お梅(4)
2018/06/06
「今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(185)
「お梅」(4)
先ほど青空が見えていたのにまたぼたん雪が降っています。目の前が見えないほどです。
おばあさんは追いかけてきて、「お梅、もう行くな。ゆきだおれになってしまうぞ」とお梅をもう一度止めました。
しかし、お梅は、「おばあさん、すぐに帰ってきますから行かせてください」と頼みました。
「すぐに帰ってくるのじゃ」おばあさんはそう言わざるをえませんでした。
また雪が小降りになってきたからです。お梅は雪の中を出ていきました。
それからも、相変わらず吹雪になったり、少し止んだりしましたが、ただ雪はどんどん積もってきて、小柄なお梅の胸ぐらいになっているところもありました。
毎日歩いているところなので、お宮さんの高い木を目印にすれば迷うことはありません。
しかし、おばあさんが作ってくれた「かんじき」を履いていてもなかなか前に進めません。いつもの何十倍の時間をかけてようやく洞穴に着きました。
お梅が息を整えていると、「こんなときに申しわけありません」という声が聞こえました。うさぎの母親です。「急いで来たのですが、なかなか進めなくて。ぼうやはどうですか?」お梅も言いました。
「痛くはないようですが、もし足が治らないとみんなと遊べなくなると心配しています。お梅さんが調べにいってくれていると言うと、安心して火鉢の横で休んでいます」
「それはよかった。おばあさんの話では山桃の葉の汁を折れた場所に塗ればいいそうです」
「山桃の葉?」
「夏に小さな赤い実がなります。そのまま食べてもおいしくない。桑の実のほうがおいしい」
「ひょっとして私たちは食べたことがあるかもしれません。でも、それをどうするのですか?」
「水の中にその葉を入れてぐつぐつと煮れば、葉から養分がでてきますので、それが塗り薬になります」
「でも、山桃の葉は見つかりますか。こんなに雪がふっているのに」
「確かにそうですが、実はかわいいのでそれを持ってかえることがあります。
それで場所を覚えています。幸い洞穴の上のところです。朴葉(ほうば)を家からもってきたので、火鉢の上にかけても大丈夫です」
「私もどんなことでもお手伝いします」うさぎの母親は言いました。
「いいえ。私が行ってきます。ママは子供の横にいてください。いつ起きでもいいように」
「ありがとうございます」
お梅は雪が止んだのを見て洞穴を出ました。そして、崖にある山道をゆっくり上りました。
すぐに右に行けば山桃の木があったはずです。葉のかたちは分かっていたので迷うことなく手にいっぱいの葉を集めました。
そして、朴葉に雪と山桃の葉を入れて火鉢にかけました。炭も少し余分に持ってきているので十分煎じることができます。
子供はまだ寝ています。早く煮汁が出ないかお梅とうさぎの母親は見守りました。