神様の失敗

今日も、ムーズが降りてきた～きみと漫才を～

「ほんとはヘンな童話100選」の（２４）
「神様の失敗」
神様は、自分がしたことがまちがっていたのではないかと考えるようになりました。
やがて、それを考えるたびに、胃がきりきりと痛くなり、食事が取れなくなりました。
奥様がせっかくご馳走を作ったのに、神様が手をつけないので、どんどん痩せていきました。
奥様は、たいそう心配して、「あなた、何が心配なの。あなたが作ったものは、すべてうまくいっているように見えるけど」と聞ました。
「そう言ってくれるのはありがたいが、ちょっとしたことが気になってね。取るに足らないことが、大きな災害を招き、結局、すべてが無に帰すことがあるんだよ」と苦しそうに答えました。
「そのちょっとしたこととは、何なのですか」奥様はさらに聞きました。
神様は、うーんと唸りましたが、やっと口を開きました。
「実は、人間のことなんだ」
「人間？あなたが、私たちに似せて作ったものね、自分の自信作だと自慢していたのに」
「そうだ。他の動物よりわざと小さくした。また、若いときに一番体力があるようにもした。
それというのも、体力を補う知力を発達させたり、としよりなどの弱いものを助けたりして、なかよく暮らしてほしいからなんだ」
「それで？」
「思うようになっていないんだ。知力が発達したのはいいが、それを、他の人間を殺すために使うようになった」
「でも、おとしよりにはやさしいのでしょう？」
「いやいや、ほとんどのとしよりが、不幸な人生だったと嘆いて死んでいく。それは、ある意味、正しい反応だ。だれでも、最後の風景が印象に残るからね。でも、それを慰めるのが若い者だが・・・」神様は黙りました。目には涙がいっぱい溜まっていました。
奥様も、神様の気持ちがわかったので、言葉をかけることができませんでした。
しかし、神様は、自分の悩みをすべて奥様に話したので、心がすっきりしました。
すると、「どうするか決まったぞ！」と立ちあがって、叫びました。
奥様は、神様を見あげました。
「他の動物はこのままにしておくとして、人間は、老人になるほど、体力がつくようにする。そうすれば、若者は、としよりを尊敬するようになるし、としよりは、自分がやりのこしたことがないという満足感で、人生の幕を下ろすことができる！」
「すばらしいわ。でも、いつからおやりになるの」
「さっそく実験に取りかかる」神様は、そう言うと実験室に閉じこもりました。
こういうときはいつも、何日も実験室から出てこようとしません。奥様にとって、それは、それで心配なのですが、神様が大きな夢をもっているのですから、静かに見守ることにしました。
これでおわかりのように、なかなか解決しないことでも、けっしてあきらめないことです。
悩むことは、土に水や肥料を与えることなのです。それを続けていれば、必ず花が咲くのです。
また、「誰でも失敗はするものだ。神様じゃないんだから」と言うことがありますが、それも半分はまちがいです。
神様でも、失敗はするし、しかも、それを正直に認めるのです。だからこそ、目標に早く戻れるのです。
人間の中には、一時（いっとき）の権力や富をもつと、「自分は神様だ」と思うものがいるようです。経営者、政治家、はたまた、漫才師など、どの分野にもいます。
神様のことがわかっていれば、世間の物笑いの種にはならなかったでしょう。

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