」を取りはじめた。「核でもなんでも作ったらいい。反対だと言っても、どうせ隠れて作るんだから。
戦争をするのなら、こちらに被害が出ないようにだけすること。
お金儲けだけでは人間は幸せにならないということがわかったから、必要なものは買うし、ほしければ売る。でも、それだけ」という考えが出てきたのである。
そして、当分の間、王政国家になることを決めた国が出てきた。大統領では、足を引っぱろうとする者が出てくるかもしれないし、王様なら、他国も一目置くからである。
2072年、ある国の王様が家来を集めた。
「皆の者、よく聞け。今度、わしは、禁サプリ法を制定する」
「王様、それはどんな法律で?」家来の一人が聞いた。
「そちたちも知ってのとおり、わしは、先週、農民たちの話を聞いた。最近は、冷凍ものやサプリなどで栄養を取るので、野菜が売れないと嘆いておった。
野菜や肉、魚が潤沢にないと国は滅びる。そこで、サプリを禁止して、本来の人間生活を取りもどうとするためじゃ」
「でも、禁止までは」
「いや、禁止すると、最初は仕方なしでも、野菜を腹一杯食べるようになると健康になる。それが習慣になると、野菜や肉、魚を以外に目が行かなくなる。国民は健康になり、農民や漁師は喜ぶ。禁サプリ法が一番いい」
「はあ」
「わしほど、民のことを考えている者はいないぞ」
「それはまちがいないことです。ただ、トンチンカンなだけで」
「なんだと!」
「とにかく、時間を惜しんで考えられておられますと言っただけで」
「しかしながら、昼夜二分法はお止めになったほうが」
「どうしてじゃ?半分の人間が昼に働き、後半分の人間は夜働くと、24時間生産がある。しかも、夜起きているので、敵が攻めてくることもない」
「しかし、夜働く人間がほとんどいないのです」
「誰でも表彰法は?」
「誰でもいいところがある。それを褒めてやれば生き甲斐が出てくる」
「でも、暴れ者に表彰とは」
「あいつのために、近隣が結束したと聞いたのでな。とにかく、急いで『禁サプリ法』をまとめよ。
それがすむと、城で合コンをする。農民の子供は結婚していないものが多いからな。
仲人はわしがする。さあ、これで、昔の栄華を取りもどせる」

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