新しい国(4)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(155)
「新しい国」(4)
人類の長年の懸案であった電力については解決したのだから、ケンの申し出はすべての国から受けいれられました。
すでに核戦争によって、数千万人が亡くなり、世界の大都市もほとんど壊滅していましたから、人は、長い間、「世界は終わった」という思いを持っていました。
しかし、若い人たちは、ケンの好意でもう戦争は起こらないだろうから、もう一度世界が力をあわせてがんばろうと思うようになっていました。
ケンは、それはすごいことだが、でもまだ油断できない。人間の歴史を見ると、人間はちょっとしたことで戦争を引き起こしてしまうものであると考えていました。
だから、まだすることがあるという強い気持ちを持っていたから、寝るのも惜しんで研究に没頭していたのです。
具体的に言えば、キネトピアという島国を動かすことについては、電力は心配ありませんが、数万キロを行く間に、通過する国に被害を与えないようにしなけれならないのです。
ケンが作った国ですから、もし何かあっても、どの国も事を大きくしようとはしないでしょうが、ケンはそれに甘えたくないと考えていました。
それで、ケンと数十人の技術スタッフは毎日実験に次ぐ実験をしました。
ジョンたちは広報をどうしていくかについて、毎日会議をしました。ケンの推薦で次々とアイデアを出したベッティがスタッフに加わりました。
ジョンたちはまた寝不足が続く生活になりましたが、誰も不満を言うものはいません。後半年で島は動くのですから時間はそうありません(スタッフの子供の中には、「パパが遊んでくれない」という不満をあるようですが)。
とにかく、世界中への告知、訪問者の募集方法や案内方法、他の国とトラブルが起きたときの対応など、様々なことについて考えなければなりません。
ケンたちの研究も続きました。「キネトピアを動かすテストをします」という連絡が国民に連絡されました。
「いよいよ国が動く!」国民は大騒ぎです。海岸には特に北の海岸には大勢の人が集まってきました。
テストですから時速10キロしか出さないそうですが、これが成功すれば、今まで北極海にあった島がハワイ近くに行くのです。
島はもちろん自然のものですが、ケンたちが発電装置や駆動装置をつけて、巨大な船に改造したのです。時速30キロは出るようにしています。
しかし、予定どおりのコースを進むかどうかまだ確信がありせん。
島は大勢の国民が見守るうちに動きだしました。2時間動きました。「成功だ!」国民は大喝采です。
でも、10センチの誤差があったというのです。もちろん修正はすぐにできるのですが、ケンはそれが我慢できないのです。
その後、10回スピードを上げながら実験しました。ようやく1センチの誤差になりました。「これならOKだ」ケンは納得しました。
翌日島は太平洋に向かって動きだしました。キネトピアの国民は、興奮しながらも、自分がしなければならないことで頭がいっぱいになりました。

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