バブル
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「バブル」
¬――4月やなあ
――早いもんや。ウグイスやヒバリがええ声で鳴くようになった
――小学生や会社員の一年坊主が物珍しそうにあたりを見ながら歩いとるで
春は天地とも輝く季節や
――ぼくもそうやったな
――今では信じられへんけど、多分そうやったんやろな
――多分とかゆわんといて。小学生になったときは、頭がようて、かわいらしかったんやから。どこへ行ってもぼっちゃん、ぼっちゃんゆわれとったわ
――今では、ボッチャンと池にはまった石のようになっているけどな
――あほゆわんといて。九九も2年で全部ゆえたし、おむつは4年のときには自分で替えられたし
――いつまでおむつしとんねん
――それなら、きみはどうやったんや
――ぼくはきみのようなぼっちゃんやない。鼻たれの長屋の子せがれ。せやけど、おふくろは名士の生まれなんや。元宝塚やで
――ぼくの叔母は元逆瀬川やで
――何や、元逆瀬川ゆうのは?
――バブルのとき、逆瀬川に大邸宅作ったんやけど、バブルが終わったので、それを売って、上新庄のアパートに移った
――あほくさ
――叔母を馬鹿にするのか。そんなことゆうとったら、今後きみとは親戚づきあいせえへんで
――ええよ。元々きみとことは親戚でもなんでもないもん
――そうやったか
――バブルとゆえば、最近バブルをネタにしているお笑いがいるなあ
――知ってる。「しもしも」ゆうやつやな
――若いもんは夢が持てん時代やから、バブルにあこがれるのは分かる
せやけど、ぼくらが、バブルはよかった、バブルはよかったといいすぎるんやな。土地さえ持っていれば、働かんでも金が入ったからなあ
――確かにそうゆう時代やった。ぼくらも漫才が売れだしたころやから、叔母から土地を買え、土地を買えゆわれたもんや。せやけど、ぼくは、土地なんか買わずに、毎晩飲みにいった
――そうゆえば、昔は遅刻ばっかりしとったなあ。ネタ合わせもせんまま舞台に上がっていたわ。お客さんに失礼やろ
――大丈夫!客も二日酔いで来ていたから
――懲り男や。新地に行っとんか
――ちがう。ぼくが行っていたんは、「ノーパンしゃぶしゃぶ」や。今の若いもんに味わせてやりたいなあ
――パンツはいてへん女の子がしゃぶしゃぶの用意するやつやな
――よう知っているやないか。さては常連か?
――あほか
――あれがバブルのシンボルや。なにしろ、お役人の接待も、「ノーパンしゃぶしゃぶ」が一番人気があったんやで
――それは聞いたことがある。せやけど、色と食欲を同時に求めたらあかん。どちらかにせんと
――「ノーパン」か「しゃぶしゃぶ」かどちらかにせえとゆうことやな
――えらいことゆうてしもた。まあ、そんなもんや。とにかく、それでバブルゆうのは人間を下品にするとゆうことが分るわけや
――きみは博学やなあ。それを早う聞いていたら、「ノーパンしゃぶしゃぶ」なんかに行かずに、「ノーパン」か「しゃぶしゃぶ」のどちらかに行っていたわ
――懲りんやつやなあ。せやけど、人間は頭を打たんと物事わからん。きみはバブル時代をちゃんと反省している
――新しい「ノーパンしゃぶしゃぶ」でできたら行ってみたいけどな
――きみとは話できんわ
――はあ~、さいなら