今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「春」
――寒い寒いゆうてきたけど、ようやく春になったなあ
――ほんまやなあ
――よう考えたら1年の三分の一すんだわけやけど、きみはどんな調子や?今年こそがんばるゆうていたな
――ぼくはがんばってへんで
――えっ、なんでや?
――テレビで、「あなたががんばらなくても、アテントががんばる」ゆうとったから、それなら、アテントさんに任そと思うてがんばってへん
アテント?それは大人用のおしめや。きみはおしっこもれるんか
――あほなことゆわんといて。たま~にや
――あかんがな。舞台でじゃあじゃあしてもうたら、お客さんにかかる
――それは大丈夫。出そうになったら、すぐ便所に走る
――それもあかんがな。きみも、テレビばっかり見てんと少しは頭使いや
――テレビ見ていても、ちゃんと考えているで
――何をや?またしょうもないことちがうか
――年取ると、膝が痛くて歩けんようになるらしいな
――そうらしいな。あれは辛いやろ
――それはな、コンドロイチンゆうもんが不足しているんや
――なるほど
――そこで、そのコンドロイチンを売ろうかなと考えたんや
――どうゆうこと?
――ぼくは足腰が丈夫やから、ぼくのコンドロイチンを安う売ったら、歩けん人も助かるし、ぼくも儲かる
――それから、人のん集めて、ぎょうさん売ったら大金持ちになる。どや?
――やっぱり「すかたん」なおってへん。きょうび、若い女の人でももっと科学的やで
――知ってる。オコジョやろ?
――それはイタチや。それをゆならリケジョや
――ストップ細胞を作ったんやな
――スタップ細胞や。まあ、今はストップしているけど。
とにかく、科学者は、毎日コツコツ実験をして新しいものを発見するんや。
きみには、そんなことできんやろ?
――いや、ぼくも、いっぺん決めたら絶対続ける性格や。生まれてからいまだに息をしている
――ええ加減にせいよ
――それは冗談やけど、ぼくほど根気強いもんはいてへん
――たとえば?
――今年の冬、ぼくの手で、「アカギレグランプリ」があったんや
――なんや、それ?
――これ見てみい
――わあ、えげつない手ぃや
――10本の指全部が参戦や。中には一つの指から、2,3のアカギレ出てきた
試合は夕方や。寒い風が吹くと、あちこちでパカッ、パカッと口を開く。血ぃを噴きだすのもいる。「これはどうじゃ」、「わしに勝てるか」とえらい盛りあがりでな
――どうでもええけど、痛いやろ?
――そりゃ痛い。せやけど、ぼくは審査委員長やから我慢せなあかん。もちろん、薬なんか塗ったりしたら、不公平になる
――それでどこが勝ったん?
――ここや。左手の薬指の第一関節の上
――もう大丈夫みたいなや
――薬指だけに、自分の薬でなおったようや
――来年もあるのか
――来年の会場はきみの手や
――やめさせてもらうわ

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