シーラじいさん見聞録
穴の中から、「ペルセウスってなんだい?」という声が聞えた。
「ぼくの名前なんだ」一人が聞いた。
「名前って?」
「また説明するよ。おまえたちにも話したことがあるだろう?昔、ぼくがあいつらをさがして国を出たとき、迷ってしまったことがある。
困っているとき、あるおじいさんと子供に出あった。それがシーラじいさんとオリオンだ。
シーラじいさんは、ぼくの話を聞いて、ぼくの国まで来てくれて、やつらを追いだしてくれたんだ。
あのときは、あいつらもう来ないと約束したのに、また来だした」
「そのおじいさんなのか?」もう一人が聞いた。
「そうだ」
「そりゃ、すごいじゃないか」
「今シーラじいさんとオリオンがいたら、どんなに力強いだろうと思っていたところだった」
そのとき、穴の外から声が聞こえた。
「ペリセウスか。わしじゃよ」
「ペリセウス!」オリオンも叫んだ。
「ああ、シーラじいさんとオリオンの声だ」
ペリセウスは、そう叫ぶと、穴から顔を出した。そして、シーラじいさんとオリオンを見ると、まんまるい目をさらに丸くした。
「まさかこんなところで会えるなって、夢みたいです!オリオン、会いたかったよ」
ペリセウスは、オリオンの体にぶつかるようにして、うれしさをあらわした。
「ぼくもさ」
「大きくなったじゃないか」
「きみこそ」
「ペリセウス、無事だったか」
「ありがとうございます。シーラじいさんが助けてくれたんですね。でも、どうしてぼくらのことがわかったんですか?」
「子供たちが兵隊たちに追われていることを聞いて、きっとペルセウスにちがいないと思った。それで、すぐに駆けつけてきたわけじゃ」
「まさかこんなに大勢の兵隊がいるとは思いませんでした」
「他の者はどうしている?」
「奥にいます」
「無事か?」
「二人がやられて」
「それは心配じゃ。入ってもいいかな?」
そういうと、シーラじいさんは、奥に入った。ペルセウスのすぐ後ろに二人がいて、頭を下げた。
そして、もっと進むと、じっとしている者がいた。よく見ると腹の肉が見えている。シーラじいさんに気がつくと、頭をゆっくり下げた。
その奥には、すでに体が上向きになっている者がいた。息が荒く、意識も薄れている。
「確かにひどくやられている。かわいそうに」
ついてきたペルセウスの方を振りかえって、「どうして、こんな無謀なことをしたんじゃ?」と聞いた。
「はい。シーラじいさんに助けていただいた後、しばらくは平和でした。しかし、あいつらがまたやってくるようになったんです。
『おまえたち、もう来ない約束だったじゃないか』って言ってやりました」
「そうだったのか」
「あいつらは、『約束はわかっている。しかし、最近このあたりに悪い者が来るようになった。みんなで助けあわなければたいへんなことになるぞ』と答えました。
そして、大人は、自分たちにともに戦わなければならないと脅してきたんです」
「それを信用した大人もいたけど、ぼくらが信用できないというと、大人をむりやり連れていこうとしたんだ」
ペルセウスの後ろにいた一人が叫んだ。
「そうです。その頃、ぼくら青年が国を守る組織を作っていたので、やつらに抵抗したんです。
そうしたら、大勢で攻めてきて、ぼくのママも殺されました。
ぼくは、何とかしなくてはと思って、今度こそやつらがどこから来たかついていこうとすると、4人の仲間がいっしょに来てくれたんです。
以前は、すぐに見失ってしまったが、今度はみんなで助けあって、ようやくここを見つけたんです。
少し恐くなりましたが、みんな親を殺されているので、勇気をふるって、ボスに面会を求めました。
しかし、大勢の兵隊に襲われたので、懸命に逃げました。
ここを調べたら、下の方の穴は使ってないことがわかったので、隠れていて、どうするか考えました。
それで、こうなったらボスの命を取るしかないと決めて、様子をうかがいながら、上に進んでいときに見つかってしまいました」
そのとき、「何かが近づいてきています」オリオンが叫んだ。
「シーラじいさんたちは穴に隠れてください。オリオンとベテルギウスは、おれについてこい」リゲルはすぐに上に向った。