奥歯
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「奥歯」
ぼくの知り合いで、片っ方の奥歯が全くない奥さんがいる。反対側は治療しているけど、大口を開けられると、えっとゆう感じになる。
なんでやゆうたら、その奥さんは、余裕がないわけでなく、趣味は宝石を買うことなんや(仕事は農業やけど)。
前からゆうているように、ぼくは、話し相手の顔にホクロがあるとじっと見てしまうクセがある(見たあかんと思うと、よけいにそこから目が離れへん)。
普通、歯ぁがそんなことになったら、何とかせえへんか。以前、友だちに、「あんた、そんなん買う前に、歯ぁなんとかしたらどうや」とゆわれたらしい(そのとき一緒にいた人に、「どう答えとった?」と聞いたけど、黙っていたとのことや)。
「明眸皓歯(めいぼうこうし)」ゆうて、澄んだ瞳と白い歯は、美人度の物差しや。
それが男にも及んで、「女もすなる」ものをやってみたいのは、日記だけでなく、エステや審美歯科もや(最近は、顔の手入れだけでなく、髭が生えてこんようにもするらしい)。
歯の美容にも大金がかかるで。歯ァピカピカの代表は新庄やろな。セラミックのかぶせ賃が500万円かかったとゆわれている(その影響か清原もやったようや。次のことにも生かせるしな)。
せやけど、あのおばちゃんが宝石のために使った金は、500万円どころではないようや。つまり、口の奥が空っぽなのは、金がないのではなく、気にせえへん性格か、あるいは、同じ金(きん)を買うのなら、口に入れるより、指につけたほうがええとゆう判断したんやろ。
それとも、差し歯を引っかける一番奥の歯がないために、部分入れ歯を入れんとあかんけど、それがいやなのか(ほんまは、ぼくも後1本取れたら部分入れ歯やとゆわれている。「おじいちゃん、臭い」の「老後」の入り口に立っているのや)。
それにしても、「ちゃらちゃら」と「奥歯全くなし」は「つろく」せえへんなあ。
確かに歯ぁの手入れはむずかしい。女優でも、歯茎の曲がり角のところの歯ぁが薄茶色になっていることが多い。しかも、歯をきれいにしても、やがて歯茎が衰えると、歯ぁは崩れおちる。
しかし、奥歯がないと、はっきり意見が言える(なにしろ、物が挟まることがないもんなあてか)。
どうせぐちゃぐちゃになるもんに金を使うより、宝石や車に金をかけたほうがええとゆう考えもあるやろ(昔は、宝石も車もなかったから、金持ちは、前歯に金《きん》を入れて、金があるところを誇示したけど)。
ほしいもんを何でもかんでも手に入れることができる人は少ない。
奥歯なんかなくても生きていける。でも、ちょっとカッコ悪い。でも自分で気にせえへんかったら何でもない。人は、そうなふうに迷いながら生きているのや。
「奥歯か宝石か」ならええけど、「他人の迷惑か自分の思惑か」なら、ちょっと困る。
あのおばさん、今日も、ピアスをきらきらさせながら野良仕事に精をだしているにちがいない。そして、その合間に、口の奥まで見せて大笑いしているやろ。