健康は命より大事

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「健康は命より大事」
―お~い、熊さん、さっきからどないしたんです。わたしの家の前を行ったり来たりして
私に何か用事でもあるのかいな
―よいしょ、よいしゃ。これはご隠居、別にご隠居に用事なんかおまへん。ひょっとして、わしに金でも貸してろうかとゆう魂胆で
―あほらしい。何が魂胆や。おまはんに一文でも貸す気などありません。貸したが最後返ってきたためしがない。いったいどうしたんや。
―いいやいな。この前から体がしんどくて、仕事にも行けませんのや
―また飲みすぎか
―「かか」もそうゆうて、いっぺん医者に診てもらいゆうもんやさかい、横町の藪医者に診てもらうたんですわ
―診てもろといて薮医者はないやろ。それでどうやった
―血縁検査をしてくれて、その結果、血圧は高いわ、血糖値は高いわ、おまけに、ご隠居みたいな悪玉コレステロールは高いわで、三冠王や。せやけど、このままじゃ、もうすぐ死ぬとゆわれましたんや
わしは、それは困る。おふくろが、常々世間の役に立つ人間になれよとゆうていましたので、これからそうしょうと思うているときやから、何とかしてくれと頼みましたんや
そうしたら、薮医者、いや、あの医者が、それなら、世間の人のように、毎日歩けゆいましたんで、こうして歩いているわけで
―口は悪いが、殊勝な考えや
近所で火事があっても、なかなか動かんもんがどないしたやと思うていましたが、これでわかりました
確かに、歩いたり走ったりしている人が増えたな
―わてもびっくりしましたわ。フツーに歩くだけでなく、反対に歩いたり、重たいもんをもって歩いているのがいる。
中には、足枷(あしかせ)をつけて歩いているのがいるから、どこからか逃げてきたんかと聞きましたわ
―しかし、昔から「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し」と言いますから、無茶ははやめときなはれ
―わてもそう思うて、これが終わると、朝風呂に入ってから、いっぱい飲って、昼寝でもしようかと
―それでは意味がありません
とにかく、健康志向はええとしても、世間のお人は極端すぎます。バナナがええゆうたらバナナばっかり、納豆がええゆうたら納豆ばっかり、トマトがええゆうたらトマトばっかりです
最近の新聞にも、野菜を先に食べたら血糖値が下がるとか、魚を食べるとアルツハイマーになりにくいとか出ていましたけど、それなら、野菜ばっかり、魚ばっかりとゆうお人も出てくるじゃろ
医者もいろいろで、朝食を必ず食べろ、いや、食べないほうが長生きできると別のことを主張する医者がいる。中には、ガンなどになると医者にかかるなとゆう医者もいる
―それじゃ、どうしたらええので
―わたしも素人やから大きなことはゆえんけど、昔のとしりよりなどから聞いたところでは、日頃からくよくよせず、楽しく生活をすることじゃな
そして、不幸にも病気になれば、医者の判断を仰がなければならないが、最近は、「セカンドオピニオン」とゆうて、別の医者に診てもらうことも必要じゃな
別の医者に行ったと聞いて気を悪くする医者は大した医者ではない
そして、病気がわかれば、あせらずに、気長になおすことです
―それじゃ、わしも、隣町の医者に診てもらうと、「もっと酒を飲め」とゆわれるかもしれない
―それはないじゃろが、病気を友だちだと思えば、体も元気になる
―わても、ご隠居の死に顔を見るまでには何とか
―憎まれ口が一番の薬かもしれん

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