雲の上の物語(B)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(207)
「雲の上の物語」(B)
また風と雨が強くなってきましたが、とにかく見に行くことにしました。
そこは駅の北側にある川です。
「確か川の横は道路だったよなあ」
「道路がなくなっている!」「川が溢れているんだ」
「その車はどこにいるんだ?」
「もう少し上流に行ったところだ」
風に向かって行かなければなりませんので、思うように進めません。しかし、みんな必死で前に進みました。
「あれだ!」確かに1台の車が来る水の中に取り残されています。そして、徐々に本来の川のほうに動いています。
「誰か乗っているのか?」
「確か女の人一人がいたように思う。しかし、もうドアを開けられないぐらい水に浸かっている。そして、川に近づいている」
一人のビニール傘が車を見に行きました。「確かに女の人がパニックを起こしている」
「かわいそうだけど、おれたちには無理だよ。傘なのに、雨風に弱くて捨てられたんだ」
「そうだけど、ボスならどうするだろう。ボスがあきらめたところを見たことあるか?」
「でも、これは無理だよ。バラバラになって一巻の終わりだ」
「よし、分かった。それでは駅前に戻って、仲間を集めよう。今見たことはボスには内緒だぞ」
「待ってくれ。できるだけのことをしよう。みんな、いいな」
「やろう。ボスの前に出ても恥ずかしくないことをやろう」
「よし。2つのことを同時にする。一つは車を止めること。もう一つは窓ガラスを割ること。どうすルカは自分たちで考えてくれ」
みんな近くの家のほうに行きました。人間はどこにもいません。2階にいるか避難したのでしょうか。
川の近くの家は水に浸かっていてどうしようもありません。車を止める班も、窓ガラスを割る班も、高台に建っている家のほうに行きました。
「あそこにロープがある」誰かが叫びました。
「よし。あれをみんなで運ぼう。そして、ロープを二重にして信号の柱に回して、それを取っ手にかけるんだ。それでドアが開いたら女の人は外に出ることができる」
「でも、川に流されないか」
「それはわからない。うまくいったらガードレールに掴まって助かるかもしれない。とにかく溺死は避けることができる」
ガラスを割る班は、ブロックを見つけました。すぐにそれを運ぶための網を持ってきた仲間がいます。それを網に入れて車のほうに運びました。
ちょうどロープを取っ手にかけてからそこを固くくくることができました。
ブロックを運んだ班は運転席のガラスに落とそうとしましたが、ちょうど風が強く吹いたのでみんなのタイミングが合わずボンネットの上に落ちてしまいました。そのまま水の中に落ちたのでどうしようもありません。
それで、元の住宅に戻ってもう一度ブロックと網を見つけすぐに車のほうに急ぎました。今度はうまく行き、フロントガラスはうまく割れました。
女の人がフロントガラスから出ることができた。それから、ロープを伝って川から離れて信号機に掴まった。
そのとき高台に到着した救援隊が女の人を見つけました。「これで安心だ。いったん戻ろう」30近いビニール傘は駅前に戻ることにしました。
「うまくいったな」、「早くボスに報告したいな」、「チュー吉たちでもできないことをやったんだ」みんな興奮しながらお互いを讃えました。
「今度は仲間を助けるんだ。今まで以上に自信をもって話ができるだろう」
ビニール傘たちは捨てられたビニール傘に、「くよくよするな。おれたちがついているぞ」と声をかけながら飛びまわりました。